映画『大奥』(男女逆転)を見た

♪バババーン バンバンバン バーーン

 ちゃーららーん ちゃらーららーん ちゃらららららーん
 ちゃーららーん たらーららーん たーららららららーん
 ちゃーらー ちゃちゃちゃちゃーらー ちゃらーちゃらららー
 ちゃーらー ちゃちゃちゃちゃーらー たーらーたらーららー


 以下、しばらくは、この映画や原作に興味がない人にも伝わるように書く。ネタバレはない(つもり)。

大奥 2010年10月1日公開の映画・男女逆転『大奥』を見た。
 正式なタイトルは『大奥』で間違いないのだが、「男女逆転『大奥』製作委員会」という委員会名称があった。どうも他の一般的な「大奥」作品と区別するために「男女逆転」という枕詞を付けているようだ。

 原作は、よしながふみ『大奥』。あまり読んでいる人はいないかもしれないが、人気作品のようだ。特に女性にファンが多いように思う。
 僕もこの夏読んだ。現在、単行本は6巻まで発売されており、連載は継続中だそうだ。

 映画の枕詞に「男女逆転」とある通り、男女が入れ替わった大奥。徳川幕府将軍が女性で、大奥に詰めているのが全て男性。
 この設定だけ聞くと、トチ狂ったコントか、シュールなゲイジツ的ファインタジーか、エロ女子向けのやおい作品と思うかもしれない。
 しかし、意外や意外。とてもマトモで、世の中に翻弄される男女の悲劇の物語として、たいへん読み応え/見ごたえがある。

 映画では、徳川八代将軍・吉宗を柴咲コウ、大奥の新入り・水野を男性アイドルグループ・嵐の二宮和也が演じている。

 以下、映画を見た率直な感想を書く。ここからは、原作を読んだ人や映画を見てきた人としか共有できない内容になるものと思われる。興味と時間のない人は、このあたりで読むのをやめるのが吉かもしれない。

* * *

 この映画のサイトや宣伝ポスター等で出演者が並んだ写真を見ると、駄作臭がプンプンしている。
 高飛車な表情を浮かべる柴咲コウが中央にいて、周りにはなんだか派手な衣装で薄ら笑いを浮かべる人々。アヤシイ。そして、妙に貧相な表情でつっ立っている二宮和也。見たら失敗するような気がしてならない。

 しかし、案ずるより見るが易し。決して傑作とは言わないが、原作の二次創作として、完璧な内容。1巻に相当する内容を完璧に再現してみせた。この完コピ具合は、原作ファンなら一度はチェックしてみるべき。

 ただし、1点だけ失敗しているところがある。出演者が並んだ写真を見てわかるとおり、主役の二宮和也が完全に浮いていた。見る前の懸念が完全に真実となった。
  1巻の表紙になっている通り、原作の水野は切れ長の涼し気な目が何よりの特徴であり、魅力だ。それと似ても似つかない、二宮和也のどんぐり眼よ。しかも、終始、眉間にシワを寄せた表情であって、豪華絢爛な大奥の中にあって、一人悲壮感を漂わせてしまっていた。とても残念。

 まわりの男たちが派手な裃を着用する中、水野が一人だけ漆黒の裃を身につけて注目を浴びるというシーンがある。原作でも一つの山場だ。
 映画にもその裃が出てきて、アノ意匠も完璧に再現されていた。衣装自体はとても美しかった。
 しかし、残念なことに、二宮和也が着用すると単なる貧相な作業着にしか見えなくなってしまった。どうも彼は他の出演者に比べても小柄なようで、男たちが並んだシーンでは完全に画面の中に埋没してしまっていた。それにはがっかりさせられた。

 もっとも、モノクロが主体の原作漫画の中では真っ黒に塗りつぶした人物が目立つのは当然であり、フルカラーの色鮮やかな画面の中では黒い衣装が目立たないのは当然であり、映画化したことの失敗であると言えるかもしれない。黒の裃に関して二宮和也一人に責を負わせるのは不当かもしれない。
 ・・・不当かもしれないが、吉宗が大奥の美男子50人を集めるシーンの黒裃は全員ビシッと決まっていたんだよなぁ。まぁ、全体が黒いのでコントラストが小さくてカッコ良かっただけという反論はあるわけだが。

 そんな二宮和也に対して、柴咲コウは良かった。本当によかった。もう、彼女以外に同作品の吉宗は考えられない。映画の後に帰宅し、原作をパラパラめくってみたのだが、絵柄が全て柴咲コウに置換されて見えてしまうと言ってもオーバーではない。セリフの吹き出しも柴咲コウの声で読める。吉宗の目は、財政改革の決意を秘め、贅沢な部下たちへ常に軽蔑を向けている。原作を読めばそれはすぐに分かる。それを完璧にコピーした柴咲コウがつくづくすごい迫力だった。
 原作ファンは納得のキャスティングだろう。

