OSK日本歌劇団の『獅子の星』

主演の天輝レオさんと同じ出身地の当方が、OSK日本歌劇団の公演『獅子の星 ~Stella Leonis~』を見ましたよ(於DAIHATSU心斎橋角座)。

のっけから景気の悪い話をするのもどうかと思うけれど、OSK日本歌劇団というのは、かつての関西では宝塚歌劇と双璧を成す少女歌劇団だったらしい。1922年に松竹が設立したという、伝統ある団体だそうだ。その後、近鉄の子会社として長く活動していた時期もあったけれど、2003年ころに近鉄からの支援が打ち切られ、一度解散。翌年ころから有志による存続が行われ、現在に至るらしい。
毎年、10名程度の研修生の募集を行う程度には、きちんと活動しているらしい(研修生募集案内)。今は40人ほどの劇団員がいるようで、宝塚歌劇に比べると規模はずいぶんと小さい。

どうなることかと思って観劇に出かけたのだけれど、思いの外楽しかった。
常設の劇場も有していないらしいけれど、小さめの劇場ならではの雰囲気が良かった。演者と客席が近くて、アットホームな興行だった。

演目の『獅子の星』というのは、古代に引き裂かれ非業の死を遂げた男(天輝レオ)と女(唯城ありす)が転生を繰り返しながらも、すれ違うというお話だった。
ミュージカルなのだけれどオリジナル曲だけではなくて、現代のポピュラーソングも出てくるので、歌劇の素養がなくても楽しめた。X JAPANの”Rusty Nail”とか、『ONE PIECE』の主題歌の”ウィーアー!”とか。

物語の終盤、ふたりは現代のニューヨークに転生する。
ふたりを結びつける運命のアイテムとして、ある宝石が存在している。男は怪盗となっており、その宝石が所蔵されている美術館へ忍び込んで盗み出すことを計画する。待ち受けるのは、FBIの捜査官として転生していた女。運命のふたりは敵味方に分かれて出会うことになったのだ。

このシーンには、小規模な劇団ならではの演出があって、初心者の僕には一番楽しめた。

侵入する美術館には特殊なセキュリティシステムがあるというのだ。普段はBGMが鳴っているのだが、侵入者を察知すると音楽が止まる。音楽が消えている間、少しでも動くものがあればそれに向けてレーザー銃が発射されるのだという。つまり、「だるまさんがころんだ」のように、音楽が止まったら演者たちは静止する。

さらに、防衛側の演者は客席に向かって、こんな事を言う。
「ここにはたくさんの監視カメラがある。君たちは監視カメラだ。不審者がいたら撮影してくれ。撮影した映像はSNSで報告して拡散してくれ」

僕は一瞬、頭に疑問符が湧いたのだけれど、周りの客席にいるベテラン女性(婉曲的な表現)ファンのみなさまが、鞄からゴソゴソとスマホを取り出してステージに向け始めた。
なるほど、と思って、僕も監視員業務を行うことにした。

 

“音楽が止まったら動いてはならない” という謎設定も、決めポーズを撮影しやすくするための自然な演出なんだと理解して目から鱗だった。

興行の最後は、出演者がピンクの傘を持って登場し『桜咲く国』を歌唱。結成当時から必ず最後に歌うという伝統だそうで。
僕の周囲のベテラン女性(婉曲表現)は、ここでも鞄をゴソゴソやって小さなピンク傘を取り出した。それを歌に合わせて振っていた。これだけ傘が振られる光景というのは、僕はヤクルト・スワローズの応援以外で見たことがなくて新鮮で楽しかった。知っていたら、僕も傘を用意して一緒に振っていたのに。帰りにロビーで傘が売られているのを発見したので、次回は絶対買う、振る。

そんなわけで、とても楽しい観劇でございました。また行きたい。
当方はOSKの天輝レオさんを全力で応援します。


※関係者(四半世紀のアレなのでかなり特殊です)の特別なご厚意によって撮影させていただきました。ありがとうございます。

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