エスカレーターで片側を空ける、つまり、停止したまま乗る人は一方の端に並び、他方の端は歩行しながら乗る人が使うという利用法は、日本中でわりと広く見られる集合現象だ。
ただし、このような利用方法には反対意見もあるようだ。
一つには、エスカレーターにかかる重量が不均衡になることで、機械の損傷が早まるからやめるべきだという意見。機械のことはよー知らんけど、関東では左空け、関西では右空け(あれ、逆だっけ?)と傾向が分かっているのだから、メーカーがそれにあわせて重量のかかる方を補強しておけばいいんじゃないかと思ったりもする。
二つ目には、歩行者による振動や、事故による急停止による将棋倒しの危険性。立ち止まって手すりに掴まっていれば踏みとどまることができる場合でも、手放しで歩く人々は滑落して危険であるという主張。確かに、エスカレーターの使用法掲示や放送案内では立ち止まって手すりに掴まることを命じているし、これは頷ける。
エスカレーターで歩行すべきでない三つ目の理由として挙げられているのは、輸送効率の問題。
つまり、左右2列になって全員が立ち止まって輸送される方が、片方だけ立ち止って他方を歩く場合よりも、一定の時間内に運べる人数が多くなるという主張。一人ひとりが急ぎたくなる気持ちをグッとこらえて、おとなしく立ち止った方が、結局は全員がすばやく移動できるのだと言っている(急がばまわれ?)。
ただし、その前提として、エスカレータ上に並ぶ人々の「間隔は停止者は狭く、歩行者は広い」というものと、「歩行者の速度はそれほど速くない」ということを仮定しないといけないようだが。
ちゃんと計測したことは無いけれど、確かに、実際の人々の流れを見ていても、歩行者側の速度はそれほど速いものでもなさそうなので、この前提はそれほどおかしくないかもしれない。
ただし、少々ぐぐってみたところでは、それを実証するデータは見つけられなかった。
唯一見つけたのは、Java applet で作ったシミュレーション。
「エスカレータを効率良く使う」では、50人がエスカレーターを通過する状況を web ブラウザー上で模式的に表し、全員が通過するまでの時間を計測している。
結果は、
(a) 左右ともに詰めて立つ ⇒ 2213ステップ
(b) 左は詰めて立ち、右は1段あけて2倍速 ⇒ 2149ステップ
とされている。
(b)の方が少々早いが、(a)とほぼ変わらないパフォーマンスが得られている。歩行による危険を勘案すれば、(a)が効率的であるというのが同ページでの結論だった。
#その他、いくつかのパラメター・セットが提示されている。
「ほぉ、そうか・・・」と納得しかかったのだけれど、エスカレーターの長さに依存して結果は変わるんじゃないかと思った、直感的に。
止まっている人(左側)と歩いている人(右側)の速度の差は、距離が長くなればなるほど増幅されるはずだ。つまり、「エスカレータを効率良く使う」で行われているシミュレーションも、エスカレータの距離が伸びれば、全員立ち止るよりも、片方を歩行者のために空けておくほうが効率がいいという結果が得られるのではないかと思った。
たとえば、分速5mの人と、分速10mの人は速度の差が2倍であるが、彼らが1mの距離を移動する場合、5m/分の人は12秒、10m/分の人は6秒となる。相対時間は倍となるが、絶対時間では数秒の違いしかなく、無視し得よう。
しかし、彼らが100mの距離を移動するとするなら、5m/分の人は20分、10m/分の人は10分となり、かなりの時間の差だ。
同様に、シミュレーションで得られた a:b = 2213:2149 という時間の差も、距離が伸びると差の絶対量が大きくなる(しかも、bが特に有利になる)のではないかと思うのだ、直感的に。
そこまで考えて、同ページにはシミュレーションのソース・コードも公開されているので改造して追試しようかと思ったのだけれど、Java applet のコンパイルなんて10年前にやったきり何も覚えちゃいないし、めんどくさくなってパスした次第。
誰か、Java applet に強い人、やってみない?
