元奈良県民で、当方のご近所さんだったR氏がこんなことを言っていた(リンクは彼のマイミク限定)。
木公さんのとこからだと、岡寺の手前にある坂乃茶屋ってところにおいしそうなかき氷があります。くずきりを食べてかき氷を食べ損なったので、機会があればまた行きたいと思っているうちに引越してしまったので、ぜひ食べてきてください。
「明日香村は、うちから1時間以上かかるよ・・・」なんて思いながらも、せっかく美味しそうなかき氷を教えてくれたので食べに行ってみた。
ていうか、冷静に考えてみたら、覚えている限り、僕は今までに1度しかかき氷を食べたことがない。北海道暮らしが長かったので、厳しい夏の暑さはそれほど経験していないこともあるし、痩せ型体型でどちらかというと冷え性気味なので、夏に冷たいものをそれほど欲しいとは思わない性質だし。しかし、加齢によって脂肪がついてきたせいか、最近の近畿地方の暑さはツライ。これだけ暑いと、かき氷も食べたくなるってもんだ。
しかし、かき氷を食べなれていない当方。下手に不味いかき氷を食べて、それがトラウマになってしまって、一生かき氷を食べられない体になってしまっても、残りの人生が不幸だ。かき氷のことは何も知らないので、不味いかき氷というのがあり得るのかどうかすら知らないが、少なくとも露店などで紙カップに入れて売られている “フラッペ” というヤツは、僕の美的感覚からすると、どうも美味しそうに見えなかったりする。フラッペに関してはきっと食わず嫌いなんだろうと思うが、そういうわけで、かき氷で失敗したくないという思いが強い。
R氏を信用し、彼が推薦してくれた坂乃茶屋のかき氷を味わいに行ったのである(坂乃茶屋ファン倶楽部)。
結論から言えば、かき氷って美味しいもんだな、と思った。今年の夏は、かき氷がマイブームになりそうだ。
坂乃茶屋のある奈良県明日香村は、奈良市から車で1時間弱、電車では30分くらいだろうか。
石舞台古墳(前に行った)など、古代日本の遺跡がたくさんある。周りは田畑ばかりなので、日本の原風景を感じられる。隠れた人気観光地で、駅前でレンタル自転車を借りて、のんびり散策すると楽しいらしい。
奈良時代に作られた、日本最大の塑像(土で作った仏像)を有する岡寺の門前に、目指す坂乃茶屋はある。
余談だが、この岡寺の本尊・如意輪観音像の右に、当方の憧れである愛染明王像が奉られている。岡寺のトップページの写真を見ると、壁に穴があいていて、中に仏像が納められているのが分かる。向かって左側が不動明王で、右側が愛染明王だ。実際に見仏してきたのだが、ここの愛染明王は体の色彩がほぼ剥げ落ちて、真っ黒だった(本来は赤)。顔の比率が大きく(本尊もそんな感じ)、6本の腕もそれほど写実的ではない造形なので、どこかしら、仰向けにされたカブトムシみたいな印象だった。罰当たりな感想だけれど。
閑話休題。
その岡寺に参拝する坂道に、坂乃茶屋はある。
昔ながらの佇まいで、とても雰囲気がいい。ただし、坂道を登ってきて汗だくになっていても、空調設備が扇風機しかないから、注意したい。けれども、今日はかき氷を目当てにやって来たので、蒸し暑い方がかえってかき氷は美味しいだろう。
店内は畳敷きの上に、ちゃぶ台と座布団が多数並べられている。靴を脱いであがるので、出かける前には靴下に穴が空いてないかどうか、チェックしてから出かけたほうが安心だ。中は意外と広く、20-30人は収容できるだろうと思われる。気さくなおばあさんが店主のようだ。その孫と思しき、高校生くらいの素朴な少年が給仕係をしていた。
ちょうど昼食の時間だったので、かき氷の前に食事を摂ることにした。坂乃茶屋定食(たしか700円くらい)を注文し、冷たいそうめんとわらびの炊き込みご飯をいただく。そうめんは、奈良県中部(三輪とか)の名物でもあるので、美味しかった。いろどりのよい盛り付けで、目にも涼しかった。
さて、いよいよ、シメのかき氷である。
祝日だというのに、天気が不安定だったり、蒸し暑すぎるせいだろうか。訪れる客も少なく、店内は静かで、ゆっくりと時間が流れている。のんびりとくつろいでいても、特に追い払われるような雰囲気もない。いい店だ。
客の目障りとならないように、陰に控えている店員さんに声をかけて、かき氷を注文した。ほぼ、生涯で初めてにも等しいかき氷のオーダーなので、シロップの味とかトッピングとか事細かに聞かれたらどうしようかと、ちょっぴり緊張した。しどろもどろになった挙句、「ぷっ。シロウトかよ」なんて思われたら恥ずかしいじゃん。
