NHK『あさが来た』第75回

イギリスのKurv Musicという会社が、エアギターしながら音の出る装置を開発中だと知って苦笑いした当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第75回めの放送を見ましたよ。

 ロンドンに拠点を置く新興企業Kurvが開発した「Kurv Guitar」は、手のひらにおさまるパット型装置と、弦を引く動きを認識するギターのピックのような装置でできている。

 演奏者は、ピック型装置を片手に持ってギターをかき鳴らすような動きをし、もう一方の手に持ったパット型装置で音程を調整する。それをスマートフォンのアプリが認識すると、アコースティックやベースなど、演奏者の好みの音が出るという。
(音が出る「エアギター」、英企業が開発: 毎日新聞)

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第13週『東京物語』

五代友厚(ディーン・フジオカ)が東京にも事務所を開設した理由は、日本中に鉱山を所有することとなり、大阪だけでは手が足りなくなったからだという。東京だけで200人の社員を抱えているという。
あさ(波瑠)は五代の事業の規模の大きさに驚くと共に、様々なものが近畿から東京に移っていくことを寂しくも思った。天皇もあさの実家も東京に移ってしまったからだ。

五代があさを東京に呼んだ大きな理由の一つが、内務卿(首相)の大久保利通(柏原収史)に引き合わせるためだった。五代と大久保は共にに薩摩の出身で、昔からの親友であると共に、互いにライバルとして切磋琢磨してきた仲である。
あさは、日本で一番偉い人物と対面したことに驚いた。
大久保は、五代からあさの噂をよく聞いており、実際のあさも噂通りであることに満足した。あさと大久保はすぐに打ち解けた。

大久保によれば、政府は東京を政治、経済、文化の中心として発展させようと努力している。しかし、五代は大阪には大阪の良さがあると主張して聞かないのだという。大阪商人が昔から培ってきた知恵と経験と誇りがなければ世界とは渡り合えない。その力を結集するために、五代は大阪に留まっているのだという。

大久保は、大久保や大阪のことをあさに託した。
あさは大阪が褒められ、自分も励まされたことを素直に喜んだ。あさは元気が湧いてきあt.
あさと大久保は意気投合し、対話が終わった。

その後、あさは五代に案内され、東京の新しい名所を次々に見学した。
どれも物珍しく目新しいもので、あさは感激した。そして、夫・新次郎(玉木宏)や娘・千代にも見せてやりたいと願うのだった。

その頃、大阪では新次郎が落ち込んでいた。あさに対して色目を使う五代の所へ妻を行かせるべきではなかったと後悔していたのだ。新次郎は、家柄、財力、知恵・知識のいずれも五代に敵わないと自覚しているのだ。
そんな新次郎をふゆ(清原果耶)が慰めた。新次郎には新次郎の良さや、誰にも負けない優しさがある。あさはそのような点をよく知っているのだから、心配する必要はないというのだった。

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NHK『あさが来た』第74回

明治の文化人が福沢諭吉から受けたであろうショックと同じくらいのショックをグレゴリー・マンキューから受けた当方であり、彼の教科書の冒頭に出てくる「10大原理」(以前僕がまとめたメモ)を常に思い出す当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第74回めの放送を見ましたよ。

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第13週『東京物語』

今は娘・千代の成長を見守りたいという本心を打ち明けたあさ(波瑠)は、に対して、姑・よの(風吹ジュン)は欲張りだと罵った。

よのが言うには、何かを得るためには別の何かを諦めなくてはならない。
あさは、外で男と同じように仕事をするという道を得た。その代償として、普通の女のように一人前の母親になることは諦めなくてはならないと言うのだ。その両方を得ることはできないし、そう望むのは欲張りだというのだ。
たとえ、不束かな嫁だと後ろ指をさされても、自分で選んだ信じる道を進めと告げた。娘はその背中を見て育つ。あさは、あさなりの母親になればいいというのだ。

ついに、よのは、あさの東京行きを認めた。
あさはよのの言葉に、自分の中途半端な気持ちを反省し、東京視察に行くことを決意した。

よのは、それが亡き夫・正吉(近藤正臣)の遺志であり、自分がそれを受け継ごうと思っていたのだ。正吉は、あさを自分の息子同然だと思っており、加野屋を彼女に委ねることを決めていた。だから、あさが仕事の上で望むことは応援してやることにしたのだ。