#VBとかで一から書いてもいいと思うし。初学者への練習問題とかさ。
その他、エスカレーターの輸送効率に関して、何か情報(査読つきで、信用できる論文とか)をお持ちの方がいらっしゃったらお知らせくださいませ。
以前この Java アプレットを見たことがあります。それ以来エスカレータを利用する度にこの話を思い出しています。
このアプレットが示しそうとしているのは、待ち行列の最後の人がエスカレータの一番下の段に乗るまでにかかる時間は、待ち行列の長さに比例し、移動速度には影響を受けない、ということだと思います。
つまり、エスカレータ全体の輸送効率は、「エスカレータに乗るまでの待ち時間+乗っている時間」で決まるということです。
十分に待ち行列が小さい場合(平日の昼間など)は、直感が示すように、エスカレータに乗っている時間を短くする戦略が有利です。一方で、待ち行列が長い場合(朝夕のラッシュ時など)には、待ち時間を短くする戦略の方が有利になります。
「エスカレータの長さ」が影響するのは「エスカレータに乗っている時間」だけなので、小さな待ち行列に対しては強い影響がありますが、待ち行列が長くなるにつれてその影響は少なくなっていきます。
なお、実際にエスカレータの利用状況を観察すると、歩かないで上る列は前後に0~1ステップ程度空けるのに対して、歩いて上る列は前後に2~3ステップ程度を必要とし、エスカレータに乗る直前に一瞬立ち止まっていることがわかると思います。
また、混雑時の待ち行列の消費速度は、歩いて上ろうとする列よりも歩かずに上ろうとする列の方が早いことも観察できると思います。
Myfunaさんのコメントを見てM/D/1モデルとM/M/1モデルの比較でいいのかしらんとかちょっと考えてしまいました。
うまくやれば簡単に求まりそうな気がしたのですが寝起きだし土曜日なのでうーん、やっぱり良く分かりません。
寝起きの寝ぼけ眼でMyfuna氏の説明を読んで悟ったことは、
“待ち行列の解消にかかる時間は、単位時間あたりにエスカレーターに乗り込むことができる人の数に依存する。乗り込むことのできる人の数は、エスカレーターの距離に依存しない。ゆえに、このシミュレーションにおいてエスカレータの距離を考慮しても仕方がない”
っつーことですな。
この問題を考えるとき、どうしても「エスカレーターを降りる人」に目がいってしまっていたけれど、逆に「乗り込む人」に目を向けるとクリアに理解できるという、発想の転換が気持ちよかった。
僕が書いている間に、らおう氏のコメントが・・・。
しかも、君も寝起きか~い!
M/D/1、M/M/1モデルってのは初耳でしたが、軽くぐぐると、待ち行列のモデルなんですね。
あとでちょっと調べてみる。
#今は寝ぼけてるし、これから「つばさ」見にゃならん。
2つ上の自分のコメント、ちょっとおかしいわ。
Myfuna氏が言う「エスカレータに乗るまでの待ち時間+乗っている時間」のうち、前の方しか考えてないので。
やっぱ、例のシミュレーション、人数とエスカレータの長さを変化させて、直感的に理解したいなぁ。
グラフを描いてくれてる資料をみつけました。
http://www.jade.dti.ne.jp/~miyanisi/index.files/2007MOTsystemdesign/ResponseReliability.ppt
M/D/1が歩かないモデル(処理時間一定)
M/M/1が歩くモデル(処理時間がランダム)
混雑してくるとM/D/1のほうがエスカレーターを抜ける時間(応答時間)が短くなるんですかね?
