♪バババーン バンバンバン バーーン
ちゃーららーん ちゃらーららーん ちゃらららららーん
ちゃーららーん たらーららーん たーららららららーん
ちゃーらー ちゃちゃちゃちゃーらー ちゃらーちゃらららー
ちゃーらー ちゃちゃちゃちゃーらー たーらーたらーららー
以下、しばらくは、この映画や原作に興味がない人にも伝わるように書く。ネタバレはない(つもり)。
正式なタイトルは『大奥』で間違いないのだが、「男女逆転『大奥』製作委員会」という委員会名称があった。どうも他の一般的な「大奥」作品と区別するために「男女逆転」という枕詞を付けているようだ。
僕もこの夏読んだ。現在、単行本は6巻まで発売されており、連載は継続中だそうだ。
映画の枕詞に「男女逆転」とある通り、男女が入れ替わった大奥。徳川幕府将軍が女性で、大奥に詰めているのが全て男性。
この設定だけ聞くと、トチ狂ったコントか、シュールなゲイジツ的ファインタジーか、エロ女子向けのやおい作品と思うかもしれない。
しかし、意外や意外。とてもマトモで、世の中に翻弄される男女の悲劇の物語として、たいへん読み応え/見ごたえがある。
映画では、徳川八代将軍・吉宗を柴咲コウ、大奥の新入り・水野を男性アイドルグループ・嵐の二宮和也が演じている。
以下、映画を見た率直な感想を書く。ここからは、原作を読んだ人や映画を見てきた人としか共有できない内容になるものと思われる。興味と時間のない人は、このあたりで読むのをやめるのが吉かもしれない。
この映画のサイトや宣伝ポスター等で出演者が並んだ写真を見ると、駄作臭がプンプンしている。
高飛車な表情を浮かべる柴咲コウが中央にいて、周りにはなんだか派手な衣装で薄ら笑いを浮かべる人々。アヤシイ。そして、妙に貧相な表情でつっ立っている二宮和也。見たら失敗するような気がしてならない。
しかし、案ずるより見るが易し。決して傑作とは言わないが、原作の二次創作として、完璧な内容。1巻に相当する内容を完璧に再現してみせた。この完コピ具合は、原作ファンなら一度はチェックしてみるべき。
ただし、1点だけ失敗しているところがある。出演者が並んだ写真を見てわかるとおり、主役の二宮和也が完全に浮いていた。見る前の懸念が完全に真実となった。
1巻の表紙になっている通り、原作の水野は切れ長の涼し気な目が何よりの特徴であり、魅力だ。それと似ても似つかない、二宮和也のどんぐり眼よ。しかも、終始、眉間にシワを寄せた表情であって、豪華絢爛な大奥の中にあって、一人悲壮感を漂わせてしまっていた。とても残念。
まわりの男たちが派手な裃を着用する中、水野が一人だけ漆黒の裃を身につけて注目を浴びるというシーンがある。原作でも一つの山場だ。
映画にもその裃が出てきて、アノ意匠も完璧に再現されていた。衣装自体はとても美しかった。
しかし、残念なことに、二宮和也が着用すると単なる貧相な作業着にしか見えなくなってしまった。どうも彼は他の出演者に比べても小柄なようで、男たちが並んだシーンでは完全に画面の中に埋没してしまっていた。それにはがっかりさせられた。
・・・不当かもしれないが、吉宗が大奥の美男子50人を集めるシーンの黒裃は全員ビシッと決まっていたんだよなぁ。まぁ、全体が黒いのでコントラストが小さくてカッコ良かっただけという反論はあるわけだが。
そんな二宮和也に対して、柴咲コウは良かった。本当によかった。もう、彼女以外に同作品の吉宗は考えられない。映画の後に帰宅し、原作をパラパラめくってみたのだが、絵柄が全て柴咲コウに置換されて見えてしまうと言ってもオーバーではない。セリフの吹き出しも柴咲コウの声で読める。吉宗の目は、財政改革の決意を秘め、贅沢な部下たちへ常に軽蔑を向けている。原作を読めばそれはすぐに分かる。それを完璧にコピーした柴咲コウがつくづくすごい迫力だった。
原作ファンは納得のキャスティングだろう。
その他、映画のカット割りも原作に忠実だった。初見では見逃すような細かいコマまで、映画ではわりと忠実に再現されている。初めての夜伽のシーンなんか、ふたりが抱き合ってそのままフェードアウトするという構成(p.148)まで完璧な再現具合。
もちろん割愛されたシーンもあるし(もっとも重要と思われる点としては、文書管理の村瀬は出てこない)、原作にはないシーンが付け足されている部分もある。
柴咲コウ演じる吉宗が、赤い馬具を装着した白馬で水辺を走るシーンが追加されていた。
暴れん坊将軍かよ!劇場で吹いた。頭の中でテーマ曲(冒頭の書き下し、および、以下の映像を参照)が鳴り響いた。
なお、『大奥』はTBS制作。『暴れん坊将軍』はテレビ朝日の番組。
まだピンと来ない人のために説明すると、暴れん坊将軍は八代将軍・吉宗が主人公。