大竹文雄『競争と公平感: 市場経済の本当のメリット』

アンチ小泉・自民党やら、今日の友愛・民主党やらを支持する世論として「行き過ぎた経済競争が格差を生み出し、人々を不幸にしている」という意見があろう。

それに異を唱えるのが本書。

確かに経済競争によって何らかの損失は生まれることは認める。
しかし、その損失を低減する方法はあるし、多くの場合に現行制度よりもマシな結果をうむだろうことが説明されている。そして、経済競争によって、最終的には人々の生活が豊かになるだろうことを啓発する。

現代経済学のオーソドックスにして学術的な議論に基づきつつも、男女や年齢の格差、非正規雇用の問題、乳幼児教育の是非などが例題として挙がっていて、わかりやすく興味も持ちやすい仕上がりになっている。

一方で、オムニバス的内容で、いまひとつまとまりに欠けるような印象も受ける。この点を逆に評価するとするなら、目次を見て興味のあるところだけつまみ食いするのにもってこい。

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大竹文雄のブログ: タクシー接待

大竹文雄のブログ: タクシー接待

・・・深夜まで残業することが、避けられない状況であれば、税金で賄われるタクシー代そのものは、国家公務員がタクシー接待を受けても受けなくても変わらない。運転手間の競争が、タクシー料金の値下げ競争にならず、ビールや清涼飲料水の提供という形で行われたのである。つまり、規制によってタクシー料金が値下げできないから、タクシーの運転手が実質的な値下げ競争を行ったのだ。タクシー料金がその分値下げされていたなら、国民負担は減ったはずだ。根本的な問題は、タクシーの料金規制にある。

この冷静かつ適切な指摘にシビれた。
問題の本質がどこにあるのか、見事に示してる。