小説イントロクイズ

小説の冒頭は、その作品における最初の山場であり、もっとも印象的な表現が用いられる場所であり、読者をぐっと惹きつける箇所であるはずだ。

読者は終わりまで全て読む義理はない。途中で面白くないと思ったら、そこで読むのをやめるはずだ。作品冒頭にすら面白いことの書けない作家は、その先を読んでもたかが知れているだろうと思われる。
だから作家は、小説の冒頭に心血を注ぐはずである。

そんなわけで、小説の冒頭1文を抜き出してクイズにしました。
いつもどおり、お暇な方はコメント欄で解答してみてください。できれば、著者名とタイトルを。

著者に重複はありません。クイズの順序は、引用部を続けて読むとなんとなくストーリーが続くよう、任意に並べただけです。


【1】
何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。

【2】
「ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご存知ですか。」

【3】
「ホーネン! ホーネン!」

【4】
或日の事でございます。

【5】
揺り起こされたような気がして
覚めるでもそれは揺り起こされたわけじゃないんだとぼくにはすぐ分かる。

【6】
午前七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。

【7】
私は、その男の写真を三葉、見たことがある。

【8】
月曜、朝八時三十分。

【9】
「普段からこんな色なんですか、あんたの目」

【10】
私はその人を常に先生と呼んでいた。

【11】
正式には松本春綱先生であるが、センセイ、とわたしは呼ぶ。

【12】
彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。

【13】
新選組局長近藤勇が、副長の土方歳三とふたりっきりの場所では、
「トシよ」
と呼んだ、という。

【14】
「こいさん、頼むわ。――」

【15】
恋は人を壊す。

【16】
野島が初めて杉子に会ったのは帝劇の二階の正面の廊下だった。

【17】
年中借金取が出はいりした。

【18】
電車に一人で乗っている人は、大抵無表情でぼんやりしている。

【19】
美寄駅のホームを出ると、幌舞行の単線は町並を抜けるまでのしばらくの間、本線と並走する。

【20】
風の音のなのか、牧場の横を流れるシベチャリ川のせせらぎの音なのか判らぬ、遠くからとも近くからとも判別出来ない静かな響きが、九頭の母馬を馬房に入れ終わった渡海博正の耳に、急に大きく聞こえてきた。

【21】
さらさらした陽が差し込む窓際の席に、花嫁花婿が神妙な顔つきで立っている。

【22】
道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さで麓から私を追って来た。

【23】
こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、僕がどこで生まれたかとか、どんなみっともない子ども時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがるかもしれない。

【24】
一九六九年、この年、東京大学は入試を中止した。

コメント (17)

  1. 匿名

    コメントエラーで消えた。。。

    ○ 〔12〕小川洋子「博士の愛した数式」
    ○ 〔10〕夏目漱石「こころ」

    すぐにわかったのはこれだけでした。。うーん、残念

    しばらく考えて
    ○ 〔16〕武者小路実篤「友情」
    ○ 〔22〕川端康成「伊豆の踊り子」?
    ○ 〔7〕太宰治「人間失格」
    やっとのことであと3つ。。

    冒頭部分が面白いと感じた本は失敗が少ないですね、確かに。
    その本が自分にあっているかどうかの判断基準になります。
    個人的には森博嗣や京極夏彦の文頭が好きです。
    重松清さんとか乙一も好きだなあ。

    文頭といえば「こんな夢を見た」が一番記憶に残っていますが・・・。
    高校生のときに「こんな自分の見た夢本にして売れるのか!!」と衝撃を受けたので

  2. flyingbird

    名前入れ忘れました。。ごめんなさい~

  3. 木公

    1つ目のコメントに、正否を書き込みました。5つとも正解です。

    【7】『人間失格』ですが、今回読み返すまで、かの有名な
    「恥の多い生涯を送って来ました。」
    を書き出しだと思い込んでいました。その前に文章がありました。
    そのトラップを回避した点、おみそれしました。

    『夢十夜』が作品として成立したのは、漱石だったからなんでしょうねぇ・・・。
    ちなみに、奈良の東大寺で仁王像を見るたびに、その作品を思い出す僕です。

  4. オルニオ

    ○ 【2】宮沢賢治 銀河鉄道の夜
    ではないかと。あとは漱石と太宰しかわかりませんでした。

  5. 木公

    あたりです。

    あたりですが、オルニオさんでもわからないとなると、出題がマニアックすぎましたか・・・。

    4, 14,17あたりは、太宰なんかと生きていた時代が重なっていた(と思う、ちゃんとしらべてないけど)人たちなんですけどね。

  6. sterai

    △ 【23】サリンジャー ライ麦畑でつかまえて

  7. 木公

    村上春樹(訳)、タイトル「キャッチャー・イン・ザ・ライ」と答えて欲しかった!