榮三郎(桐山照史)もあさの東京行きを後押しした。
あさは九州の炭坑のことが気になっていたが、榮三郎が自ら炭坑に行き監督すると言うのだ。それというのも、炭鉱はすでに加野屋の重要な事業になっているのに、当主である榮三郎は何もわからない。だから、勉強を兼ねて行ってきたいと言うのだ。
自分が様子を見ておくので、あさはゆっくりと東京を視察してくるようにと応援した。

新次郎(玉木宏)は、娘・千代の世話を引き継いだ。あさも、新次郎に事細かに子育ての極意を教えて旅立つことにした。

東京へ出発する日、別れを察した千代が泣きながら追いかけてきた。
あさは後ろ髪を引かれ、泣きながら千代を抱きしめた。
しかし、離別の悲しみを押しとどめ、あさは決意を持って東京へ旅だった。

あさの東京行きには女中のうめ(友近)が同行することになった。ふたりは大阪から横浜まで船に乗り、横浜から東京の新橋まで汽車で移動した。

ふたりが汽車に乗るのは初めてのことである。うめは、ずっと座りっぱなしでお尻が痛くなったと辟易した。
一方のあさは、念願の汽車に乗ることができて上機嫌だった。石炭を燃やし、もくもくと煙を出して大きな機関車が動くことに感動していた。自分が手がけている石炭の力を目の当たりにして嬉しかった。

五代(ディーン・フジオカ)とは、彼の東京事務所で落ち会う約束になっていた。五代の事務所は築地にあると聞いていたのだが、東京が初めてのあさには新橋から築地へ行く道がわからず迷ってしまった。

困っていると、向こうから足並みを揃えて小走りでやってくる一団があった。あさはその中の年長者(武田鉄矢)に道を訪ねた。その男は親切に道を教えてくれた上、女の足で行くには遠いので馬車に乗って行くのが良いと助言してくれた。

しかし、あさは歩くのには慣れていると答えた。普段から九州の山を歩いているので健脚だと威張った。
男は、あさに興味を抱いた。大阪の言葉をしゃべる女が九州の山を歩き、今は東京にいるのだ。
あさは、九州で石炭の採掘をしていることを説明した。今回の東京旅行は、「文明」を勉強するために来たのだと話したた。特に、「文明」の話をするときは、学の少ない者に向かって、自分が物知りだと威張るかのような口ぶりだった。

あさが立ち去った後、男は感心するとともに、憮然とした。
名乗らなかったのであさが気づかなかったのは当然だが、彼こそが文明の専門家で、日本に近代思想をもたらした福沢諭吉だったのだ。

その後、あさは何時間か歩き、ようやく五代の事務所についた。

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NHK『あさが来た』第73回

『東京物語』と言えば当然小津安二郎の映画が思い出されるわけで、その映画では田舎から子供を頼って東京に出てきた老夫婦が邪険にされ、がっかりして帰るという内容だったわけで、その映画の題名を週のサブタイトルに持ってくるとは縁起が良くないのではないかと心配する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第73回めの放送を見ましたよ。


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第13週『東京物語』

あさ(波瑠)は、五代(ディーン・フジオカ)から東京への視察旅行に誘われた。

五代によれば、日本が世界に通用する国になるためには、さらなる貿易の活性化が必要である。しかし、日本には産業界の代表となる人物や組織が無いため、諸外国から大きな貿易をしてもらえないのだという。そこで、東京では「東京商法会議所」という組織を作り、諸外国と対等に貿易をしようという動きがあるという。
今がまさに、東京商法会議所の視察や商工業者との人脈作りに最適な時期だという。

五代は、商人としてのあさに一目置いている。さらに見聞を広めて、一流の商人になってほしいと思っているのだ。それで、あさを誘って東京への視察旅行に行こうとしているのだ。

あさはその話に感銘を受けた。そして、東京に負けていられないという闘志を燃やした。大阪にも商法会議所を作る必要があると強く思った。そのためには、東京の様子を知ることが肝心である。

