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エッセイ・イントロクイズ

ふと
「あれはいつだっけ?」
と、当ブログの過去ログをあたったら、2009年7月末のことだった。

ちょうど2年前、小説イントロクイズというお遊びをやった。
小説のイントロ部分を抜書きして、みんなに当ててもらおうというお遊びだ。

2年ぶりに第2弾を行ってみよう。
今回は、僕の本棚から、適当にエッセイを15冊選んできた。その冒頭部分を抜き出したものを以下に列挙するので、著者名と書名を当ててもらいたい。答案はコメント欄に書いてください。適宜、当否をお返事します。締切は特に無し。

なお、引用の分量は任意です。
小説版に比べて難易度は高いかもしれません。

【1】
鮨屋に行ったときは
シャリだなんて言わないで
普通に
「ゴハン」と言えば
いいんですよ。

【2】
「どうですかね。もっともススキノらしい風景、というとどんなものを思い出しますか?」
 と、ある人から聞かれた。そういう話なら、思いつく光景や状況はいくつもある。本州から来た人間が一様に驚くのは、「ススキノは安全な街だ」ということで、その証拠に、若い娘さんが、深夜でもひとりで歩いているじゃないですか、などと言う。確かに日本の盛り場の中では治安はいい方かもしれない。一人前の大人が普通に飲んでいる分には、特に危険なことはない。

【3】
 お前たちが大きくなって、一人前の人間に育ちあがった時、―その時までお前たちのパパは生きているかいないか、それはわからない事だが― 父の書き残したものを繰拡げて見る機会があるだろうと思う。その時この小さな書き物もお前たちの目の前に現れるだろう。時はどんどん移っていく。お前たちの父なる私がその時お前たちにどう映るか、それは想像も出来ない事だ。

【4】
 うちの庭に野良猫がゐて段段おなかが大きくなると思つたら、どこかで子供を生んだらしい。何匹ゐたか知らないが、その中の一匹がいつも親猫にくつ附いて歩き、お勝手の物置の屋根で親子向き合つた儘居睡りをしてゐたり、欠伸をしたり、何となく私共の目に馴染みが出来た。

【5】
 ある朝、眼を覚ました時、これはもうぐずぐずしてはいられない、と思ってしまったのだ。
 私はインドのデリーにいて、これから南下してゴアに行こうか、北上してカシミールに向かおうか迷っていた。

【6】
 古のローマには、多いときで三十万にものぼる神々が棲んでいたという。一神教を奉ずる国々から来た人ならば眉をひそめるかもしれないが、八百万の国から来た私には、苦になるどころかかえって愉しい。

【7】
 青春時代に、人はたいてい恋をする。
 青春時代に限らず、人は恋をするものであるが、まあ、青春時代の恋が、いちばん恋らしい恋なのではないだろうか。
 中年の恋、老いらくの恋などというものもあることはあるが、これらの恋はどこかわびしく、どこかむさくるしく、本人の気持ちはどうであれ、他人の目には、
「いいトシこいて」
 というふうに映るのである。

【8】
人間が心に思うことを他人に伝え、知らしめるためには、いろいろな方法があります。たとえば悲しみを訴えるには、悲しい顔つきをしても伝えられる。物が食いたい時は手真似で食う様子をして見せても分かる。その外、泣くとか、呻るとか、叫ぶとか、睨むとか、嘆息するとか、殴るとかいう手段もありまして、急な、激しい感情を一と息に伝えるには、そう云う原始的な方法の方が適する場合もありますが、しかしやや細かい思想を明瞭に伝えようとすれば、言語に依るより外はありません。言語がないとどんなに不自由かと云うことは、日本語の通じない外国へ旅行してみると分かります。

【9】
 本書を完成できたのは、多くの人々のおかげである。それどころかこの人々がいなかったら、そもそも今のわたしというものがありえなかったと言っても過言ではない。苦しみ、悩み、トラブルをいまのわたしがもっているのも、経済力、自由、明るさといった貴重なものをいまのわたしがもっていないのも、すべてこの人々のおかげなのである。もしこの人々がいなかったら、そして忠告や助言をいただかなかったら、本書は今日よりずっと以前に完成していたことであろう。

【10】
 JR摂津本山駅の裏手に保久良山という山がある。山というよりは丘の大きなやつといったほうがいいだろうか。
 アタマに保久良神社の鳥居をのっけてチンと丸まっているさまは、何か”よしよし”と頭をなでてやりたくなるような、そんなかわいらしい山である。
 本山第一小学校に通っていたころは、体育の時間によくこの山に登らされた。

【11】
 オレは今でもスウィート過ぎる夢と、センチメンタルなメロディを持っている。どんなに汚れた夜と、逃げ口上の嘘をつこうと、オレにはまだ理想の自分がいる。頭上四十五度の角度から、理想の自分がオレを見ている。そして「どんな気がする?」って聞いてくるんだ。

【12】
 その三年のあいだ、僕は日本を離れて暮らしていた。
 とはいっても、三年間まったく日本に戻らなかったというわけではない。仕事上の必要もあって、何度かは帰国した。外国にいるあいだに書きためた現行を出版社に渡し、何冊かの本を出版する段取りをまとめてやってしまうわけだ。だから最低一年に一度くらいは日本にかえってこなくてはならない。でもそれを別にすれば、僕は殆どの期間をヨーロッパで暮らしていた。そしてそのあいだに、言うまでもないことだが、三年ぶん歳を取った。具体的に言えば、三十七歳から四十歳になった。

【13】
成りあがり
大好きだね この言葉
快感で鳥肌がたつよ

【14】
 私は子供の頃から結婚願望が強かった。
 どうしてなのか、今でもよく分からない。特別幸せな家庭に育ったわけでも不幸な家庭に育ったわけでもないし、両親にもまわりの大人達からも「おとなになったら必ずや結婚すべし」やら「結婚が女の幸せ」などと叩きこまれた覚えもない。
 なのに、私は一刻も早く結婚したかった。

【15】
 学生の頃、友だちと毎年奥多摩にキャンプに出掛けていた。
 その年は、もうすでに夏もおわって、風が涼しくなったあたりに行くことになり、その上、雨もずっと続いていたため、誰も例年のように川遊びをすることもなく、ただバンガローの中でぼんやりと、無口に過ごしていた。
 その時、何を思ってボクはそうしたのか、今では記憶もないが、皆を集めひとりでゴムボートの旅に出ると宣言し、それに空気を入れ始めた。
 友だちは皆、危ないからやめろと言った。ボクも、そう思った。そこにきて、ボクは泳げない。

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