寝ずの番 / 中島らも

最近映画化されたらしいですが、中島らもの「寝ずの番」の原作を読んでみました。

性的で下品なネタのオンパレードだけれど、笑える。
中学生が英和辞典で “sex” に蛍光ペンで印をつけて、友達どうして回し見してこっそりクスクス笑い合うようなしょーもない下ネタに終始しているけれど、ケタケタ笑える。
そして、最後の2ページで、ちゃんとホロリとさせてくれる。
文庫で95ページくらいでサラッと読める。
僕が買った講談社版には、表題作のほかに6編の短編が収録されている。
本屋で角川版と見比べたけれど、講談社版の方が作品数が多かったのでこっちにしてみた。
あと、角川版は、表紙がモロに映画の登場人物になっていて、なんか気に入らなかった。
#本屋でカバーをかけてもらわない主義なので、外で読むとき恥ずかしい。


お話としては、ある大御所落語家が病院でもうすぐ死ぬところから始まる。
彼が「そそが見たい」と言ったことで、ちょっとした騒動がおきる。
「そそ」というのは、関西(特に京都のあたりだと説明されている)の言葉で、女性器を意味するそうだ。
そんなわけで、彼の最期の望みをかなえてあげるために、弟子の妻がベッドに横たわる落語家の顔の上にまたがり、女性器を見せるというところから話が始まる。

オチとしては、落語家は「そとが見たい」と言ったのを、周りが聞き間違えて、勘違いしたというもの。
その後、落語家はぽっくりと逝ってしまって、通夜に集まった人々が、故人の思い出や下ネタに花を咲かせるというお話なわけである。

第2部では、故落語家の一番弟子が亡くなる。
で、通夜にみんなが集まって、酒をどんどこ飲み始めて、やっぱり下ネタで盛り上がる。

第3部では、故落語家の妻が夫の後を追うようになくなってしまう。
これまた、通夜にみんなが集まって、酒をどばどばと飲み始め、故人に遠慮することなく下ネタで大盛り上がり。
故落語家との間で、妻を争った恋敵まで登場して、彼も巻き込んでの下ネタ歌合戦。
そのバカバカしさに、かえって感心させられる。

いつもはクールにタバコをふかしながら Cafe Junk で読書をする当方であるが、今回ばかりは顔がにやけっぱなしで、時折声を出して笑ってしまった。

♬おれの心は トタンの屋根よ
かわらないのを 見てほしい♪

不覚にも泣きそうになったので、そそくさと Cafe Junk を後にした。

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コメント (10)

  1. rei

    汚いお話ですが、「おねしょした」とか「ちびった」ということを私の所では、
    「そそぉしゃはった」
    といっていました。
    ので、
    我が家のにゃんず、わんこがちびったり、おトイレを失敗した時に今でも使ってます。

    なんか関連しているのか?

  2. 木公

    へぇ~、へぇ~、へぇ~。

    「そそ」というのは、基本的に「シモ」に関連した言葉なんですね。

  3. せおぴ

    「そそぉしゃはった」は、「粗相(そそう)」ですよね。普通に使いませんか?
    関西人(ただし京都人ではない)ですが、「そそが見たい」の「そそ」は、知りませんでした。
    では。

  4. 木公

    確かに、「粗相」は”そそぉ”ですね。

    この本を読むと、関西では「おめこ」、九州「ぼぼ」、東北「べっちょ」、淡路島「ちゃこ」、落語業界「タレ」など、品の無い言葉遣いが非常に勉強になります。

  5. miku

    こういう話が出るたびに、
    サザンオールスターズの歌や、
    プロレスラーを思い出すのは私だけでは無いはず。

    でも、プロレスラー。
    名前は知っていても顔は知らないアタクシです。

  6. 木公

    プロレスラーの件は、「寝ずの番」でしっかり取り上げられていました。
    吸収巡業の時には、ちがうリングネームだったそうで。

  7. miku

    実はそのレスラーの名前はらも氏の作品で知ったのですよ。

  8. 木公

    にゃるほど。
    僕はTVなどでネタとして語られるのを知っていました。
    そして、顔を知らないのは miku さんと一緒です。

  9. Hirori

    内田康夫さんの「箸墓幻想」の
    中に倭迹迹日百襲姫命
    (やまとととびももそひめのみこと)
    に関連して「そそ」が出てきます。
    日本書紀の話ですから
    実はすごく古い言葉なのかも。

  10. 木公

    「やまとととびももそひめのみこと」
    いま、暗唱できるように3回くらい読んでみましたが、無理でした。難しい。

    それにしても「そそ」は日本書紀にも絡んでいるなんて、いろんな意味ですごい言葉です。

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