心理学的な話としては、「スキー場のリフトの移動スピードを速くしても、リフト乗り場の混雑状況は全く変わらない」という話と同じなのかなぁと思いました。
あ、いや、前言撤回します。
スキー場のリフトの話って、Schelling の “Micromotives and Macrobehavior” に載ってる話ですよね。
実は、僕もこのエントリを書く前に、Schelling のスキー場の話を思い出していました。;-p
この話を知らない人のために簡単に説明しておくと、スキー場の待ち行列を解消するためにリフトのスピードを早くするとどうなるかという話。
シェリングの解は、「待ち行列は、かえって長くなる」。
スキー場の人々は、循環している。つまり、リフトの待ち行列にいた人は、頂上に行き、スキーで滑り降りて、再びリフトの待ち行列に並ぶ。(人間が循環するというのは、今回のエスカレーターとの最大の違い)
スキーヤーたちは、(1)リフト待ち行列(待ってる)、(2)リフトの上(乗ってる)、(3)斜面(滑ってる)、のいずれかの場所に配置されることになる。
リフトが早く動くと、(2)リフトの上に存在する人数が減少する。全体の人数は一定なので、リフトの上から減った人は、他の場所に存在しなければならない。行き着く先は(1)リフト待ち行列 しかない。
らおうさんが紹介してくださった資料は、見る前にアルコールが入っちゃいました。集中力が足りなくて読み解けないので、素面のときに見直します。
情報提供ありがとうございました。
スキー場のリフトの話は、僕は某Y岸先生との雑談で聞いた話だと思っていたんですが、ご指摘通りのSchelling本を用いた彼の少人数講義(「行動科学演習」とか何とか)での議論で聞いた話だったのかもしれません(さすがに学部生時代の話で詳細は忘れちゃいました)。
このとき納得いかない顔してたら、先生は「シミュレーションやればわかる」みたいなことを言ったんですが、このテの話ってシミュレーションで確かにそうなったとしても、「何故そうなるのか」について納得いくわけじゃないから、結局頭で考えるしかないような気がします。
ちなみに、「前言撤回」したのは、仰る通り「スキーヤーは循環している」ことにコメントを書き込んでから気づいたからです。
待ち行列理論に関しては、情報処理技術者試験を受けたときに勉強したんですが…、使われる専門用語の日本語訳が僕の直感を妨げるようなものばっかりで、ちゃんと計算できるようにはなりませんでした(涙)。
ちなみに、情報処理技術者試験では待ち行列理論の問題は頻出問題なんですが、年々簡単な問題しか出題されなくなってきていて、ちょっと古い教則本の方がそれなりに詳しくかつわかりやすい説明が載っていると思います。
で、待ち行列理論については忘れて、ちょっと考えてみたんですけど、設定を変えて、幅が2人分のエスカレーターが1本あるんじゃなくて、幅が1人分のエスカレーターが2本あるんだとします。
で、両方のエスカレータにスペースを空けずにビッシリ人が乗っていて、かつ全員がエスカレーター上で立ち止まっている状態を考えます(状態A)。
次に、片方のエスカレーターの回転速度だけを2倍にした状態を考えます(状態B)。エスカレーター上には人がビッシリ乗っていて、全員が立ち止まっている点は同じです。状態Bの輸送量は状態Aの1.5倍ですよね? (エスカレーター2本合わせて、です。単純に(1+2)/2。)
だけど、速い方のエスカレーターでは、何らかの理由で乗客の間隔が開いてしまってエスカレーターに乗っている人の数が1/2になってしまうとすれば、速さのメリットと無駄なスペースのデメリットが相殺されて、2本合わせた輸送量は状態Aと同じになってしまいますよね? 乗ってる人の数が1/2未満になってしまえば、輸送量は状態Aを下回る。
階段を歩いて上るスピードって上りエスカレーターのスピードとだいたい同じくらいじゃないかと思います。とすると、エスカレーター上を歩いて上るというのは速度2倍のエスカレーター上に立ち止まっているのと同じ。Myfunaさんのコメント内容を使わせて頂いて、仮に、立ち止って乗る場合の乗客の間隔(人間含む)が1.5ステップ、歩いて上る場合の乗客の間隔が3.5ステップだとすると、間隔は2.33倍、エスカレーター上に乗っている人の数は逆数とって0.43倍なんで、全員が立ち止って1.5ステップ間隔で乗った方が輸送量は大きい。
逆に言うと、エスカレーター上を歩いて上ることによって達成される速度が、エスカレーターの速度の2.33倍を超えるのであれば、全員が立ち止るより輸送量は大きくなるんじゃないでしょうか。
らおうさんと、steraiさんの考え方は、「1人幅のエスカレーターが2本あるとする」という点で、同じ出発点ですね。シンプルにして、わかりやすい発想の転換で、目からうろこでした。
おかげで、直感的に理解できました(他の人のために、理路整然と説明できるほどのレベルまでは、理解できていない。恥ずかしながら)。
Myfunaさんとsteraiさんの議論の結論としては、「エスカレーター上を歩く人々の間隔や速度(一定時間に、どれだけの人がエスカレーター上に存在できるか)に依存して効率が変わる」という点にあります。まったく当たり前の話でありますが、まぁそれが真実なんでしょう。
残された僕の疑問としては、
(1)エスカレーター上を歩く人間の速度や間隔を正確に測定したデータはあるんだろうか?議論の前提となるデータが正確じゃないと、得られる結論も不適切なものになりますよね。
自分が中学生だったら、夏休みの自由研究として、毎日駅のエスカレーターに張り付いて測定するのになぁ。
(2)日本中の人々を訓練して、エスカレーター上を歩くときに隙間を空けずに素早く移動することができるようにすれば、「エスカレーター上は歩いた方が効率がいい」という結論になるんだろうか。
義務教育の体育なんかで、列を作って1列に歩くような訓練は誰しも受けますよね?あれと同じように、全国民を訓練してみたらどーよ?
