ここ数日、コンタクトレンズの調子が悪いし、全身に倦怠感があるし、鼻が少しムズムズするのだけれど、自分が花粉症だとは信じたくないので怖くて病院に行けない当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第118回めの放送を見ましたよ。
あさ(波瑠)は大学設立の助言をもらうべく大隈重信(高橋英樹)に手紙を送った。
しかし、大隈からの手紙は待てど暮らせど届かなかった。
噂によると、大隈と話をしたい人は彼の家を訪問するのだという。大隈も来る者は拒まないと聞いた。
そこで、あさは東京の大隈の屋敷へ直接出向くことにした。
大隈の家に着くと、確かに大勢の人々が集まっていた。
大隈の妻・綾子(松坂慶子)に訪問を告げると、彼女はあさの名前を知っていた。大隈はあさから届いた手紙を読んでおり、会うことを楽しみにしていたのだという。そのため、あさはすんなりと大隈に会うことができた。
大隈は、自分の教育観について語った。
女性の理想の姿は良妻賢母である。日本の女子教育が西欧に比べて立ち遅れているのは確かだが、良妻賢母となるのに必要な教育制度はすでに確立している。特に明治以降、女学校が整備され、良妻賢母教育は軌道に乗っていると言うのだ。
大隈の取り巻きたちも大いに頷いた。
あさは、雰囲気にのまれるわけにはいかないと決心した。周囲に気圧されないよう、力強く自分の考えをまくし立てた。
確かに今でもある程度の女子教育は行われているが、それで満足すべきではないと話した。それはまるで、目の前に落ちているビー玉に気を取られて、道の向こうにある宝石を見逃すようなものであるというのだ。100年先の社会を見据え、より大きな観点から教育方針を打ち立てるべきだと主張した。
確かに良妻賢母になることは重要であるが、より優れた良妻賢母になるためには世の中の動きに敏感である必要がある。そのためには高等教育が必須なのだと説得した。明治以降、女子が小学校に通えるように成り、女学校も設立された。しかし、男子に比べて就学年数は少ないし、女子向けの教科書では道徳教育に重きが置かれている。学問や実学を学ぶ機会はずっと少ないのだ。
女性も社会の一員となり、自立して生きる術や人を助ける術を身につけ、自らの幸せを追求し、国や社会の役に立つ人材となることが必要である。そのためには女子にも高等教育が必要だと説得した。
そこまで一気に話し終えると、成澤泉(瀬戸康史)の教育論を手渡し、あさは一息ついた。
大隈は終始難しい顔をして、口をへの字に曲げて黙って聞いていた。
他の訪問客たちも、あさの生意気な態度に反発した。
大隈は会合をお開きにして、あさ以外の訪問客たちを全員帰してしまった。
大隈は、あさの弁舌に心底感心したと話した。
大隈が政治家になって以来、政界を引退した今でも、周囲にはその場を言いくるめるような弁論をする者しかいなかった。それに対して、あさの主張は大局的で熱意があったので気に入ったというのだ。
そして、自分の周りには大勢が集まるが、自分の真の味方は一人もいないと嘆いた。
あさは大隈に同情した。
大隈が身を置いていた政治の世界も、あさが身を置く商売の世界も、生き馬の目を抜くような世知辛さがあると感じるのだ。
一方で、教育はそれと違っているという点であさと大久保の考えが一致した。
この世知辛い世の中において、裏表なく後世に残すことができるのは人材だけである。だから人を育てることが何よりも大切であるのだ。
ふたりは意気投合した。
そして、大隈はあさに協力すると約束した。
大隈重信が高橋英樹なのは良いとして、その妻・綾子に松坂慶子ほどの大女優が配されたのはどういうことだ?
少なくとも、今日の放送ではこれといった重要な役割もなかったようなのだが。今後、あさ(波瑠)に対するよき助言者になるという展開があるのだろうか。そうでもなければもったいないような気がしなくもない。