ジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンを描いた映画『チャプター27』をシネマート心斎橋で見てきた。
これっぽっちも万人ウケするとは思えないけれど、僕は好き。
ジョン・レノンが好きだからというよりは、『ライ麦畑で捕まえて』(村上春樹のキャッチャー・イン・ザ・ライ)を読んだ直後だったから。
本物のジョン・レノンの映像は一つもでてこない映画なので、ジョン目当てで見るとしくじるでしょう。本物のジョンの姿といえば、アルバム「ダブル・ファンタジー」のジャケット写真と追悼式典でのプラカードに印刷されたポートレートくらいしかないくらい、徹底して出てこない。
むしろ、実際の事件のとき、マーク・チャップマンが読みふけっていたという『ライ麦畑で捕まえて』へのオマージュ映画だと思っておけば、失敗せずに見れる。
本作中のマーク・チャップマンが、『ライ麦・・・』の主人公ホールデン・コールフィールドの行動をなぞってニューヨークの街を彷徨う様は小気味いいくらいよくできていた。
『ライ麦・・・』を読んだ人なら記憶にあるのではないかと思うのだけれど、タクシーの運転手にセントラルパークのアヒルがどこに行ってしまうのか尋ねるところとか、ホテルにチェックインしたら変体チックな宿泊客がいてイヤになってしまうあたりとか、ホテルの部屋に娼婦を呼ぶところとか。
もしかしたら、僕が気付かないだけで『ライ麦・・・』から引用されているシーンはまだあるかもしれないけれど。
個人的なお気に入りは、娼婦を呼ぶところ。娼婦を呼ぶ前にエレベーターに乗るシーンがある。『ライ麦・・・』ではエレベーター・ボーイがポン引きになってる、あそこ。本作ではポン引きってわけではなかったのだけれど、胡散臭い男と同乗するシーンがほんの一瞬あって、原作を知っている身にとっては、ちょっとニンマリ。
あと、下衆な話だけれど、いろんな映画やドラマで娼婦役の女性は見てきたけれど、あんだけ貧相な体の娼婦役は初めて見た。マーク・チャップマン役のジャレッド・レトはでっぷりと腹が出てる上に白いブリーフだし、ちょっとゲンナリしちまった・・・。
『ライ麦・・・』のオマージュなので、タイトルも “Chapter 27” だしね。『ライ麦・・・』の本編は26章までなのです。偶然なのか、それが狙いなのか分からないけれど、事件から今年で27年ですな、今気付いたけれど(ジョン・レノン殺害は 1980年12月8日)。
また、『ライ麦・・・』は主人公ホールデンが精神病院に入れられているときに、自分がニューヨークを彷徨った3日間を語るという内容なのだけれど、本作もマーク・チャップマンが自分がニューヨークで過ごした3日間を語るというスタイルになっている。
そんなわけで、もし『ライ麦・・・』が大好きな人がいたら、そのスピンアウト映画として見ることをお薦めします。
ジョン・レノンに興味があるだけの人だったら、ハズれると思う。
ちなみに、ジョン・レノンにサインを貰うマーク・チャップマンの写真というのも世の中には実際に存在しているわけで。
主演のジャレッド・レトは、この写真の雰囲気がよく出てる。
映画の中のジョン役の人も、ウソくさいリーゼントをしていて、この写真の雰囲気が出てた。
その点は、ちょっとほめる。
ところで、予告編を見ていて気になったのは、『ペルセポリス』というアニメーション映画。
イランに生まれた女の子が、保守的なイスラム生活の中にあって西洋文化(ロックとか)に触れて反抗する姿、そして西洋文化の中で挫折する姿なんかが描かれてるらしい。
どうも、イスラム vs 非イスラム の葛藤を、イスラム女性の視点から見せてくれるようで、かなり興味があるぞ。
#少なくとも、今まで僕が触れている イスラム vs 非イスラムの話って、アメリカの9.11がらみがほとんどだから、全く逆の視点なのだ。