ましてや、奈良市に縁のある人(特に、大宮通りに沿って、奈良公園~平城京跡の土地勘を持ってる人)は、避けては通れない小説。
『鹿男あをによし』の事件のほとんどは、下のマップの範囲で起きている。
今日も今日とて、某用事で若者を近鉄・新大宮駅まで送り届けたのだが、新大宮駅もばっちり登場する地域密着小説。
たまに、奈良市外に出張もするけど。
その行き先がまた、alm-ore で取り上げた京都の伏見稲荷だったり(そのときの記事)、奈良県明日香村だったり(そんときの記事)。
残念ながら、主人公たちが出向くことはなかったが、僕が以前訪れた大阪歴史博物館の周辺(この記事)が重要な意味を持っていたり。
この本は、alm-ore のネタにしてくださいと言わんばかりの1冊。
とにかく、必読。
こんなクソ blog を見てる暇があったら、今すぐ『鹿男あをによし』を読め。
今すぐ、本屋に走れ。
いや、本音を言うと、うちの amazon アフィリエイトで買ってくれるとうれしい。
お話は、ある大学院生が講座内でトラブルを起こしてしまったことに端を発する。
ほとぼりを冷ますために、数ヶ月の間、奈良の女子高に臨時教員として赴任するところから始まる。
担任するクラスの初日、ある生徒が遅刻してやってくる。
なんで遅刻したんだ?と聞くと、「近鉄の前で、マイシカ(乗って移動するための鹿)が駐禁の取り締まりにあったので遅れた」と言い訳をする。
奈良ならではの言い訳だ。
先生は、俺のことを県外人だと思ってからかいやがって、と立腹する。
すると女子学生は「奈良の人はみんな鹿に乗ってるもん。昨日も母がマイシカでビブレに買い物に行ったもん」と畳み掛ける。
ビブレって本当に奈良にあるデパートだし、奈良には本当にあほみたいに鹿がいっぱいいるし、僕も近畿生活5年目だし、当方までなんとなく信じてしまったとか、しまわなかったとか。
そんな、不穏な臨時教員スタートを切る主人公。
なんて書くと、甘い学園物ラブロマンスかと敬遠する人もいるだろう。
僕も、ちょっと不安になった。
しかし、ストーリーは急転直下、主人公は人の言葉を話す鹿(シカも、雌鹿のクセにおっさんの声で話す)と出会ってしまい、トホホな人生の激流に巻き込まれていく。
そしてついには、古の女王の秘術の核心に迫り、無責任ながらも日本の窮地を救うヒーローになる・・・、ような、なりそこなうような。
奇想天外な、”奈良ご当地・歴史ロマン・「坊ちゃん」風学園物・剣道スポ根・動物とのふれあい”ファンタジーである。
なんのこっちゃ?
なんのこっちゃである。これだけの説明では。
しかし、これ以上書いてしまうと、この小説の面白いところが全てネタバレになってしまう。
だから、断腸の思いで、周縁的なことしか書かないのである。
とにかく、”奈良ご当地~動物とのふれあい”という数条の糸がどのように絡み合って、整合して、大団円を迎えるのか、その目で確かめていただきたい。
本書の中で、ある神の使いが
本当に大事なことは、文字にしてはいけない。言葉とは魂だからだ。
万城目学『鹿男あをによし』 p.350
と述べている。
それを尊重することにする。
ちなみに、この引用部分、既視感があったのだが、『星の王子さま』(前に読んだ)の
「ほんとに大事なモノは、目に見えないんだよ!」
と意味は同じかな。
あとね、とある”魔法”(もしくは、呪い)の解除に関する自己犠牲、ベタだけど、好きよ、個人的に。
もう1つの”魔法”(もしくは、呪い)の解除に関する手法、予想通りだけど、大好きよ、個人的に。
わかりやすすぎだけど、しんみり泣いたさ。
最近、涙腺がゆるい。