けれども、あさは東京行きを断った。
九州の炭坑から帰って来たばかりだし、なるべく早く九州に戻りたいと思っているので時間がないというのだ。
五代はそれ以上何も言わなかった。

新次郎(玉木宏)には、あさが断ったのは本心ではないとわかっていた。新しもの好きで勉強好きなあさが東京を見たくないはずは無いからだ。
新次郎は、あさは姑・よの(風吹ジュン)や自分への遠慮があるのだと推測していた。普段から家を空けてばかりいるのに、嫁としてこれ以上家を離れるわけにはいかないと考えているのだと察した。
そこで新次郎は、自分はあさの味方だと応援した。よのの説得も自分が引き受けるので、遠慮せずに東京へ行けと励ました。
しかし、それでもあさは承諾しなかった。

誰にも話さないでいたが、あさは娘・千代のことが気がかりなのだ。
これまでも九州の炭坑への出張続きで、まともに千代の世話ができていない。あさの知らないうちに言葉をしゃべり始めたり、自分の持っていくる土産のおもちゃよりも姑・よの(風吹ジュン)の作った張子人形を喜ぶ様子などに心が苦しくなっているのである。
まだ1歳の千代は、日々どんどん成長している。その過程を見守りたいと思うのだ。

新次郎は、あさが東京へ行けるよう、よのへの説得工作を行った。
しかし、それは失敗に終わった。よのから見れば、独身の五代が人妻のあさを同伴して旅行に行くなど言語道断なことに思われるのだ。

あさはよのに呼ばれた。
その席であさは自分の本心を語った。自分は本当は東京に行きたいと思っている。しかし、千代の良い母親になりたいと思い、千代と離れたくないと話した。

その言葉を聞いたよのは、あさを欲張りだと呼ばわった。

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NHK『あさが来た』第72回

寒いと本当にテンションの下がる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第72回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

亡くなった正吉(近藤正臣)の葬儀が終わった。
一時は悲しみに沈んでいたが、しばらくすると加野屋は普段の活気を取り戻した。

あさ(波瑠)は3日間泣き続けたが、それを過ぎると何もなかったかのように元気になった。

それと同じ頃、あさの仕事に対する考え方も変わった。
これまでは、腕力で男と張り合うことを考えていた。そのため、相撲をしたり、ピストルで脅したりした。しかし、女の自分はどんなに頑張っても男と力では対等になれないことがわかった。たとえば、妊娠しただけで、体の自由が全く奪われてしまった。
これからは、男の真似をするのではなく、女特有のやり方で商売をしていきたいと考えるようになった。ひいては、そういった女特有の商売を広めていきたいと思うのだった。

あさは、自分がそう考えるようになったのは正吉のおかげだと感じている。彼がいつも自分の味方として後押ししてくれたことで、見聞が広まり自信もついたと思うのだった。

年が明け、あさは大阪と九州の炭坑を往復する毎日を送るようになった。

ある日、あさが大阪に帰ってくると、ちょうど入れ違いで新次郎(玉木宏)が出かけたという。家の者に行き先を聞くと、五代(ディーン・フジオカ)から呼び出されたのだという。気になったあさは後を追った。

近頃、五代は大阪と東京に貿易会社を設立し、両都市を忙しく行き来する生活をしている。
そんな五代は、新次郎に対して、あさを東京に連れて行きたいと相談を持ちかけていた。

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NHK『あさが来た』第71回

今朝は起きるのも遅かったけれど、このまとめ記事を書き終えたらさっさと寝てしまおうと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第71回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

サトシ(長塚圭史)は警察に出頭した。吹っ切れた彼は清々しい顔をしていた。

サトシの恨みが晴れたことで、加野屋にこれ以上危害を加えられるおそれはなくなった。
しかし、彼には炭鉱爆破の補償金を支払うだけの財力はない。加野屋が補償金や復興工事の費用を負担することに変わりはなく、莫大な資金の捻出は簡単ではなかった。

