フクちゃんはそんな男で,どげんしたら女ひっかけられると?と聞くと,いつも同じことを教えてくれた.
高望みはいけん.
(村上龍『69(シクスティナイン)』)
けだし名文.
東京→京都の移動でずーっと読んでいた.
そもそも,知人であるところの女性から,
「木公クン,本読まなさそうだよねー.人生楽しまないと嘘って書いてある本だよ.絶対お勧め.読め読め」
と,何度かシツコク言われたので,重い腰を上げ,空き時間に駒場のローソンで思わず発見したので購入.
そういや,某先生からも「木公はほんとに本読まないよな~」と呆れられたことがあったなぁ.わかる人にだけわかる,このオカシサよ.
つーか,「うるせー,黙れ」と内心思ってしまったことを激しく後悔するくらい,読む価値のある1冊だった.
最近,alm-ore を読み始めてくれた別の知人女性は「女の子,妄想,ガンダム,クルマしかネタがないですねー」と,褒めているのか,ケナしているのか微妙なコメントを寄せてくださいましたが,『69(シクスティナイン)』は「女の子,妄想,長崎,’69」しかネタがない.
’69には,僕はまだ受精卵すら存在していなかったけれど,「ああ,わかるなぁ.この馬鹿な青春のパワー」って感じで,楽しく一気に読めました.
主人公の矢崎剣介の頭の中には「女の子」しかないし,「口だけは達者」だし.村上龍もかなり楽しんでこの作品を書いていたようで,ストーリーから逸脱した文章がいきなりあらわれたかと思うと「・・・と言うのは嘘で,実は・・・」みたいなフレーズが随所に出てくる.この,読者をからかった展開って,まさしくalm-oreの目指している路線じゃん.
なんだか,他人事だとは思えない小説だった.
ただ僕と主人公には,一部に大きな隔たりがあった.
主人公は,体制に唾吐き,言ったことはやり遂げる有言実行な男だ.
僕は,体制に守られてぬくぬくするのが大好きで,口だけの有言不実行な男だ.
どっかのアホみたいに,何でもかんでも噛み付けばいいとは決して思わないけれど,自分の意思をきちんともって反体制的な生き方をするのは良いなと思った.
いやいや,そんな小難しいこと抜きにして,「青春って馬鹿だねー.男の子の生きる原動力って,女の子だよねー.あとはロックだよねー」と,頭を空っぽにして読むのに最適かと.