(1)に関しては、僕も興味あります。未読ですが、『となりの車線はなぜスイスイ進むのか?』(トム・ヴァンダービルト 2008年 早川書房)あたりに関連情報が載ってないでしょうか。
(2)に関しては、全く間隔を開けずに歩けば、スピードアップの分だけ効率は良くなるでしょうね。単純にエスカレーターのスピードをアップしたのと同じことなのだから。
ちなみに、僕、上の方で「心理学的にはスキー上のリフトの話と同じ」と「心理学的には」という妙な文言をはさんでますよね? その意味なんですが、このエスカレーターの話が何故面白いかというと、木公さんの表現を用いれば「一人ひとりが急ぎたくなる気持ちをグッとこらえて、おとなしく立ち止った方が、結局は全員がすばやく移動できる」という点がパラドクスに見えるからですよね?
ところが、これを工学的(って言って正しいんだろうか?)に見ると、全然パラドクスじゃない。「スピードがA倍になっても、乗る間隔がA倍以上になってしまうから、かえって効率は悪くなる」。当然の話ですよね? ところが、エスカレーターを歩いてのぼる個々人にとってはやはり歩くことによってエスカレーター部分の通過時間は確実に短くなるわけじゃないですか。ただ、そうすることによって「エスカレーターに乗れる人の数」がむしろ減ってしまう、という事実に目が向かない。エスカレーターに到達する前の「待ち時間」を無視してしまう。そこを無視してしまうと、「皆が歩いた方が効率が良いに決まっている」と思ってしまう。だけど、これは個々人の感覚としてはこう思ってしまうのも仕方ないかなぁと思うんです。エスカレーターを空から俯瞰するような視点を素人が獲得することは難しい。
ここでエスカレーターの専門家が現れて「歩いた方がむしろ効率は悪くなります。待ち行列理論では…」と説明しても、「歩いた方が(歩いている部分に関しては)速い」という事実がある以上、素人としては「全く理系のやつは屁理屈ばっかりこねやがって」とイライラするし、説明する側としても「これだから文系の人は困る」みたいに、説明したことによって両者の隔たりはますます大きくなってしまう。「歩くとスピードは上がるが、間隔が広がってしまう」というただそれだけのことがわかれば納得いく話なのに。(と言うわけで、科学技術コミュニケーターみたいな仕事はやっぱり重要かなぁと思います。)
そういう、ある部分さえ理解できれば簡単な話なのに、その部分を説明してくれる人があまりいない話として、スキー場の話と似ていると思いました。また、エスカレーターなりリフトなりに乗ってる人は乗ってる状態にしか着目できない、というのが「心理学的に」面白い、と思ったんです。
その面白さ、多分、初めっからずーっと共有していると思います、はい。
同じ釜の飯を食った中ですから。
ところで、シェリングのリフトの話ですが、僕はsteraiさんが最初にどこで聞いたのか、かなり正確に言い当てることができます。きっと、某Y岸先生の3年生(もしかしたら、移行直後の2年生かも)向けの社会心理学の講義です。しかも、その第1回目の講義において。
「このクイズは、毎年一番最初に受講生に対して出題している」と、彼は言っていました。ですから、steraiさんの世代もそこで聞いていたのでしょう。
本当に毎年言っているのかどうか、裏づけも取りました。単位を取得した翌年、その講義の1回目を覗きに行ったら、まったく同じことをいいながら講義してました、彼。
「シミュレーションやってみろ」と言われたのがどの機会なのかは、僕には分かりません。
面白い問題ですね。
