基本的に短編集。
いろいろな話や絵柄があるけれど、基本的な路線はシリアスな劇画調の作品。
ハードボイルドな主人公(トレンチコートに山高帽)が傍目から見たらバカな言動をするというシリーズが楽しい。
駅弁のおかずを食べるローテーションをものすごく真剣に論じたり(「夜行」)、大きい方の便意を催す周期と振幅をグラフで説明したり(「ロボット」)、花粉症で鼻が詰まっていることを女性に悟られないようにするための方法が紹介されていたり(「花粉」)、文章で読むと「なんじゃそら?」って感じなのだが、線の多いシリアスな劇画スタイルと内容のバカバカしさのギャップに笑う。
収録作品全てが大ヒット爆笑級というわけではないが、十分笑える作品集になっています。
#一部、エロいのがあるから、そういうのがダメな人は注意したほうがいい。
ところでさ、いつものごとく、ていうか、この作品に出てくるハードボイルドな男のように、今日も今日とて外にメシを食いに行ったのさ。
ハードボイルドな俺なのに、行き先は会社近くのファミレスだけど。
店に入ると、ウェイトレスの女の子に来店人数と喫煙の有無を聞かれるわけです。
禁煙をして2ヶ月近くなる当方は、もちろん誇らしく「禁煙」と言うわけです。
でも、人数は口に出して言わない。
指を一本だけ立てて、ジェスチャーで人数を知らせるわけです。
「禁煙・・・」と言いつつ、軽く指を1本立てる。
かっこいい、俺。
もちろん、こちらの意図は通じる。かっこいいから。
「では、こちらへどうぞ」
と促された席の方を見ると・・・
僕の横のボックスに3人づれの若い女の子がいる。それは良い。嬉しい。かっこいい俺と恋が始まるかもしれない。
しかし、僕の席の奥に目を移せば、やる気に満ちているんだか、満ちていないんだかよく分からない と言われているかもしれないし、いないかもしれないのだが、会社の同じフロアの若いお兄ちゃんがいるし。
しかも、PCを広げ、ノートにペンでなにやら難しそうな式だか文章だか書いてるし。
こんな(一見)高尚なことをやっている同僚の横で、俺は漫画を読むのか、と。
ちょっとショックを受けるが、かっこいい俺なのでクールにすましてみる。
「こんばんわ。ここで本を読んで、あとでブログに読書日記を書くって事ですね?」
なんて言われてしまって、まさか『かっこいいスキヤキ』なんていうナンセンス・マンガを読んでいるとは言い出せなくなった。
「ん?ああぁ・・・」
とか、適当に相槌を打ち、彼に背を向け、自分の体で本を隠すようにしてこっそりと『かっこいいスキヤキ』を読む。
彼の視界にある俺の背中には、かっこいいオーラを漂わせながら。
明日、会社の人に
「ファミレスで、木公さんがかっこよく本を読んで勉強していらっしゃいました」
と言って回ってくれ、と心でこっそり祈りながら。
しかし、しかしである。
「プロレスの鬼(3)」という作品に差し掛かったら、クールでかっこいい俺が吹っ飛んだ。
プロレス好きの中年男性が、幼少の頃に弟とプロレスごっこをしたことを回想する話がおかしすぎる。
久しぶりに声を出して笑った。
スーパーの買い物袋を頭から被って目と口の部分に穴を開けて覆面レスラーになるとか、確かに僕もやった。
そういう、ちょっと懐かしいプロレスごっこのあれこれが詳細に書かれていて、笑い声が漏れた。
後ろから同僚に見られていないかとヒヤヒヤしている、(自称)かっこいい俺。
つーか、彼も公衆の面前でぶつぶつと独り言をぶっこいてたから、おアイコだけど。