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NHK『ゲゲゲの女房』第52回

 辻希美が第二子を妊娠したというニュースを聞いて、そういや最近、杉浦太陽が出てこないなと思った当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第52回めの放送を見ましたよ。

* * *

「私、働きます」

 夜が明けた。
 はるこ(南明奈)に手伝ってもらったおかげで、茂(向井理)の原稿にはめどが付いた。彼女を家から送り出すときに、少しばかりの金を包んで持たせてやった。上京の頼りにしていた深沢(村上弘明)が病に倒れたことで途方にくれていた彼女だが、茂の手伝いをしたおかげでやる気を取り戻すことができた。
 朝になってやっと、はるこが少女漫画家の卵であると説明してもらった布美枝(松下奈緒)であるが、まだなんとなく釈然としない。

 完成した原稿を届けに行こうとするが、茂は発熱してまともに立って歩けなくなってしまった。代わりに届けに行くと申し出る布美枝に対して、茂は頑として譲らない。自分が少女漫画を描いていることを秘密にしておきたいこともあるし、意地の悪い出版社社長に布美枝が対応するのは不憫だとも思うからだ。
 しかし、自分は少しでも茂の役に立ちたい、原稿料を値切られるのは以前にも経験しているから大丈夫だと強く訴えた。その意気に圧された茂は、布美枝に原稿の配達を任せることにした。

 出版社事務所から、子供を背負った女性(望月寛子)が出てくるのを目撃した。出版社の春田社長(木下ほうか)の話では、自分の妻だという。自分ひとりでは家族を養えず、夫婦揃って仕事をしているのだという。村井家の苦しい台所事情を知っている春田は、布美枝はなにか仕事をしていないのかと下品に質問するのだった。

 春田は茂の原稿を一瞥し、イヤミを一言加え、裸でしわくちゃの5千円札を差し出した。茂から原稿料1万円が貰えるはずだと聞いていた布美枝は食って掛かる。しかし、新人の原稿料は規定で5千円だと言って聞く耳を持たない春田。茂にはキャリアがあるのにどういうことだろうと思い、原稿を見てみると「水木洋子」というペンネームで少女漫画が描かれてあった。春田は、茂本人が別のペンネームで少女漫画を描くというから仕事を任せたのだ、新しい名前だから新人だと言い張る。それに気圧されて、少ない原稿料を受け入れざるを得なくなった。

 帰り道、布美枝は一人涙を流す。茂が自分に仕事を隠していた理由が、あの不本意な作品にあると悟ったのだ。茂がどんなに辛く悔しい思いで仕事をしていたのかと思うと、悲しくてならないのだった。茂に心配をかけないよう、気を落ち着かせてから帰路についた。

 家では、原稿料が半分しか貰えなかったことを深く謝る。しかし、茂は意に介していなかった。あの社長はとても強欲なので、自分が行っても同じ結果だったろうと笑い飛ばすのだった。
 普段は締まり屋の布美枝であったが、今日だけはささやかな贅沢として、コーヒー豆を買って帰ってきた。早速淹れようとする布美枝を抑え、病み上がりの茂が自分で準備を始めた。コーヒー豆は少ないから自分はいらないと遠慮する布美枝であったが、出版社で嫌な思いをしてきたのだから飲む権利があると勧める茂。

 ふたりは、ここ数日のわだかまりを全て解くように、静かに本音を話しあうのだった。茂は少女漫画の決まりが悪くて言い出せず、布美枝を遠ざけていたことを白状した。布美枝は、自分は蚊帳の外なのに、知らない女性を仕事部屋に入れたことを面白くないと思っていたとはっきり伝えた。
 また、ペンネームが変わっていたことも残念がる布美枝。しかし、茂は絵さえ描ければ名前にはこだわらないのだと言い切る。その熱意を聞いて、布美枝は安心するのだった。

 その時、玄関で物音がした。

* * *


 今日の泣き笑い展開にはやられた。

 夫婦が相手のことを深く思いやるのだが、その歯車が少しずつズレて、お互いに嫌な思いをする。けれども最終的にそれまでの行動に合点が行き、両者の深い愛情を知るという流れ。おいおい、どこの「賢者の贈り物」(O.ヘンリー)だよ。
 出来すぎの感はあるが、こういうお涙頂戴は嫌いじゃないのだ、僕は。

 そして、夫婦の愛情に感動して貰い涙をしているところに、ギャグで落とす。
 茂が布美枝のコーヒーに砂糖を入れてやる。けれども、話に夢中になって、無意識に何回も砂糖を掬い、いったいどれだけ入れたのかわからなくなる。たったそれだけの、何の変哲もないギャグシーンなのだが、それまでに高まっていた緊張が一気にほぐれるので、ものすごく脱力して、思いっきり笑ってしまう。
 この緩急はヤバい。朝からこれはヤバい。今日一日、ボーッとしてしまいそうな勢いだ。

 そして、砂糖を入れすぎてめちゃめちゃにしたコーヒーなのに、自分のと取り替えてやろうとしない茂。優しいところを見せたかと思いきや、やっぱり気配りの足りないという性格付けが素晴らしい。きっと甘すぎるコーヒーなのに、おいしいと笑顔で飲む布美枝の天然気遣いが可愛い。

 冒頭で、大きなくしゃみとともに茂のメガネが飛んでいくというシーンを見たときは、「おいおい、今日の放送は大丈夫かよ」と心配になった当方ですが、それは杞憂だったようです。

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