わたしもちょっと考えてみましたが、ある程度イメージが出来たところで再度このページを読んでみたら、私のたどりついた所は実は一番最初のMyfunaさんのコメントにほぼ書きつくされていました。
ポイントはエスカレータに乗るときですね。乗った後は歩いたり駆け上がったり出来ますが、乗り込む瞬間はエスカレータの運転速度を越えられるでしょうか?毎秒1段で運転するエスカレータに、毎秒2人よりたくさんの人が乗り込めるでしょうか?エスカレータのステップは離散的に1秒に1段しか来ませんから、毎秒2人よりたくさんの人が乗り込むっていうのは1段に3人乗っている状態があるということになります。それは無理な気がしますね。
だとするとエスカレータの輸送能力は「1段に3人は乗れない」ということがボトルネックになって、運転速度(毎秒1段=2人)が上限ですね。
すると、乗った後で歩き出しても、次の人は1秒後にしか上って来れないので、必然的に間隔があきます。だから「日本中の人々を訓練して、エスカレーター上を歩くときに隙間を空けずに素早く移動する」というのもあまり大きな効果は見込めないわけです。
余談ですが、歩いている人の間隔は、その人たちが1秒間に何段歩いているかを表しますね。
さて、では1人あたりの所要時間ですが、これはMyfunaさんのおっしゃるように「エスカレータに乗るまでの待ち時間+乗っている時間」です。乗っている時間は歩けば短くなるし、歩くことによる時間短縮の効果は木公さんがおっしゃるようにエスカレータが長いほど大きくなります。
一方、待ち時間については、歩こうが走ろうがエスカレータの輸送能力は毎秒2人だから影響を受けない。待ち行列理論でいうと「エスカレータに乗り込む」ということを「サービス」だと考えて、サービス時間が一定(1秒)のM/D/1モデルになるんですかね。
以上は理論的な話で、それをふまえた上で現実にはMyfunaさんのおっしゃるように「混雑時の待ち行列の消費速度は、歩いて上ろうとする列よりも歩かずに上ろうとする列の方が早いことも観察できる」のだとしたら、「十分に待ち行列が小さい場合(平日の昼間など)は、直感が示すように、エスカレータに乗っている時間を短くする戦略が有利です。一方で、待ち行列が長い場合(朝夕のラッシュ時など)には、待ち時間を短くする戦略の方が有利」という結論になるんですね。
あぁなるほど。僕は「エスカレーターの回転速度を上げたのと同じ」だと思っていたので、「全国訓練」に効果ありと思ったんですが、「同じ」じゃないわけですね。
サンゴロウさんの前半部分は、「エスカレータへの乗りこみがボトルネック」という話であり、とてもわかりやすい説明でした。そして、”理論的には”、エスカレータ上で歩こうが立ち止まろうが、待ち行列の解消時間が同じになるというのも納得です。
ということは、歩きたい奴らは歩かせときゃいいんですよね。それによって、パフォーマンスが下がることは基本的にないんですよね(転倒の危険性などは考えないことにする)。
ところが、現実の状況を観察した Myfunaさんのコメントによれば、「(歩行する人は)エスカレータに乗る直前に一瞬立ち止まっている」ために、理論上の待ち行列解消時間よりも、歩く人々の待ち行列解消時間が長くなるとされています。
Myfuna さんをホラ吹きだと糾弾するつもりは全然ないのですが(むしろ、彼のコメントの慧眼さを尊敬しています。みんなも同じ気持ちのはず)、本当に人々は一瞬止まっているんだろうか?立ち止まるとするなら、その理由は何だろうか?間隔を空けることによる安全の確保のため?
