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『阿房列車 1号』 一條裕子(漫画)、内田百閒(原作)

2年位前にIKKIで雑誌連載が始まり、当方は一度もそのマンガを読んだことがなかったのだけれど、
「単行本が出たら、即買いの予定。」
宣言するほど楽しみにしていた、一條裕子画の『阿房列車』の単行本がやっと発売になったので、買った。

内田百閒の名作鉄道エッセイ『阿房列車』を、完全漫画化という感じ。
原作を読んだときに感じた百閒のすっとぼけた感じが、そのまま表現されているように感じた。

原作は文字ばっかりでなんとなく敬遠していた人も、漫画版はさらりと読めるので一度チャレンジしてみても損はないと思う(文庫の原作よりも値段は高いけど)。
収録作は3作。

「特別阿房列車」
“なんにも用事がないけれど、汽車に乗って大阪へ行って来ようと思う。”で有名な第一弾。
出発前のグダグダ話(行きは一等で帰りは三等とか、借金の話とか)が笑えるアレ。

「区間阿房列車」
汽車が遅れたせいで乗り換え列車がすんでのところで出発してしまうやつ。
“向こうが悪いのだから、迎合するわけには行き兼ねる” とヘソを曲げて走ろうとはせず、結局、雨の中ホームのベンチで2時間過ごすやつ。

「鹿児島阿房列車」
百閒が初めて関門トンネルをくぐるヤツ。
途中、生まれ故郷の岡山を通過するヤツ。偏屈だから里帰りしようとしないのだけれど、風景が変わっていることは寂しく思うというアレ。
#この話、一條裕子の情緒的な描き方がうまい。


中身はこんな感じ。

スクリーントーンを一切使わずに描いてあるのが特徴。
そして、風景や背景は細かい線で緻密に写実的に描いてあるのだが、人物はデフォルメして描いてあるという対比も面白い。
そんなコミカライズされた百閒が、偏屈なセリフをしゃべるもんだから愉快で仕方がない。
もちろん、相棒のヒマラヤ山系君(いつも、百閒の旅のお供をする風采の上がらない男)もいい感じで、雰囲気が出ている。

そして箱入り。
古書っぽくて、これまたいい雰囲気。
#写真は、左が箱で、右が本体

これ、名作だと思うなぁ。

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