 その他、映画のカット割りも原作に忠実だった。初見では見逃すような細かいコマまで、映画ではわりと忠実に再現されている。初めての夜伽のシーンなんか、ふたりが抱き合ってそのままフェードアウトするという構成(p.148)まで完璧な再現具合。

孔雀の羽 あと、1巻の表紙カバーの折り返しの部分の模様が、あるシーンにちゃんと出てきたのもスゴい。ていうか、とても印象的なシーンにこの模様が使われていて印象に残る。家に帰ってきて原作を眺め、不意に気づいてびっくりした。

 もちろん割愛されたシーンもあるし(もっとも重要と思われる点としては、文書管理の村瀬は出てこない)、原作にはないシーンが付け足されている部分もある。

* * *

 柴咲コウ演じる吉宗が、赤い馬具を装着した白馬で水辺を走るシーンが追加されていた。
 
 暴れん坊将軍かよ!劇場で吹いた。頭の中でテーマ曲(冒頭の書き下し、および、以下の映像を参照)が鳴り響いた。

 なお、『大奥』はTBS制作。『暴れん坊将軍』はテレビ朝日の番組。

 まだピンと来ない人のために説明すると、暴れん坊将軍は八代将軍・吉宗が主人公。

コメント (8)

  1. 映画・男女逆転<大奥>

     
    楽しみにしていた映画、見てきました〜!
    今回も、初日鑑賞です!
    初日動員17万人!凄いコトですね〜〜〜!
     
    徳川の時代…

  2. kaihiraishi

    キャスティングについての懸念が当たったようで。

    ちなみに吉宗の側近が和久井絵美(この漢字は間違いの気がするがATOK先生がそうだというのでそのままにする)だという噂。これは絶妙なキャストではないかと。水野の幼馴染みの堀北もアリかなと、映画を見てもないし、原作の忠実なコピーなら観に行かなくても良いかと判断した僕が書き込みましたよ。

  3. 木公

    わくいえみの漢字表記は和久井映見ですよ。Google日本語先生は正しく変換してくれますよ。
    すっとぼけつつも、ピシャリと決める側近を和久井映見が好演していました。

    その他、堀北真希もアリですし、本文に書いたとおり柴咲コウもアリでした。
    女性キャストは、いちいちアリなのですよ。

    原作通りなので見に行く必要がないというのは一理あります。しかし、その再現の手腕を見て欲しいなぁ。
    テレビでかかったら、ぜひともご覧ください。

  4. kaihiraishi

    テレビでかかったら必ず録画します。

    まずはマザーウォーターを観に行かねば。
    ご近所でロケしてたんですよね。

    小林聡美さん(これは漢字合ってる気がする)のお店が近くの喫茶店だったのです。お姿も拝見しました。キョンキョン(これも合ってる気がする)も、お見かけしても僕的には何ら差し支えなかったのですが、残念ながら。

  5. 木公

    ここ何年かで、急にKYON2が気に入り始めた当方にとっては、生でお姿を見かけたなどうらやましすぎます。
    (KYON2 と同じ場所に立ったりとか。 https://alm-ore.com/blog/archives/2007/11/post_753.html

    そんなわけで、マザーウォーターは気になってはいたのですが、予告編を見るとなんだか寝てしまいそうで、どうするか考え中なんですよよね・・・。
    もし実際に観に行かれたら、感想を教えてください。

    なお、この映画の出演者はみんな気になるのですが、特に光石研が気になってます。「ゲゲゲの女房」で初めて見たのですが、とてもいい俳優さんだと思いました。

  6. 映画を観るなら

    映画を観るなら 大奥

    ハッキリいって全然期待してませんでした。ところが一転、結構面白い☆最初は男女逆転という設定の、将軍が女で大奥にいるのが男達という馬鹿げた発想の違和感があり…

    • takokuro

      多分、ニノと柴咲コウの作品だから、パロってる、、気がつけよ!ってね。。
      当時、アホな!と笑ってたけど、、何か真実を伝えてる!はず。。

      多分、将軍は美女をスパイとみなし、遠ざけた。
      綱吉にせよ、生類憐みの令の真相は、命をおもちゃにするな!というおふれだったのが、犬猫を大事にして、人の命を切り捨てるおふれに変えてしまった当時の幕府内のおそば番や譜代大名の実態を衝いたものじゃないのかな?
      ニノ入れたのは、ガンツやDNAの映画で、結構、現実に始まってる日本社会の危機をサラッとテーマにしてるから?
      ありがと、ニノ、コウ。