当主・榮三郎(桐山照史)は炭鉱を手放したいと考えていた。一方、あさ(波瑠)にとっては、自分が初めて担当した事業であり、固執し続けた。
ふたりの仲はしばらく前から険悪で、炭鉱の話になる度に激しい言い合いや、無言のにらみ合いが繰り広げられていた。

しかし、ついに榮三郎が折れた。
味方だと頼りにしていた雁助(山内圭哉)は九州に行ったきりであり、自分一人では、希少の荒いあさに対抗できないからだ。
それに、まさに信頼している雁助からの見積書によれば、復旧にかかる予算や期間は思っていたよりも少なくて済みそうだったのだ。
復旧費用は、これまでに炭鉱で設けた資金を全てつぎ込めばちょうど間に合う程度であった。復旧工事に約半年、それから2年半から3年ほどで利益が出始める計算になっている。榮三郎も、その程度なら持ちこたえられるだろうと決断した。

あさは喜んだ。
本来、炭鉱で稼いだ金は銀行開設のために貯めていたのだが、銀行を諦めてでも炭鉱事業の継続が大事だと考えているのだ。さっそく、あさは帳簿の確認や新しい鉱夫の募集の準備を始めた。

その頃、正吉(近藤正臣)の容体が悪化した。布団に伏せたまま、ほとんど起き上がることもできなくなった。

新次郎(玉木宏)は正吉をサトシのことを話した。
新次郎は、正吉がサトシの一家を見捨てた時、正吉を恨んでいたことを認めた。しかし、今となっては正吉の気持ちがわかるという。正吉が自分の家を守るためにはそうするしか無く、家を守るためには無情な決断も必要だと理解したというのだ。そして、それは決断をした本人も辛いのだと理解したと話した。
そして、苦しい時こそ、人に頼らず自力で解決しなくてはならないことも学んだという。それはあさから学んだのだ。
新次郎は、冗談とも本気ともつかない呑気な様子で、これからはあさの仕事の手伝いをするつもりだと話した。
正吉も、冗談とも本気ともわからない様子で、それは結構なことだと喜んだ。

正吉は孫・千代の顔を見て、美人に成長する将来が楽しみだと話した。

榮三郎には、早く結婚して家を盛りたてるよう話した。
榮三郎は、母・よの(風吹ジュン)のようなかわいい妻を娶り、正吉のような良い父親になることを誓った。

あさに対しては、白岡家は男3人兄弟だったが、あさが来てから家の中が明るくなったと話した。そして、加野屋の商売を託した。

いよいよ最期が近づき、正吉は妻・よの以外を人払いした。
正吉は、伊勢参りに行きたがった。いつか、よのと一緒に行ったのがとても楽しかったのである。

よのの膝枕で、正吉は夢見心地になった。目をつぶると、まぶたに伊勢参りの風景が広がった。
あたりは出店や参拝客でごった返している。うっかりしていると、よのとはぐれてしまうのではないかと心配になった。
正吉はよのの手を握った。

白昼夢の中で、正吉は本殿にたどり着いた。
神様に向かって、加野屋と家族を守ってくれるよう祈願した。
最後に、よのの余生が安泰であることを祈った。

そうして正吉は事切れた。

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NHK『あさが来た』第70回

本厄もあと半月で終わりだと気付いて、ほのかに夢と希望の湧いてきた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第70回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

ある夜、あさ(波瑠)は娘・千代をあやすため近所を散歩していた。すると、新次郎(玉木宏)とサトシ(長塚圭史)が連れ立って歩いているのを見つけた。
こっそり様子をうかがうはずだったが、あさはくしゃみをしてしまい、ふたりに見つかった。それで、あさも合流してサトシから話を聞いた。

サトシこと松造の母は、彼とふたりで町から逃げ出した直後に亡くなったという。サトシはその後やっとのことで失踪した父を見つけたが、ずっと貧しい暮らしをしていたという。

サトシは、炭鉱に爆薬を仕掛けたのは自分であると認めた。
動機は、加野屋が憎かったことにあると白状した。金の亡者である加野屋が、金貸しの片手間で炭鉱にまで手を出したことが気に入らなかった。事故が起きれば手を引くと思ったのだ。あさが常々語っている「石炭が日本を変える」という決まり文句も空々しく聞こえていたという。

