フジ『北の国から』第12回

本日、女性をデート(デート?デートなのか!?)に誘うメールを書くにあたり、別の女性に文面を添削してもらうというただでさえ無様な状況に陥ったわけだが、その文案に一発でOKが出てしまい、本業の論文では不採録ばかりなのに、こういう文章ばかり修正なしで採択されるというとても無様な自分に情けなくなった当方が、BSフジ『北の国から』の第12回を見ましたよ。

* * *

つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)が家出して2日が経った。しかし、彼女の行方は知れないままだった。純(吉岡秀隆)が五郎(田中邦衛)につららの事を聞くと、五郎はその話をするなと言ったきり、二度とその話題に触れなかった。

螢(中嶋朋子)が餌付けしていたキタキツネがトラバサミの罠にはまったのも2日前だ。そのキツ目もトラバサミをぶら下げたまま姿を消し、二度と表れなかった。
山歩きをしていたクマ(南雲佑介/現・南雲勇助)が、トラバサミの罠をいくつか見つけた。全て解除し、そのうちの一つを持ち帰り五郎や中畑(地井武男)に見せた。クマによれば、罠は雪を使って巧妙に隠されていたという。トラバサミ猟は免許が必要であり、今回仕掛けた人物もかなりの手練だろうと予想された。1月下旬に禁猟になるため、駆け込みで猟をしているらしかった。

1月20日、小学校が再開された。
中畑の娘であるすみえ(塩月徳子)が、螢のキツネが罠にかかったことをみんなに知らせた。それをきっかけに、涼子先生(原田美枝子)は子供たちに野生動物との付き合い方について議論させた。純をはじめ、ほとんどの子どもは動物を狩ることは残酷だと主張した。特に、螢がかわいがっていたキツネならなおさらだという論調だった。

そんな中、正吉(中澤佳仁)だけは堂々と反対意見を述べた。キタキツネは家畜や畑を荒らす悪い動物なのだから、狩られて当然だと言いはった。そもそも螢が餌付けしたことで人里に近寄るようになったのであり、人の生活圏にやって来ていつ悪さをするかわからないし、早く仕留めてよかったなどと主張した。
涼子先生は正吉の話を引き継いだ。キツネは野生動物であり、自力で獲物を飼って生きている。人が餌付けすると、餌の獲り方を忘れてしまい、自然の中で自活できなくなってしまうかもしれない。それは自然の摂理に反すると言うのだった。正吉は得意になったが、他の子供達は納得がいかなかった。議論は平行線のままだった。

放課後、正吉は一人で涼子先生を訪ねた。
正吉は、自分の祖父・杵次(大友柳太朗)がトラバサミを仕掛けていることを知っていた。そのことを打ち明けに来たのだ。杵次は若い頃から冬には必ず動物を狩っているという。正吉は、キツネの毛皮で暖かいチョッキを作ってもらったこともあるという。けれども、まさか螢のキツネが罠にかかるとは思ってもいなかったと、苦しい胸の内を明かした。特に、杵次が集落でも鼻つまみ者であることを知っているだけに、正吉はますます不安になるのだった。
涼子は、正吉に他言しないよう助言した。杵次が長年続けてきた生活を誰にも非難する権利はない。だから、正吉は何も気にすることはないと言って慰めるのだった。
帰宅した正吉は、杵次にもう二度とキツネを取らないように頼んだ。チョッキはいらないので、狩りはしないでくれと言うのだった。

その日の夜。
螢は自責の念にかられていた。正吉の言うように、自分が餌付けしたせいでキツネを不幸な目に合わせたのではないかと後悔していた。寝室でそのことを純に話した。
しかし、純は螢の話をさっぱり聞いていなかった。純は五郎と雪子の関係が気になって仕方がなかった。正吉が言ったように、五郎と雪子が男女の仲になっているというのは、もしかしたら真実かもしれないと疑う気持ちがあるからだ。

そして、五郎と雪子は居間で並んで仕事をしていた。雪子は五郎にポツリポツリと話しかけた。草太(岩城滉一)は多くを語らないが、どうもつららを探しに回っているという。どうも旭川のあたりにいるらしいことがわかったという。それを聞いても、五郎は何も答えなかった。
さらに雪子は、草太の家の牧場を手伝いに行っているが、自分が歓迎されてない気がすると打ち明けた。どうも、自分を雇うことは草太が独断で決めたことで、草太の父・清吉(大滝秀治)らとは相談していないようだと言うのだ。清吉は雪子と口を利こうともしないのだ。五郎は雪子の懸念を否定した。清吉は元来無口な性格なので、気にすることではないと言って慰めた。

翌日の放課後、涼子先生は純と螢を職員室に呼び出した。
涼子は、トラバサミを仕掛けた人物を恨んではならないと諭した。たとえばネズミは倉庫の野菜をかじるし、鹿は畑を荒らして人を困らせる。それと同じように、キツネも害をなすのだ。麓郷に住む人々は決して裕福ではなく、大変な苦労をしながら生きている。害獣を始末したり、その肉や毛皮を利用する人がいるのも仕方ないと説いた。そういう習慣を長く続けてきた人々がいることを理解し、彼らの生き方や思いを理解し、決して憎むなと言い聞かせた。
純は、涼子の言うことはもっともだと思った。しかし一方で、どうしても納得いかない気持ちもあった。

純と螢が家に帰ると、ちょうど自家風力発電装置が完成するところだった。家の中の電灯を光らせることに成功した。一同は大喜びした。その日は雪子の誕生日だった。電気の開通と雪子を祝うパーティーを行うことを計画した。

