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NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』第29回

 今日は有給をとったのだが、パスポートの更新というなんの色気のない活動計画のみの当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第29回めの放送を見ましたよ。

* * *

 勝手に仕事部屋を片付けた布美枝(松下奈緒)は、怒った茂(向井理)に余計なことはするなと怒鳴られた。茂の仕事を手伝いたい一心であり、教えてもらえれば希望通りに片付けると言うのだが茂は取り合わない。結婚したのに会話もなく、茂の考えていることが全くわからないと重ねて訴えるのだが、茂は部屋に閉じこもってしまった。

 身近に相談する相手がいない。家の中には他人(中村靖日)が同居していて気が休まらない。布美枝はひどく滅入ったまま、商店街へ買い物へ出かけた。

 道端で、貸本屋のおばあさん(佐々木すみ江)が、仕事もせずに競馬に夢中の息子(光石研)と言い争っているのを見かける。直後、リウマチの痛みにうずくまるおばあさんを家まで送った。

 貸本屋には、女主人(松坂慶子)や元置引犯(中本賢)、近所の奥さん連中などが集まった。東京者らしい威勢がよく、人情味のあるやりとりが繰り広げられた。それを見ているだけで、布美枝は少し元気を取り戻した。

 しかし、布美枝が家に帰ると茂の姿は見当たらなかった。怒って出て行ってしまったのではないかと、またしても不安で落ち着かなくなってしまった。

 ところが反対に、茂は自分の行動を反省していたのだ。出版社で自分の作品にダメ出しされたことにイライラしていて、そのせいで布美枝にきつく当たったのだと思い至る。落ち着いて家の中を見渡すと、細かいところまで行き届いた片付けがされている。布美枝は、早くもナズナ(ぺんぺん草)の花が咲いているのを見つけて、それを家の中に飾っていたりもした。それによって季節の変化を知ったことなどから、茂は心の余裕を取り戻すことができた。

 茂が外出から帰って来て、家の外から声をかけた。布美枝が慌てて出て行くと、茂は中古の自転車を手に入れていた。それは布美枝用の自転車だと言う。布美枝は、茂が怒っていないことに安心し、また、初めて貰った贈り物に感激するのであった。

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 すっかり忘れていたけれど、今週の副題は「花と自転車」。
 ドラマ主題歌の映像は、自転車に乗っている布美枝。彼女が自転車を進めると、背景に季節の移ろいが描かれるというシーンが印象的。サクラやヒマワリ、モミジなどが重ねられるのだ。そして、主題歌のクライマックスでは、茂と布美枝が田舎道を自転車で並走して遠ざかって行く。ふたりの人生を象徴しているかのような、なかなか良い映像だ。

 そんな主題歌映像なので、「花と自転車」なんて副題を見ると、「なんだ、主題歌の二番煎じか」と覚めた目で見ていたのですが。

 自転車は、文字通り古臭い自転車としてドラマに登場。しかし、「花」の演出にやられた。
 主題歌ではサクラなどの派手な花が出てくるのに、ストーリーの中の花はぺんぺん草。とても地味で小さな花だし、通常の感覚で言えば雑草。けれども、それを持ってきたのがすごいと思った。

 ぺんぺん草(ナズナ)のことは僕もよく知らなかったのだが、調べると2月くらいから花が咲き始めるらしい。茂と布美枝が結婚したのが1月の末、そのまま東京に引越してきて数日なので、ストーリーの中ではちょうど2月。矛盾がない。
 2月と言えば1年でもっとも寒い時期ではある。前々回の放送では、炭も買えない茂が、野良猫を捕まえてきてアンカ代わりにしているという描写もあった。しかし、着実に春にむけて季節は動き出しているのだということが、ぺんぺん草で知らされている。
 また、短期的でほとんどその日暮らし同然の茂が、ぺんぺん草に重ねて季節感という中長期の変化に注意を向け始めた。これは、布美枝との長い生活のことを自覚し始めたことの比喩ではないかと勝手に思っている。

 そして、新婚家庭なのに、華やかなものが一つもない。がんばって飾り立てることができたのが、庭に咲いていたぺんぺん草だなんて。僕たちのワビサビ意識を刺激する、とてもいい演出じゃないか。

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