雁助(山内圭哉)が事件のことを警察に通報したため、サトシは鉱山から逃げざるを得なかった。おそらく日本中に手配され、今後はもうどこの鉱山でも働くことができないだろう。そのため、加野屋に放火するつもりで大阪に来たのだという。自暴自棄になり、加野屋もろとも破滅しようと企んだのだ。
しかし、今はその気も失せたという。大阪に来てみれば、正吉(近藤正臣)の先が短いことがわかった。引退したとはいえ正吉が今でも加野屋の大黒柱である。正吉が死ねば、加野屋は放っておいても滅亡すると思ったからだ。

新次郎は、サトシの今後を深く心配した。それと同時に、サトシがひねくれてしまったのは自分のせいだと後悔した。サトシの家が潰れそうになった時、自分が何も手を差し伸べられなかったのが原因だと思ったのだ。
新次郎は、今こそサトシのために手を尽くす時だと考えた。仕事の世話や住居を手配してやろうと申し出た。そして、自分の財布を取り出して、当座の金を渡そうとした。

そんな新次郎の様子に、サトシは気分を害した。
あさも、新次郎の対応は誤りであるとして、止めた。

それまで黙っていたあさが、一気に話し始めた。
あさは、サトシが加野屋を憎み、復讐を企てるのも無理はないことだと認めた。
しかし、炭鉱を道連れにすることは大きな誤りだと指摘した。爆薬を仕掛けて落盤させるなど、一歩間違えば大勢の死人が出てもおかしくはなかった。それに、長期間の休業になって一番困るのは鉱夫たちだ。たとえ加野屋の資産を全てつぎ込んだとしても、鉱夫たちの今後の生活の安定は補償できない。
サトシは、みなから一目置かれる立派な鉱夫であり、組頭であった。そんなサトシが、他の鉱夫たちの生活を壊し、申し訳なくは思わないのかと問い詰めた。

あさは、今こそ厳しく接する時だと考えていた。炭鉱や鉱夫たち、そして家を守るためには偽善者でいるわけにはいかないと決意していたのだ。

サトシは、優しくしようとする新次郎ではなく、厳しい態度のあさの方に共感した。
サトシは加野屋から暖簾分けを受けるときに、自分の父が正吉から言われたという言葉を思い出した。正吉によれば、なにがあっても温情で金の貸し借りはできないと言ったのだという。そのせいで自分の家は潰れてしまったが、その冷酷さは家を守るために必要なことだと理解もできると話した。
故に、自分に情けをかけようとしている新次郎ではなく、冷酷なあさの言うことの方が理解できるという。
サトシは、あさの言うとおりだと思い、深く頭を下げて謝罪した。

サトシは、最後の願いだと頼みこんで、正吉と面会した。
正吉は、サトシの父を助けられなかったことを謝った。当時の自分はしきたりを守ることに固執して、全く手を差し伸べなかった。手を尽くせば、何か助ける方法があったかもしれないが、力不足の自分にはどうすることもできなかったと後悔した。サトシに深く頭を下げた。

正吉は、サトシの父の思い出を話して聞かせた。
当時の大福帳を見せ、サトシの父は字が綺麗で几帳面で、頼りがいのある人物だったと話した。そして、彼の好物だったというまんじゅうを振る舞った。

サトシは泣きながらまんじゅうをかじった。

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NHK『あさが来た』第69回

500 Internal Server Error を吐きたい当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第69回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

新次郎(玉木宏)はあさ(波瑠)に、サトシこと松造(長塚圭史)のことを話した。

松蔵の父は加野屋の番頭をしており、新次郎と松蔵は同い年ということもあり、とても仲が良かった。
しかし、松造の父が加野屋から暖簾分けして両替商を始めた途端、松造の家は没落した。

松蔵は、自分たちの不幸は加野屋のせいだと思い込んだ。そのため、新次郎との仲も険悪になった。
松蔵は、新次郎の父・正吉(近藤正臣)は金の亡者で、人でなしの人殺しだと罵った。正吉のせいで松蔵の父は失踪し、家も潰れた。加野屋も同じように潰れればいいと言うのだ。

