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『酒場ミモザ』 とだともこ(ほうさいともこ)

先日、オルニオ氏に大推薦された『酒場ミモザ』(とだともこ)の1巻をゲットすることができた。

同書は1990年代前半の京都のバーの初老のマスターと常連客とのゆったりとしたやり取りを描いたマンガ。
舞台は酒場なのだが、小うるさい酒のウンチクなどは出てこないので、肩が凝らずに読める。一方、京都独特の風俗(京言葉や京料理、京都でのしきたりなど)がさりげなく紹介されていて、関西在住数年の当方もいろいろと勉強することができた。

全4巻。続きもぜひ読みたい。


しかし、同書は現在絶版。カルトな人気があるらしく、たった今調べたところ、amazon の古本でも 5,650円という値がついている。ちなみに、発刊当時の定価は470円だ。

そんな高額古本を、僕がどうやって手に入れることができたか。
Google で同書の情報を探していたら、偶然に楽天オークションの出品情報がヒットした。みれば、即決価格で450円。これは見逃す手がないと、即座に購入。
今日届いた。

封を開けた直後が、冒頭の写真。出品者は、きれいにビニール袋に包んで、美古本を送ってくれた。1箇所だけページに小さなシミがついていること以外は、とても状態が良かった。Amazon の5000円オーバーを見るにつけ、とてもツイていたと思う。
さらに小さな幸せだったのは、出品者が予告もなくオマケを入れてくれたこと。写真に紫色の帯が見えるが、これは花柄の小さなシール。岐阜県に住むという男性が、どういう意図があって同封したのか分からないが、とてもホンワカした気持ちになった。

シールのホンワカした気持ちで『酒場ミモザ』のページを開く。
とても居心地の良さそうなバーのカウンターで、常連客たちが時には軽口をし、またある時には人生相談を繰り広げる様は楽しそう。自分もその会話の中に入っていきたくなる。
煮物を炊くコツであるとか、「一見さんお断り」の京都の店にうまく入店するコツなどなかなか興味深い。

また、1990年代前半は京都の町並みがめまぐるしく変化していった時期のようで、あちこちで工事が行われている風景が描かれている。古き良き京都と、現代的な京都を同居させ、上手に時代精神を切り取った作品だと感服した。

作者 とだともこ は、現在「ほうさいともこ」と名を変えているらしい。あまり多作ではないようだが、今月のアフタヌーンに大阪なんばを舞台に、料理修行中の女の子の読みきり作品を描いている。
なお、この情報は twitter 上でオルニオ氏の美人妻さんが教えてくれた。ご夫婦でこういう味のある作家のマンガを読んでる家庭って、羨ましいよね。

さて、作者の改名に関してなのだが、旧とだともこ時代に描かれたこの『酒場ミモザ』1巻の表紙の中に「ほうさい」という文字が書かれている。右側の芸妓さん(黒い方)の頭上に「ほうさい」という看板がかかっているのだ。これは、どういうサインなのだろうか。

あと、今回初めてこの作家のことをはっきりと知ったのだが、一度だけ彼女の文章を読んだことがあったらしいことが分かった。そして、本書の表紙も見かけていたはずだ。

この10年で、当方がもっともお気に入りの漫画家サラ・イネスの1990年代に描いた『大阪豆ゴハン』という作品がある。こちらも長らく絶版だったのだが、2007年に復刊された。その時、5巻に解説を書いていたのが ほうさいともこ だった。
サラ・イネスの方が業界の先輩にあたり、ふたりとも関西を舞台にした日常マンガを描いていて、葛藤やら援助やらがあったというような話を書いている。

サラ・イネスは当方の関西生活指南書だったのだが、今回 ほうさいともこもそのラインナップに加わりました。

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