その頃、草太の牧場で働いていた雪子は、清吉に呼び出された。清吉は、単刀直入に雪子に働いて欲しくないと告げた。
まずは、経営上の問題がある。彼らの牧場は3軒の家庭で共同経営している。ところが、その3軒を養うのも難しいほど経営が苦しい。雪子を雇う余裕などそもそもなかったのだ。
続いて、草太に関する問題がある。雪子の雇用は草太が勝手に決めたことで、清吉には何の相談もなかった。それに、草太はつららと結婚して家を継ぐはずだった。草太が勝手に鞍替えしたこととはいえ、雪子の登場で予定が狂ってしまった。百歩譲って、雪子が牧場の嫁となって家を助ける覚悟なら問題はない。しかし、都会に帰るつもりなら、二度と出入りしないで欲しいと言うのだ。草太が後に引けなくなって、雪子を追って家を出ると困るのだ。
それに関して、清吉の仲間の問題がある。本音を言えば、清吉は自分の代で麓郷の生活は終えてもいいと思っている。4人の息子たちはすでに麓郷を出たし、5人目の息子である草太がそうするのも仕方ないと思っている。けれども、この集落の開墾で苦楽を共にした仲間を裏切ることはできないと考えている。その仲間の一人がというのが、つららの兄である吉本辰巳(塔崎健二)だ。草太はつららと結婚する約束をしていて、両家もそのつもりだった。草太がつららを捨てたことは、全て草太の悪行であり、雪子は巻き込まれただけであり濡れ衣だ。それでも、辰巳への義理として、雪子を置いておくわけには行かないと言うのだ。

雪子は反論もできず、泣きながら家へ帰った。途中で草太と出くわしたが、雪子は口も聞かずに、雪道を歩いて家路についた。

雪子が家に着くと、家は真っ暗だった。落ち込んだ気分のまま家に入ると、突然部屋が明るくなった。中畑の家族やクマらまで集まっていて、みんながバースデー・ソングを歌ってくれた。電気が開通したことも知らなかったし、まさか自分の誕生日を祝ってくれるとも思っていなかった。雪子はみんなの前で涙ぐんだ。それでも、みんなで明るく楽しいパーティーとなった。

薪がなくなったので、五郎と純、螢は外に取りに出た。すると、杵次が立っているのを見つけた。五郎は家の中へ誘うが、杵次は固辞した。杵次は風力発電に成功したことを複雑な思いで見ていた。それから杵次は、五郎に馬を買うことを持ちかけた。五郎は返事を保留した。それに構わず、杵次は一人で静かに話し続けた。今の馬は20年買い続けて、多少情も移っている。けれども、名前をつけてやらなかったと後悔を表明した。
そもそも、このあたりでは馬に名前をつける習慣は無かったという。名前をつけると情が移り、手放すときに辛くなるからだ。それというもの、このあたりの農家はとても貧しい。夏に一生懸命働いても、冬を越すだけの蓄えができない。そこで、冬になると決まって馬を売って金に変えたのだという。そして、春になると農作業用の馬を新たに買う。いちいち名前をつけてかわいがる暇はないのだ。
冬に馬を売り、春に購入するためには、金を準備する必要がある。そのため、冬の間に動物を狩って毛皮を売っていたのだという。杵次にとって、それが当たり前の生活なのだ。この冬は正吉のために毛皮のチョッキを作ってやるつもりだったと語った。そして、キツネがやられたトラバサミは自分が仕掛けたものだと告白した。ただし、正吉は何も知らないことだから、彼を恨まないでくれと頼み込んだ。純と螢は受け入れた。
そこまで話すと、杵次は家へ帰って行った。

それから時が流れ、4月になった。黒板家が麓郷に住み始めてから半年が過ぎた。純と螢はすっかりここでの生活に慣れ親しんだ。雪が溶け始め、一部では土も見えてきた。春がもう目の前だった。純と螢は山で大量にふきのとうの若芽を摘んだ。

* * *


『北の国から』の2大じじいであるところの清吉(大滝秀治)と杵次(大友柳太朗)のそれぞれの独白がとにかく染みる。これを見てグッと来ない女の子とは仲良くなれる気がしない。

清吉は、物静かで思慮深く、優しい人物だ。それでも、常に自分の良心に従い、何があってもそれは曲げない。特に、共に入植した仲間たちとの友情や義理に篤い。今回の雪子に対する語りがまさにそれ。そして、清吉の態度はぶれていない。第3回で純が東京に逃げ帰ろうとした時、彼は自分の生きざまをまざまざと語っていた。喋り方は朴訥としているのに、その時も今回も迫力満点だった。雪子じゃなくても泣くな、ありゃ。

一方の杵次は、一見すれば昔ながらのやり方を変えない頑固者のように見えるけれど、内面では時代の流れに身を任せ、それなりにフレキシブルに生きている。第10回では昔の生き方にこだわる五郎を叱責し、電力会社から電気を買うなど文明的な生活をすることを強く勧めている。馬への名付けで暗示されていることは、昔は馬を売るほど苦労していた集落だったのに、ここ20年間はそんな苦労がなくなったことを喜んでいたのだと読み取ることもできる。ちゃんと時代の変化に適応して生きている杵次なのに、周囲からは旧時代の人物だと見られている。そのことを「昔の習慣に従って馬に名前を付けなかった」と自嘲的に表現していたのだろう。
昔はキツネを狩ることは当然だったが、今では時代がすっかり変わった。そのことを理解するだけの柔軟さはあるし、螢(中嶋朋子)に謝るだけの謙虚さもある。けれどもみんなからの嫌われ者であることを自覚し、孫の正吉(中澤佳仁)にだけは類が及ばないように頼み込んでいた。泣かせるじゃないか。

なお、明日からちょいと出かけるので、まとめ記事の更新が止まると思います。

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