新次郎は内心では、松造の言葉にも一片の真実があると思った。しかし、自分の父を侮辱されたことで頭に血がのぼった。
新次郎は松蔵に飛びかかり、取っ組み合いの喧嘩になった。新次郎が人と喧嘩をしたのは、後にも先にもこの時だけだった。
そしてその次の日、松造は母と共に姿を消した。
この時から、新次郎は金を扱う仕事が大嫌いになった。だから、家で真面目に働かないのだ。

同時に、喧嘩別れしたものの、新次郎は松造のことがずっと気になっていた。家が潰れて、あのまま死んでしまっていたらどうしようかと心配していたのだ。
そのため、九州の炭鉱で彼を見かけた時はとても嬉しかったという。子供の時以来会っておらず、名前も変えていたが、力強い目つきは昔のままなので、すぐに松蔵だとわかったという。
しかし、彼に対する引け目もあって話をするきっかけを作ることができなかった。次に会った時にゆっくり話をしようと思っていたのだという。

そう考えていたが、松造が坑道に爆薬を仕掛けて加野屋に復讐し、そのまま行方をくらましてしまった。
新次郎は、自分が松蔵ともっと早くに話をしていれば坑道爆破事件を防げたかもしれないと悔いた。新次郎は泣きながら、あさに深く頭を下げた。
いつまでも悔し涙を流す新次郎と、あさは優しく抱きしめるのだった。

その頃、加野屋の周囲を怪しい男が徘徊しているという噂が持ち上がった。
ふゆ(清原果耶)によれば、体つきのしっかりした男で、加野屋を恨みがましく睨みつけていたという。

あさたちは、それは松造であると推理した。
榮三郎(桐山照史)や亀助(三宅弘城)も松蔵の恨みは知っており、家に火でもつけられるのではないかと警戒した。
しかし、新次郎が彼らをなだめ、この件は自分に任せて欲しいと言うのだった。

その夜遅く、出かけていた新次郎は松蔵を伴って帰ってきた。

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NHK『あさが来た』第68回

本ドラマのまとめ記事も70回近く続いて割と順調なようだけれど、過去には『おひさま』の連載64回で止めてしまった例もあるので油断がならないと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第68回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

九州の加野炭坑から帰って来た亀助(三宅弘城)の話によれば、報告によれば、サトシ(長塚圭史)が炭鉱から姿を消したという。
雁助(山内圭哉)が赴任した日、雁助とサトシは何やら随分と話し込んでいた。それから何日かして、サトシは荷物を全てまとめて行方をくらましたのだという。

それから亀助は、落盤事故の後始末に手間取っていることも報告した。
岩盤が緩んでしまっているので、闇雲に新たな坑道を掘ると再度崩れる恐れがあるのだ。地盤調査には思った以上に日数が掛かりそうだし、費用も随分と嵩みそうなのだという。

その話を聞いた当主・榮三郎(桐山照史)は炭鉱を売却すると言いだした。事故の後始末にかかる費用は仕方ないが、元通りに復旧させるのは諦めるというのだ。現在の加野屋にその費用を賄うだけの余裕はなく、下手をすると破産するからだという。そもそも両替商であった加野屋が炭鉱に手を出したのも間違いで、そのせいで事故が起きたと主張した。

あさ(波瑠)は反対した。
前所有者・櫛田(木村佳乃)とは、炭鉱を宝の山にすると約束して買った手前、軽々しく手放すことはできないと口答えした。それに加え、加野屋が新たに銀行として再出発するためには莫大な資金が必要であり、それを稼げるのは石炭事業しかないと主張した。

いつも物静かな榮三郎であったが、珍しく大きな声を上げた。今の加野屋は潰れるかどうかの瀬戸際で、炭鉱の再稼働や銀行開業などと言ってられないというのだ。
それからというもの、あさと榮三郎の中は険悪になった。

数日後、雁助から手紙が届いた。
炭鉱の復旧にかかる費用や工程表の事細かな報告書が同封されており、炭鉱での仕事を始めたばかりなのに如才ない雁助の手際に一同は舌を巻いた。