店主のおばあさんが、「小倉しかできないけど、いいですか?」と遠くから訪ねてくる。小倉って、確かつぶあんだよね?よくあるイチゴシロップやブルーハワイとかじゃないようだ。それらの味もよー知らんけど。少々緊張感が高まったが、慣れた客を装うために、間髪いれず「あ、それでいいっスよ~」と気軽にこたえた。
どうやら、白い蜜もかかっていたようだ。あんと氷をおそるおそるスプーンですくって、おっかなビックリ食べてみる。なんせ、高校生以来のかき氷だし。
勝手な想像で、かき氷ってのはカルキ臭い氷水なんだろうと思っていたのだけれど、そんなことは全然なかった。水っぽいわけでもなく、上品なシャーベットのような食感だった。蜜も小倉も、甘さ控えめで、いくら食べても飽きなかった。ああ、これが美味しいかき氷なのか、とちょっと感激。
固体の氷の部分を全て食べ終わって、器には溶けた水が残った。それは残しておくものなのか、全て飲むのが作法なのか知らなかったが、試しにちょっとスプーンで飲んだら、美味しかった。だから、夢中になって、器に口をつけて全部飲み干した。
とても満足したので、さて帰るか、と思ったのだが、もう一仕事残していた。
実はこの店、さくらももことの縁で有名。
さくらももこのデビュー作の掲載誌が発売される5日前、彼女は短大の研修旅行でこの店を訪れたそうだ。この店には、一般客が書き残した色紙がたくさん飾られているのだが、そこに彼女もイラストを残していった。「『りぼん』よんでね。さくらももこ」と記されている。それが、新人漫画家さくらももこの第一号色紙にあたるわけだ。
後にさくらももこは一流漫画家となった。そうなった後も、その日のサイン色紙のことがずっと頭の片隅にあったそうだ。デビューから16年経って、初めて彼女は坂乃茶屋を再訪した。店主のおばあさんは、さくらももこを本人だと気づかずに、「これはうちの家宝だ」と説明したそうだ。若かった自分のサインをこんなにも大事にしてくれていることに感激したと、彼女は「あの日の奈良」と題したエッセイに記している(『さくらえび』収録)。
実は、冒頭のR氏に同店を紹介してもらう前から、坂乃茶屋とさくらももこのエピソードはテレビで見て知っていた。その店を違う理由であれR氏に紹介してもらって、俄然訪問する気になったという理由がある。ちゃんと、さくらももこのエッセイも購入して予習し、その本とさくらももこの色紙とを一緒に写真に撮るという計画まで立てて、この店にやって来たのだ。
帰り際、いざ写真を撮ろうと鞄をまさぐると、出てきたのは、みうら&いとう『見仏記(4)』(岡寺のことが書かれている)と、フィシュテル『私家版』(今、読んでる本)の2冊だけ。確かに車に『さくらえび』を積み込んで、道中もチェックしながら来たのだが、どうやら車に置きっぱなしにしてしまったようだ。
「うわ~。車まで取りに戻るしかないけど、この暑さで、あの坂道はなぁ・・・」
なんて、ブツブツ言っていると、店のおばあさんが「『さくらえび』ならここにありますよ。お貸ししましょうか」なんて言って、親切にもお貸しくださった。そんなわけで、僕の所有しているのは文庫版だけれど、写っているのはお借りした単行本。
お店の人も、本当にさくらももこの一件は嬉しいんでしょうね。彼女の色紙は、店に入ってすぐに目に付くところに貼ってある(他の僕が見つけた有名人としては、吉村作治と三林京子がいたけれど、特に優遇はされていなかった)し、エピソードの載っているエッセイ集も店にきちんと置かれている(かといって、『ちびまる子ちゃん』が全巻揃っているかというと、そんなことはない)。
ただ、「そんな風に、本と一緒に写真を撮った人は初めてですよ」と軽く笑われたりした。
【坂乃茶屋】
サイト: 坂乃茶屋ファン倶楽部
住所: 奈良県高市郡明日香村岡
Tel: 0744-54-3129
営業時間: 午前11時から午後4時頃
定休日: 不定休(12月中旬から2月は土日祝のみの営業)
駐車場: たぶんなし。岡寺の駐車場に停めるべし(もちろん、お参りせーよ)
こんばんは。
同じ柄のねこを飼っていたり、
休日の守備範囲がけいはんな・奈良あたりなご縁で
いつも楽しく拝見しています。
ところで「おいしいかき氷」といえば、京都にもあります!
