僕にとっては、大満足な映画だった。
ある1点を除いては。
『序』で語られるのは、TV版の第1話~第6話を完全に踏襲したストーリー。
シンジがエヴァ初号機で第3使徒サキエルとの初陣に臨み、NERVや第三新東京市の人々との交流と葛藤を経験する。
続いて、第4使徒シャムシエルが登場し、極限状態での戦闘。そしてトウジ、ケンスケとの友情の芽生え。
映画のラストは、シンジとレイの心のふれあいを背景とした、第5使徒ラミエルと対峙するヤシマ作戦。
エヴァンゲリオン・シリーズの「ロボットアニメとして、わかりやすくて、派手なシーン」のオンパレードなので、3部作のオープニングとして役割は十分に果たしていると思う。
旧来のファンにとっては、TV版そのままなので、新たなストーリー展開を期待すると裏切られるが、作画がデティールアップされており、「見た目の美しいエヴァ」として見直す分にはまったくケチのつけようがないと思う。
#当方は歳のせいか、かえって画面がゴチャゴチャしているように思え、ちょっと目と頭が疲れた。
さて、冒頭で1点だけ満足できなかったと述べたのは、対サキエル戦(シンジの初陣)の演出である。
実は、当方がエヴァにハマった最大の理由というのが、TV版第2話「見知らぬ、天井」の演出にある。
今だから白状するけれど、知人の家で彼が録画したエヴァの第1話を見せてもらったとき、妙に漢字にこだわった背景画像をニガニガしく思った。
「何が、”ようこそ、NERV 江” だよ。”江” じゃなくて、”へ” で十分じゃねーか。」
と、ブツブツ言ったものだ。
ところが、第2話を見て、すっかりやられた。
みなさんご存知のとおり、エヴァ初号機はサキエルに頭部を破壊されて、いきなりピンチに陥る。
その直後、シンジが病院で目を覚ますシーンに切り替わる。
「あれ?戦闘の結果はどうなったの?シンジが病院にいるってことは、命は助かったけれど、負けたってこと?」
と、見る者を不可解な気分にさせる。
しかし、街の様子が映されるシーンでは、戦闘に勝利したことが匂わされる。
はっきりとした結末が示されないまま、夜シンジが眠りにつこうとするシーンに変わる。
まどろむシンジの頭の中で、戦闘の時の騒音が響き始め、そこから回想シーンのように戦闘の結末がやっと明らかにされる。
このジラし具合にノックアウトされて、当方はエヴァンゲリオンにハマった。
この構成の妙が、映画では省略されていたのが、当方にとってはとても残念だった。
ていうか、90分のフィルムにまとめるとなると、かのシーンの扱いが難しくなるだろうことは見に行く前から予想できてはいたけれど、どうまとめてくるのかを楽しみに出かけた当方である。
悪い意味で予想通りのプロットとなっており、ちょっとため息。
ところで、テレビ版の時から、裏読みをするのはエヴァのお約束ですよね。
今回見て当方が考えたこととしては、輪廻転生ネタにしたいのかな?ってことでした。
まず、オープニングの海(湖?)が、旧映画版のラストと同じ赤い海だったのが印象的でした。
あと、例のシ者のラストのせりふが、それをほのめかしているように聞こえました。
今後の展開が楽しみです。
なお、今後の展開といえば、クレジットロールの後にちゃんとミサトのナレーションによる次回予告があるので、「宇多田の曲はいらねーや」と早々に席を立たずに、きちんと最後まで見ること。
#ちゃんと、次回予告のBGMも懐かしいやつだし。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を見た
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