僕にとって、乗り込む前に一瞬立ち止まるという行動がとても不可解です(僕はエスカレーターの待ち行列が長くなるような都会には住んだことがないので、観察や洞察が足りないのかもしれないが)。
歩く人々の間隔は、彼らが意図的に空けているのではなく、「単位時間あたりの移動距離そのもの」という解説に納得したものですから。
あと、エスカレータの待ち行列を素早く解消するために人々を啓発するとするなら、「立ち止まった方が効率がいいですよ」というメッセージではなく、
「歩いても良いけど、横の列より遅れないようにテキパキと乗り込むこと」
の方が人々に受け入れられやすく(歩きたい人々の行動を制限しないから)、実行もしやすい(前の人との間隔を最小限にして自動改札を抜けるというテクニック並みには習得しやすいと思う。僕はいまだに大都会の自動改札で、後ろから舌打ちされるけど)のではないかと思うのですが、どうなんでしょう?
蛇足です。
私の話の大前提である「エスカレータのステップは離散的に1秒に1段しか来ないから、1段に3人は乗れない」というのが本当にそうなのか、ちょっと自信がないです。前の人が乗り込んですぐ段を上がり、空いたその段に次の人が(少し大股で)乗り込む、ということを1秒以内に出来れば、不可能ではない。それこそ訓練すればいけるかも。
でも今日実際にエスカレータに乗ったときに観察したのですが、運転速度って結構速いですね。毎秒2~3段くらいありそう。1段3人乗りの曲芸はかなり無理っぽいと思いました。
だから妥当な啓発メッセージは「なるべく前の人との間に段を空けずに乗り込もう。1段たりとも無駄にするな!」ですね。
蛇足2。
ボトルネックは、乗り込むときと同じことが下りるときにも存在するかも。
蛇足3。
歩いている人が乗り込むときに一瞬止まる話ですが、本当に速度がゼロになるかどうかは別にしても、少なくとも歩く速度より遅くなるのはあると思います。なぜなら乗り込むときはエスカレータの運転速度まで落とさざるを得ないから。
蛇足3に関しては、「歩く列」にも「止まる列」にも同じように作用するはずなので、待ち行列の解消における両列の差には影響を与えませんよね。
はい。与えませんね。
憶測ですが、歩く列では速度が一瞬落ちてまた速くなるので、立ち止まったというふうに見えるのかもしれません。止まる列は速度が落ちてそのまま維持されるので、立ち止まったとは見えなさそうです。(お、ちょっと心理学的?)
もっと言うと、速度が落ちることは後続の渋滞の原因になりやすい(高速道路の渋滞の原因はちょっとした上り坂だったりする)そうなので、本当に立ち止まることになる人も多いのかも。
> 憶測ですが、歩く列では速度が一瞬落ちてまた速くなるので、立ち止まったというふうに見えるのかもしれません。
この錯覚、本当にあるとするなら面白い。
知覚心理の人たちが研究してそう。誰か、知らない?
後から後からちょっとずつ気が付くのでしつこいコメントになってます。
乗り込むためにエスカレータの運転速度まで減速するとき、地面に対する速度はゼロではないですが、エスカレータに対する相対速度はゼロですね。だから動作としては完全に立ち止まっている?
そう言われてみれば、エスカレータを歩いて利用するとき、乗り込む最初の1段目は両足をそろえて乗っているかも。両足がきちんと乗っかってから、歩き始めているかも。
普通の階段などでは1歩で抜けるところを、両足で一時停止しているイメージ?