店の名前を失念しているのですが(失格)
京阪三条下車・三条大橋袂近くの中華料理珉珉の左側の道を入って右手に
「あんコーヒーの店」という看板のある店があります。
(コーヒーにあんこが入ってるそうです…こちらは未体験)
ここのかき氷は、まず氷自体がカンナで削ったかつお節みたいな形状で
口に入れるとふわっと溶けます。普通の氷とは別物です。
さらにメニューに「黒蜜」があります。これがウマイ!
もし京都へ行かれた際に氷気分になられましたら、是非お試しください。
オススメです。
私も何年か食べてないのですが…書いたらまた食べたくなりました。。
(少なくとも20年はやってる店なので、潰れてるとかはないと信じているのですが)
何せ突然のコメントで恐れ入ります。
今後とも楽しい記事、楽しみにしてます!
初めてのコメント & 有益なかき氷情報ありがとうございます。
店の名前は「茶寮ぎょくえん」でしょうか?
ど根性で探しました。
場所はここで間違いないですね、きっと。
http://maps.google.co.jp/maps?f=q&source=s_q&hl=ja&geocode=&q=%E8%8C%B6%E5%AF%AE%E3%81%8E%E3%82%87%E3%81%8F%E3%81%88%E3%82%93&sll=35.009023,135.771183&sspn=0.000927,0.001717&ie=UTF8&ll=35.010297,135.771124&spn=0.007417,0.013733&z=16&iwloc=A
この夏、女子と京都でデート(デート?デートなのか!?)の予定があるので、訪問してみたいと思います。
「きゃー、木公クン、ステキな店知ってるのね!(はーと)」
となることを目指します。うふふ。
中途半端な情報ですみませんでした。。
「茶寮ぎょくえん」で間違いないです。
ただ週末などは必ず並んでおり、かつあんまし遅い時間だと
氷がない?ような状況もあった気がします。
(どっかのお店から氷を買ってらっしゃるようで)
以上補足でした。
ぎょくえん、自信を持って訪問できそうです。ありがとうございます。
無茶苦茶美味しそうですねー。
やっぱカキ氷は抹茶とか小豆とかシンプルなのが美味しいです。
そうそう、今日たまたま入稿した、私の作ってる雑誌のスイーツ紹介ページに京都の美味しい(らしい)カキ氷が紹介されていました。
甘味 弥次喜多
http://allsweets.info/yajikita.htm
抹茶白玉が美味しいそうです。
コンビニで売っている「北海道あずき」というカップのカキ氷も結構美味しいです。
「弥次喜多」の情報ありがとうございます。その他ぐぐってみても、かき氷には定評があるようです。ここも訪問してみることにします。
ところで、その雑誌ってのをこっそりおせーてくださいな。
京都のかき氷
かき氷を食べに行こう!(「京都滋賀地域情報LOOKPAGE」内)というページに、京都のお薦め老舗甘味処のかき氷が紹介されていた。 先日、当blogのコメン…
AERAで御座います。
結構面白い雑誌ですよ。
派遣で来るまで読んだ事もなかったですが。
カキ氷が載ってるのは8月3日号になります。
おっと、超有名誌。
毎週月曜日発売かな?8月3日号は、次の月曜ですね、きっと。買いに行きます。
長谷川寿一・眞理子「道なき道の戦友」: AERA 2009.8.10
本日発売の AERA 2009.8.10号の「はたらく夫婦カンケイ」というページ(p.86)で、長谷川寿一・眞理子夫妻が取り上げられていた。 おふたりとも…