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NHK『ゲゲゲの女房』第106回

 Amazonアフィリエイトの隠れたメリットは、予期していなかった商品の販売から俺自身が新たな情報を獲得することであり、今朝は「俺俺」(星野智幸)という小説が売れていて、説明文を読んでみたところとても面白そうで興味の惹かれた俺が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第106回めの放送を見ましたよ。

* * *
「悪魔くん復活」

 テレビドラマ『悪魔くん』の放送日。
 茂(向井理)の周囲はみな慌しく、落ち着きがなかった。布美枝(松下奈緒)は放送終了後の宴会の準備を進めていた。
 何の前触れもなく、茂の両親(風間杜夫、竹下景子)が現れた。家のテレビが壊れてしまい、買い換えるくらいなら、いっそ上京して茂と一緒に見ようということになったらしい。母親のことを苦手に思う茂であったが、今日はそのことがあまり気にならないほど喜びに満ちていた。

 いよいよ放送が始まった。人々は固唾を飲んで画面に見入った。放送は大成功だった。
 茂に縁のある人々は、成功した者も落ちぶれた者も、それぞれの場所で、思い思いのやり方で放送を見た。苦楽を共にした者たちは、茂の成功を心の底から喜び、テレビの前で惜しみのない拍手と涙を送るのだった。

 村井家では、放送終了後の宴会が始まろうとしていた。しかし、茂の姿だけが見えない。仕事場に様子を見に行った布美枝は、茂が感極まり涙ぐみながら密かに電話をかけているのを見つけた。相手は戌井(梶原善)であった。
 そもそも『悪魔くん』は戌井の出版社から出ていた作品である。売上が芳しくなく打ち切りになったが、茂と戌井は世紀の大傑作だと信じていた。それがついに全国放送のテレビ番組にまでなったのである。編集者としての戌井の目に狂いはなかったのだと、茂は真の理解者を称えるのだった。
 戌井もその言葉を聞いて、打ち震えていた。

* * *


 ご無沙汰キャラが登場し、茂の番組を見ていた。茂に迷惑をかけながら出版社を潰してしまった富田(うじきつよし)であるとか、村井家に下宿しながらも漫画家への道を諦めた中森(中村靖日)であるとか。相変わらず貧しい暮らしをしている彼らの姿は、茂の家や布美枝の実家の裕福さとは対照的で、少し胸を打つ。

 本当は茂らと一緒に放送を見るつもりだった浦木(杉浦太陽)であったが、天敵の茂母が現れて逃げ出してしまった。喫茶店のテレビで放送を見た浦木は、つい涙を流して喜んでしまった。茂の前では大きなことばかり言って強がっているが、本音では茂のことを深く愛していて、彼の成功を素直に喜ぶことができる人間なのだと明らかにされた。ちょっと胸を打つ。

 なかなか感動的なシーンのオンパレードだったのだが、一方で冷静な当方は、あからさまなお涙頂戴シーンの連続に軽く冷め始めてしまった。「はい、ここがなくところですよ~、みなさ~ん」と言っているのがありありと分かるので興ざめだったのだ。話の作りようがなくて、登場人物の泣き顔だけ写しておけばいいや、とでも言うような、脚本家の手抜きのようにも思われた。

 しかし、僕は気付いていなかった。放送を見る人々の中に戌井のシーンだけは意図的に用意されていなかった。
 茂は、番組をじっと見るばかりで、家の誰とも番組に関する話をしなかった。一緒に貧乏暮らしを耐えてきた妻・布美枝にすら言葉はなかった。
 そこへ来て、戌井に電話をかける最後のシーン。茂は他の誰でもない、戌井こそがこの作品の立役者だと認めていたのだ。彼とこそ喜びを分かち合いたかったのだ。

 脚本の手抜きなんかじゃなかった。テレビを見る人々の軽いジャブをたくさん用意しておいて、最後の最後に必殺の戌井シーンを準備していた。
 やられた。

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