また、雁助の手紙ではサトシのことも報告されていた。
鉱夫から聞き取りをしたところ、サトシの組の者たちが坑道に火薬を仕掛けたことが判明したという。さらに、サトシは加野屋が炭鉱を買ったことを最初から快く思っていなかったことも分かったという。今すぐに追跡してサトシを捕まえたいところだが雁助は炭鉱の復旧で忙しく身動きがとれないため、警察に通報して任せることにしたという。
そんな中、親分・治郎作(山崎銀之丞)は、サトシは根はいい者だから許してやって欲しいと懇願されていると報告した。

そして、サトシは「松造」に間違いなかったとも記されていた。
それは新次郎(玉木宏)と正吉(近藤正臣)の予想通りだった。

寝室で、新次郎はあさに、サトシこと松造のことを話した。
松蔵は新次郎と同い年の幼なじみだったという。父は加野屋の大番頭で、しばらくして暖簾分けをしたという。ところが、暖簾分けをした店は思い通りに行かず、程なくして一家は惨めな思いをしながら町を出て行った。

あれだけ仲の良かった松造が、新次郎に向かって最後に言った言葉が「人殺し」だったのだという。

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NHK『あさが来た』第67回

昨日は映画『母と暮らせば』(監督・山田洋次)を見てきたわけだが、黒木華が期待通りに可愛かったということ以外の感想としては、同じように不慮の死を遂げた夫や長男のことはほとんど顧みないのに、どうして母(吉永小百合)は次男(二宮和也)にばかり執着していたのかよくわからなかったということである当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第67回めの放送を見ましたよ。

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第12週『大阪一のおとうさま』

明治10年(1877年)。加野炭鉱の落盤事故から1ヶ月が経った。

心臓の発作で倒れた正吉(近藤正臣)は3日間意識を失っていたがやっと目を覚ました。心臓の悪いことを新次郎(玉木宏)や榮三郎(桐山照史)には秘密にしていたが、もう隠し切れなくなった。それでも、正吉が意識を取り戻したことで、彼らも安堵した。

正吉が目を覚ました時、あさ(波瑠)は留守だった。心臓によく効く舶来物の薬があるという噂を聞きつけ、それを買いに出かけていたからだ。

あさはでかけたついでに、五代の寄り合い所に久しぶりに顔を出した。
他の商人たちからは、九州・加野炭鉱の落盤事故について声をかけられた。彼らは怪我人が出たのにまだ続けるのか、女だてらに炭鉱に手を出すからだ、などと厳しい声をかけられた。
古い馴染みの山屋(南条好輝)だけは、あさのことを心配してくれた。そもそも九州の炭鉱を紹介したのは彼だから悔やんでいるのだ。彼は、今回の事故で加野屋が潰れるのではないかと噂になっていることも教えてくれた。

居心地の悪い思いをしたあさは、すぐに帰ることにした。すると、通りがかった五代(ディーン・フジオカ)に声をかけられ、しばし話をした。
五代は、あさには爆薬を仕掛けた犯人の目星が付いているのだろうと聞かれた。しかし、あさは人を疑うことはしないと言って、何も答えなかった。
五代は、誰に対しても優しいのがあさの良い所だと褒めた。しかし一方で、人の上に立つ者は、時には非情にならなければならないと諭した。あさは黙っているだけだった。五代は言い過ぎたことを悟って、話を打ち切って去っていった。

近頃、五代には心を痛めている事があったのだ。
鹿児島で西郷隆盛が政府に対して反乱し、西南戦争が起こった。五代は西郷と同じく薩摩の出身であるし、政府で指揮をとる大久保利通(柏原収史)も同様である。同郷の者同士が戦うことに複雑な思いを抱いているのだ。
五代自身、非情にはなりきれないでいたのだ。

加野炭鉱に赴任した雁助(山内圭哉)と入れ替わりに、亀助(三宅弘城)が大阪に帰ってきた。
亀助の報告によれば、怪我をした治郎作(山崎銀之丞)の治りは早く、すでに杖を付きながらではあるが、一人で歩けるほどに回復したという。また、鉱夫たちは強面の雁助の言うことはよく聞いており、統率も取れているという。一同は安心した。

