エイプリル・フールでもないのに、amazon.co.jp が森見登美彦と組んで壮大なネタを仕掛けている模様。
amazon の文学・評論のページから、右にある「MATOGROSSO(マトグロッソ)」のバナーリンクをたどって欲しい。
直接リンクを張れないようになっているのが残念であり、腹立たしい。マトグロッソ配下のページにダイレクトにアクセスすると、必ず「文芸・評論」のページに戻されるようになっているのだ。しかも、RSS feed を提供しているのに、RSSリーダーからのアクセスも遮断するというトンチキぶりに激しく目眩がした。
かなり気に入らないところもあるが、「Amazon.co.jp だけで読める Web文芸誌 マトグロッソ」という自信満々のコピーに偽りはない。売れっ子小説家の伊坂幸太郎や、漫画界の大御所である萩尾望都のSF小説なども読める。どんな作家と作品が掲載しているか、アクセスは面倒だが、一度ご覧になってみることをお薦めする。
そんなラインナップの中に、当方の大好きな小説家・森見登美彦の『熱帯』という作品がある。
毎週木曜日に更新される連載で、現在1章の7話まで掲載されている。続きが気になって仕方がない一方、1週間経つとどんな話だったのか忘れてしまうような内容。だから、連載が終わった時にまとめて読んだ方が理解しやすいかもしれない。
しかし、「じゃあ、今度読むわ」とあなたに言われると辛い。今、このタイミングで僕に紹介されたのも運が悪かったと諦め、とりあえず現在公開されている7回分を読んでみて欲しい。そうしないと、この後の話を分かってもらえない。
・・・とは言え、この後の僕の文章にはネタバレでもあるので、最後まで謎を楽しみたい人は読まない方がいいかもしれない。
ただし、それほど大仰な謎でもないけれど。勘のいい人ならすぐに気づくレベルだろうし、ちょっと調べればすぐに明らかになる謎だ。けれども、中には気づかないままの人もいるかもしれない。そういう人への配慮はしておきたいと思う。
それでもなお、僕はこの話をあなたと共有したい気持ちでいっぱいだ。
とりあえず、amazon の文学・評論のページから「MATOGROSSO」をたどり、森見登美彦『熱帯』をはじめから読んで欲しい。今ここで。
読み終わってから、ここに戻ってきていただければ幸いだ。
さて、あなたは、amazon の文学・評論のページから「MATOGROSSO」をたどり、森見登美彦『熱帯』をはじめから読みましたね?
その上で、ネタバレに抵触する可能性のある文章を読む覚悟ができましたね?覚悟ができた場合のみ進んでください。
作品の中に登場する、佐山尚一『熱帯』がどのような本か、あなたも少しは気になったのではないだろうか。
その他にも、内田百閒『阿房列車』やドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』など、いつか読んでみたいと思いながらも、読まずにそのままになっている本のタイトルがいろいろ出てくる。とても気になる。
しかし、ダントツに気になるのは、やはり佐山尚一の『熱帯』だ。僕も買って読んでみようと思った。
さすがに amazon.co.jp が運営するサイトだ。ちゃんと販売用のバナーも、ページの目立つところに掲載されている。
ちゃんと販売用のバナーがある。ちゃんと販売ページもある。しかし、買うことはできなかった。
これは実在しない本だったのだ。
「佐山尚一 熱帯」でぐぐってもまともな結果はヒットしない。国会図書館(日本で出版された本は、原則として全て国会図書館に所蔵されることになっている)の検索ページで調べても、佐山尚一という人物すら存在しない。
森見登美彦の小説に合わせて、本の表紙まで作成し、販売ページを捏造した amazon.co.jp の遊び心は楽しい。