今度エスカレータに乗るとき、周りの人を観察してみようと思います。
私の観察では、速度が落ちることによって、後続に渋滞が発生する、のが立ち止まりが発生する理由に思えます。
速度が落ちる理由は、歩行時に比べ、エスカレータを歩くときは前の人との距離をより広くとる必要があるから、だと考えています。
一方で、降りるときは、前の人との距離がマージンとなるので、立ち止まり現象は発生しない(しづらい)ようです。
あと、エスカレータの渋滞モデルは、駅のホームのように定期的に大きな待ち行列が発生する場合と、デパートのようにランダムに待ち行列に人が追加されていく場合の、どちらを想定するかで結構話が変わるんじゃないかと気がつきました。
私は、駅のホームのようなモデルを想定していました。
ベッドの中でうつらうつらしていたら、学生時代の指導教官だった人の声が頭の中に響いた。
「データはあるのぉ?」
この場合、データというのは実地の観察データでもよいし、実験環境を作ってデータを集めてもいいし、コンピュータ・シミュレーションでもいい。
そんなわけで、やっぱ、追試シミュレーションやってみるべきですよね。
「駅モデル vs デパートモデル」(それぞれがどういうものか、まだ理解できてないけど)とか、「乗り込むときの速度低下や前の人とのマージンの大きさを変更したら、どういう結果になるか」とか、調べてみたいことがたくさん出てきた。
ふと思ったんですが、通常の階段状のエスカレーターと、羽田空港なんかにある「歩く歩道」みたいなヤツだと、「乗り込む瞬間」「降りる瞬間」の動作や、「間隔の問題」がまた異なってくるのでしょうか(「歩く歩道」には「段」がないため)。
少なくとも、これまでの議論では、「坂であること」(エスカレータ)にまつわる要因は指摘されていないので、歩く歩道でも理論上は同じ話になると思いますよね。
また、実際の利用者の行動に関しても、特別なことが起きていると想像しにくいなぁ。基本的にエスカレータと同じなんじゃないかなぁ。あんまり積極的な根拠はないけど。
東京駅の京葉線ホームは、他のホームと離れた場所にあって、そこへの通路はエスカレータと歩く歩道がいくつか連結した作りになっています(ディズニーランドへの客がよく利用している)
ここで観察した限りでは、歩く歩道では立ち止まりは発生しない(しづらい)、という感じ。
理由としては、エスカレータに比べて移動速度が速く、意図的に前の人と距離を開ける必要が少ない&エスカレータに比べて前の人との距離をそれほど開ける必要がない、という感じかなぁ。
「歩く歩道」→「動く歩道」のミスです
> エスカレータに比べて移動速度が速く、意図的に前の人と距離を開ける必要が少ない
移動速度が速いと距離を空ける必要が少ないという根拠は?
そして、そうだとするなら、エスカレータでも速度を上げれば、人々の間隔は小さくなるのだろうか?
> 「歩く歩道」→「動く歩道」のミスです
の下手人は、steraiさんだよね。以下、3人がその表現に引っ張られてる。:-p
「歩く歩道」の何がミスだかしばらくわかりませんでした(笑)。何分かかかって理解したら、今度はクックックと笑いが止まりません。
ところで、サンゴロウ商会さんの最初のコメントで僕がなるほどと思ったのは、「エスカレーターには段がある」ということなんですよ。つまり、「段」単位にしか乗り降りできないし(乗り込むときに一瞬立ち止まらなければならないのは、次の「段」が出てくるのを待ってるわけでしょう?)、利用者の間隔も「段」単位の整数となる(例えば、前の人の1.3333段後ろに立つことはできない)。だから、平らで「段」の存在しない「動く歩道」ではこれまで議論してきたような「エスカレーター上の行動学(?)」が全く当てはまらないんじゃないかと思ったんです。で、そこでの個々の人間行動が異なるのであれば、全体として生じるマクロパターンも異なるのかなぁ、と。
「エスカレーターには段がある。動く歩道にはない」っつーのは、まったくもっておっしゃるとおり。
ちょっと考えりゃ気づくことなのに、脊髄反射でコメント返しちゃダメですね。
駅モデルとデパートモデルについて。
駅モデルでは、瞬間的に大量の人が来て、その後しばらくは誰も来ない。100人が来て輸送能力毎秒2人だと全員が乗り込むのに50秒。全員が上の階に行くまでの時間は、プラス最後の人が乗っている時間(エスカレータの長さと運転速度と、人が歩く場合はその速度に依存)。
元ネタのJavaアプレットは駅モデルですね。
デパートモデルでは、単純化すると毎秒x人がエスカレータにやってくる。xが2より小さい場合は待ちは発生しない。逆に2より大きいと待ち行列は伸びる一方。
実際には、デパートには十分な量のエスカレータを設置しているだろうからエスカレータにやってくる人は平均すれば毎秒2人より少ないが、ランダムに来るため混雑するときとそうでないときがあり、待ち行列は出来たり解消したりを繰り返す。その振る舞いを解析するのが待ち行列理論。
待ち時間に影響するパラメータは、平均到着人数(そのデパートでどれくらいの人がどれくらいの頻度で階を移動するか)とエスカレータの列の数(2人乗りが1台なら2列)とサービス時間(次の段が来るまでの時間=1秒)。
エスカレータに乗っている時間は駅モデルと同じ。
乗る瞬間の行動については、待ちがあるときと無いときで違いますね。
待ち行列に並んでるときのスピードは列が進む速度=エスカレータの運転速度=毎秒1段=40センチくらい?