  7. takokuro

    この時期に、三井家が三越として大奥に商人として上がってるんだ。
    だって、大奥は男子は将軍以外はご法度、茶坊主か商人だけだよ、ニュースを持ち込むのは。。
    面白いね!のちの和宮も実は、この三井に嫁いでる。。
    茶坊主vs小姓、、小姓って、オカマ相手として話されるが、実際は、
    茶坊主も遠ざけるための理由に仕立てたってことだろうね?
    茶坊主の方こそ、オカマ魅力で取り入ろうとしたり、毒盛りしたり。
    漢字文献情報の人脈だろうし。
    徳川って、鎖国時代とされるけど、結構、長崎や伊勢通じ、西欧、ヨーロッパ、カトリック宣教師などのニュースは取り入れていたように思える。。
    初代家康が駿府に城を作り、取り巻かれた譜代という実はスパイや自分を担ぎ上げることで、外から将軍宛に入る情報をまず、開いて、都合のいいように伝えるという、いわば、現在の大企業の電話番みたいな立場で居てたんだろうね?そこをスルーするのに大奥に出入りする三井、三越ら商人と毒味役の小姓たる秘書兼ボディガードが将軍との情報の仲介になったってことじゃないかな?しかし、、柴咲コウって、仲間感があるけど、中谷美紀って、敵側にも守られてる不思議さを思う。。半氏が入り込んでないかな。。
    よく政治家の選挙対策員長なんかで、奥さんのこと持ち上げて、実は大変な暴力夫だったりする二重ペルソナ、半氏?
    ハンガリー半がリー、半バーグ?。。。反戦は半戦?つまり、市民革命の美名でのクーデター、テロリズム?

    ともかく、江戸鎖国は佐国の為?市民に海外へ自由に行き来し、招いたりするのを禁じた、というだけで。。でないと、、資本主義化と奴隷資本がもっと早く日本を襲っていたはずで、江戸300年間の平和が育てた町民文化と民主主義感覚って、尊いし、寺子屋なんかで庶民の読み書きそろばんレベルの高さも世界一だしね!
    ま。。
    だって!秀吉、信長の時代で、すでに天正年間に成りすましキリシタン大名が貿易益に絡み、当時のスペイン皇室に取り付いてる奴隷資本と協力し、
    なんと!日本から4少年遣欧使節をマニラに送り、そこで、疫病兵器を特訓し、一人が太陽暦に変えた法王グレゴリウス13世を暗殺させてるんだからね?
    日本って東洋というより、極東として、東南アジアやアジア大陸での対ギリシア神道、ローマ神聖国の歴史や生き様を覆そうとしてきたテロリズムらを浮き彫りにできないように破壊してきたのが戦争の歴史ではないだろうか。
    秀吉や信長に茶頭として使えてたのは天王寺屋俵屋宗達の娘婿の宗及で、
    それに成りすましたのが今井宗久、、。紹鴎の息子。
    利休が処刑された後、裏千家の茶屋四郎次郎の幕府への関与が始まってる。
    朝鮮遠征も一般に語られてることとは違う切実な真相がある。
    成りすまし、宗及つまり、今井宗久の息子は、秀吉、信長網を潰しにかかる。。今井宗薫は光秀に秀吉からの通達として、澪つくしの茄子の濃茶入れを渡す。
    私がS50、お茶の先生の米寿のお祝いの茶会をされた時、京都の先生のお道具の先生からその茄子のお茶入れをお借りになった。
    茄子、成す、身を尽くしって、澪標、、生贄、つまり、、イエスに準じて死ぬということ?の指示が下り、妙心寺の管主だった叔父のところで湯で清め、本能寺の変へ出かけている。
    が、遺体は確認できず、つまり、、北陸の山奥に亡命させている。そこで、白山信仰が盛んとなる。
    あちこちに白山神社の社が残っていたが、平成阪神大震災、911テロ後、テロリストらが自分たちの名字を神社に名前を付け替え、
    新築、改築してる。。
    大工、左官職人が消え去って、不思議と、例えば、西成区の鈴木商店という大工店は、韓国系の息子にのっとられてしまってる。
    彼らが大工らを動かし、韓国系の野球をしてたような若者に技術の美味しいとこどりをさせてる。。
    日本での職人気質と違う要領のいい職人の誕生に至る。
    資本主義価値観が秀でていて、利得で仕事をするから、日本国内にはスペインからの輸入住宅だらけになる。
    しかし、、スペインと日本とで気候も文化も天と地ほどに違うはずだけど、その解消に、エアコン、断熱、密閉が主流となる。。
    マンションの乱立。川山の破壊、田畑のマンション化。。
    これって、テロクーデターと違うの?

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