ただひとつ、亀助は気になることも報告した。
サトシ(長塚圭史)が出奔したというのだ。

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NHK『あさが来た』第66回

11月25日放送の『ためしてガッテン』で酒粕漬けを見て、マシュマロの粕漬けに挑戦したり(山瀬まみが大絶賛。確かに激烈にうまかった)、今日の昼は鶏肉の粕漬けを焼いて食べようと計画したりしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第66回めの放送を見ましたよ。

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第11週『九転び十起き』

加野炭鉱の事故現場から治郎作(山崎銀之丞)が救出された。彼は、とっさに側道へ逃げ込み、比較的軽症で助かったのだ。一同は彼の無事を喜んだ。

五代(ディーン・フジオカ)は現場で火薬の痕跡を見つけた。誰かが故意に落盤させた可能性があり、事故ではなく、計画的な事件ではないかと言うのだ。
しかし、あさ(波瑠)は五代の調査に感謝しつつも、犯罪説にはほとんど取り合わなかった。あさは鉱山を復旧させることだけを考えており、犯罪行為かどうかは興味の外にあった。
五代はあさの態度に呆れてしまったが、あさの意向を汲み、大阪へ帰って行った。

その後、警察の取り調べが始まった。
あさが鉱夫たちを互いに競わせるような制度を作ったため、鉱夫たちは安全対策よりも自分の欲望を満たすことを優先したことが事故につながったと結論付けられた。あさは厳しく追求されることになった。

一通りの取り調べが終わり、あさはやっと大阪へ帰ってきた。
加野屋では後始末にかかる費用の計算が行われた。炭坑の復旧、怪我をした治郎作への見舞金、鉱夫への休業補償などに莫大な金が必要となった。新次郎(玉木宏)は、それらの費用を削ることは人の道に外れる行為であり、きちんと支払うべきだと主張した。
しかし、当主の榮三郎(桐山照史)や大番頭・雁助(山内圭哉)は反対した。現在の加野屋の経営状況では捻出が難しい額だからだ。そればかりか、再度事故が起きれば、加野屋は破産だというのだ。

ついに雁助は、加野炭鉱は手放すべきだと主張した。あさは反論することができず、塞ぎこんでしまった。

夜、あさと新次郎はふたりきりで話をした。
新次郎は、負けのない人生はつまらないと明るく話した。勝ってばかりいたら、人の心のわからない人間になってしまう。今回の失敗は神様に与えられた試練だというのだ。「七転び八起き」の精神で頑張れと励ました。
あさはこれまでの挫折を数えてみた。(1)明治維新による混乱、(2)つわりの苦しみ、(3)今回の鉱山事故の3つしかなかった。まだまだ転んだ回数が少ないと思った。むしろ回どころか、9回転んで10回起き上がることを決意した。
こうしてあさは元気を取り戻した。

ある日、正吉(近藤正臣)は雁助を自室に呼び、ふたりきりで話をした。
正吉は、雁助に加野炭鉱へ赴任することを頼んだ。正吉は、石炭産業は今後も発展し、加野屋を支える重要な収入源になると信じている。しかし、すでにあさ一人の手には負えなくなってしまった。かと言って、新次郎や榮三郎を送り込むこともできない。正吉が最も信頼している雁助以外に、炭鉱や加野屋を救えるものはいないと言うのだ。
雁助は正吉に珍しく口答えをした。自分は正吉の言うことはなんでも聞く覚悟で仕えてきたが、大阪の加野屋を離れることだけはできないと断った。
正吉はもう一度頼んだ。これが自分の最期の頼みであり、たとえ死に目に会えなかったとしても、雁助に行って欲しいのだと説得した。そうまで言われると、雁助は断ることができなくなった。

こうして、雁助は加野炭鉱に赴任した。
炭鉱に着くや否や、雁助はサトシ(長塚圭史)の姿を探した。それも正吉からの指示だった。
雁助はサトシの顔に見覚えがあった。雁助は声をかけ、サトシを「松造」と呼びかけた。サトシも雁助のことをおぼろげに思い出し、呆然とした。

その頃、大阪では正吉が発作を起こして倒れた。

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