各場合での人間の相対速度は、
待ち有り、乗ってから静止:
乗る前 =毎秒40センチ
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=ゼロ
待ち有り、乗ってから歩く:
乗る前 =毎秒40センチ
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=歩行速度
待ち無し、乗ってから静止:
乗る前 =歩行速度
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=ゼロ
待ち無し、乗ってから歩く:
乗る前 =歩行速度
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=歩行速度
動く歩道について。
段がないので、輸送能力は純粋に「どれくらい間隔を空けるか」と「その間隔が確保されるまでどれくらいかかるか」で決まりますね。
乗ってから静止する場合、間隔はかなり狭いですが、その間隔が確保されるまでの時間は動く歩道の運転速度で決まるので結構かかります。
乗ってから歩く場合、間隔は広くなりますが、前の人が乗ってすぐどいてくれるので、間隔が確保されるまでの時間は短くなります。間隔の伸びと間隔確保時間の短縮のトレードオフのどっちの影響が大きいかは観察しないとわからないですね。
乗る瞬間の行動については、
待ち有り、乗ってから静止:
乗る前 =毎秒40センチ
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=ゼロ
待ち有り、乗ってから歩く:
乗る前 =毎秒40センチ
乗る瞬間 =歩行速度
乗ってるとき=歩行速度
待ち無し、乗ってから静止:
乗る前 =歩行速度
乗る瞬間 =ゼロ
乗ってるとき=ゼロ
待ち無し、乗ってから歩く:
乗る前 =歩行速度
乗る瞬間 =歩行速度
乗ってるとき=歩行速度
待ち無しで乗ってから歩く場合、相対速度は一定ですが絶対速度は
乗る前 =歩行速度
乗ってるとき=歩行速度+動く歩道運転速度
降りた後 =歩行速度
と変化するので、乗った瞬間は後ろに引っ張られ、下りる瞬間は前に引っ張られる感じがしますね。
すでに結論が出ているような気がしますが、動く歩道の運転速度がエスカレータに比べて速く設定されているのは、単純に段がないせいだと思います。
エスカレータの場合、段にタイミングを合わせて乗る必要があるので、スムーズに昇降できる運転速度の上限が動く歩道よりも低いのではないかと。
ところでひとつ疑問なのですが、あまり観測事例が出てこないところを見ると、ここにコメントしてる方は、普段エスカレータを利用してないんでしょうか?みんな車通勤なのかな?
僕に関して言えば、基本的に自動車生活です。ですから、駅などのエスカレータをほとんど使用しません。使ったとしても田舎なので、混雑したエスカレータに遭遇することはめったにありません。ですから、実感としてイメージできることは、少ない方の人間だと思います。
もちろん、人生の中で何度か混雑しているエスカレータに遭遇したことはありますが、今までは混雑にムカついていただけで、そこで起きている集団力学について考えてみようと思ったことは一度もないです。今後は、変わるだろうと思います。社会に対する洞察が深まって、非常に楽しい今日この頃です。
僕は大の混雑嫌いで、エスカレーターのあるようなところに普段あまり行きません。行列に並ぶのが大嫌いなこともあって、駅などではたいてい階段をのぼります。
今回も「これは実際のエスカレーターを見てみないと話にならないな」とは思ったんですが、結局、人ゴミが嫌で行かず仕舞い。
すみません、横から失礼します。
このページを見て気になったので、駅のエスカレータを観察してみました。
歩いて利用する列を見てみましたが、エスカレータに乗る前に立ち止まる事はなく、歩くスピードのまま乗っていました。
また、歩行中の間隔は1段、または0段が多かったです。
むしろ止まって利用する列のほうが、乗る前に一瞬立ち止まっているようにも感じました。
止まって利用する場合は、速度を保ったままエスカレータに乗ることができないからだと考えています。