  8. オニ嫁

    ○ 11:川上弘美「センセイの鞄」
    ○ 14:谷崎潤一郎「細雪」
    ○ 24:村上龍「69」

    ですかね~

  9. 木公

    正解!

  10. 彩子

    意外と出てない6。
    ○ 6: 容疑者Xの献身(東野圭吾)ですよね。
    読んでないけど(笑)
    あと3。
    ○ 3: 色即ぜねれいしょん(みうらじゅん)
    これも読んでないけど(笑)

  11. 木公

    両方正解です。

    読んでないのに何で判るんだ、と思ったのですが、映画?

  12. オニ嫁

    私も11と14は読んでないです。
    「センセイ」という表記と「こいさん」という
    言い回しで何となく。

  13. 木公

    センセイは『センセイの鞄』とタイトルに出てくるからまだしも、「こいさん」で『細雪』に結びつけたのは驚きです。

  14. 彩子

    容疑者Xは映画見ました。
    その後、店頭で小説を開きました。
    石神らしさが出てる導入だったので覚えてました。
    色即は
    読むと頭から「ホーネン」が離れなくなると聞いていたので・・・

  15. 木公

    一通り回答が出尽くしたようなので、正解発表です。

    【1】
    『太陽の塔』森見登美彦
    何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。

    【2】
    『銀河鉄道の夜』宮沢賢治
    「ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご存知ですか。」

    【3】
    『色即ぜねれいしょん』みうらじゅん
    「ホーネン! ホーネン!」

    【4】
    『蜘蛛の糸』芥川龍之介
    或日の事でございます。

    【5】
    『優しくって少しばか』原田宗典
    揺り起こされたような気がして
    覚めるでもそれは揺り起こされたわけじゃないんだとぼくにはすぐ分かる。

    【6】
    『容疑者Xの献身』東野圭吾
    午前七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。

    【7】
    『人間失格』太宰治
    私は、その男の写真を三葉、見たことがある。

    【8】
    『チーム・バチスタの栄光』海堂尊
    月曜、朝八時三十分。

    【9】
    『今夜、すべてのバーで』中島らも
    「普段からこんな色なんですか、あんたの目」

    【10】
    『こころ』夏目漱石
    私はその人を常に先生と呼んでいた。

    【11】
    『センセイの鞄』川上弘美
    正式には松本春綱先生であるが、センセイ、とわたしは呼ぶ。

    【12】
    『博士の愛した数式』
    彼のことを、私と息子は博士と呼んだ。

    【13】
    『燃えよ剣』司馬遼太郎
    新選組局長近藤勇が、副長の土方歳三とふたりっきりの場所では、
    「トシよ」
    と呼んだ、という。

    【14】
    『細雪』谷崎潤一郎
    「こいさん、頼むわ。――」

    【15】
    『恋愛中毒』山本文緒
    恋は人を壊す。

    【16】
    『友情』武者小路実篤
    野島が初めて杉子に会ったのは帝劇の二階の正面の廊下だった。

    【17】
    『夫婦善哉』織田作之助
    年中借金取が出はいりした。

    【18】
    『阪急電車』有川浩
    電車に一人で乗っている人は、大抵無表情でぼんやりしている。

    【19】
    『鉄道員』浅田次郎
    美寄駅のホームを出ると、幌舞行の単線は町並を抜けるまでのしばらくの間、本線と並走する。

    【20】
    『優駿』宮本輝
    風の音のなのか、牧場の横を流れるシベチャリ川のせせらぎの音なのか判らぬ、遠くからとも近くからとも判別出来ない静かな響きが、九頭の母馬を馬房に入れ終わった渡海博正の耳に、急に大きく聞こえてきた。

    【21】
    『肩ごしの恋人』唯川恵
    さらさらした陽が差し込む窓際の席に、花嫁花婿が神妙な顔つきで立っている。

    【22】
    『伊豆の踊子』川端康成
    道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思う頃、雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい速さで麓から私を追って来た。

    【23】
    『キャッチャー・イン・ザ・ライ』サリンジャー/村上春樹訳
    こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、僕がどこで生まれたかとか、どんなみっともない子ども時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがるかもしれない。

    【24】
    『69 sixty nine』村上龍
    一九六九年、この年、東京大学は入試を中止した。

  16. 村上龍の「トパーズ」を15年越しで読む

    ふらっと入った本屋で、村上龍の短編集『トパーズ』を見つけて購入。表題作を読んだ。 売春婦が嫌いなタイプの男に買われてイヤな気分になったり、仕事の合間にちょ…

  17. ピンバック: [alm-ore] エッセイ・イントロクイズ

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