大阪拉麺食堂 大将ラーメン: イメージが大切

 15年前、僕は大学生だった。札幌市内の単身者向けマンションに住んでいた。

 ポストには、裏ビデオの通販チラシがよく入っていた。価格は3本セットで1万円。当時はモザイク修正ありのエロビデオ正規版が1万円くらいだったので、ずいぶんお買い得だった。
 ちなみに、DVDが一般に普及する数年前の話だ。

 しかし、僕はいくつかの理由により買わなかった。
 一つめの理由は、作品ラインナップは聞いたこともないような女優ばっかりだったことだ。飯島愛や憂木瞳、麻宮淳子、城あさみなどの作品があれば別だったろうが(即座に「ギルガメッシュないと」を思いついた人は名乗りでてください)。
 二つめの理由は、この手の裏ビデオはアナログ・ビデオでダビングを繰り返したせいで映像が不鮮明だと噂されていた。モザイクがかかっていないはずはずなのに、映像がひどすぎて肝心な部分を判別できない、などと言われていた。何も見えないんじゃ、買う意味が無い。

 さて、そんな感じの裏ビデオのチラシだが、販売元は「大阪書店」と明記されていた。住所も大阪市内だったし、電話の市外局番も06だった。ちゃんと「大阪」していた。
 北海道に引きこもって暮らしていた僕は、以前から大阪に対してカオスでヤクザでアヤシイくて、不道徳であるという根拠のない印象をいだいていた。だから、こういうイカガワシイ商売の拠点として大阪が挙げられていると、とても納得したものだった。

 「大阪」という文字列があるだけで、なんだか本当に裏ビデオを扱っていそうなイメージが湧いた。これが「室蘭書店」だったら、そんなことは思わなかっただろう。

* * *





 さて、本題。

 うちの近所に「大阪拉麺食堂 大将ラーメン」という店がオープンした。

大将ラーメン外観

 黄色地のど派手な看板とは打って変わって、店内はモノトーンを基調としたモダンでシックな調度だった。店内は広くゆったりとしている。50人以上は収容できそうだ。それでいて、客席も程良く離れているので窮屈な感じはしない。以前は焼肉屋の入っていた建物だが、きれいにリニューアルされているようで、とても清潔だった。なお、以前の焼肉屋に入ったことはないので、どの程度内装が変わっているかは知らない。

メニュー(クリックで拡大) ラーメンは1杯630円、チャーシューメンは840円。麺大盛りはいずれもプラス100円。
 この店の主力スープは醤油らしい。「豚骨醤油」と「熟成醤油」というスープがメニューに載っていた。詳しくは右の写真をクリックし、拡大して見て欲しい。

 しかし、僕はメニューの中から「北の塩」と「札幌味噌」に目を留めた。いずれも北海道にちなんだスープだ。僕も道産子の端くれだ。
「いやいやいやいや、ほんとにかい!? 俺が味見しちゃっから。」
と言いつつ、札幌味噌をオーダー。

 色は確かに、味噌ラーメン。具はチャーシュー1枚のほかに、モヤシと細かく刻んだネギ。さらに、とうきび(コーン)とバターが浮かべられていた。
 まぁ、確かに札幌っぽい。デフォルトで「コーンバター」になっている辺り、北海道イメージ満載だ。

札幌味噌ラーメン(大盛り)

 しかし、僕は北海道を離れて早7年。その後、仕事でも無い限り、ほとんど北海道には寄り付いていない。ましてや、北海道に行ったら、ラーメンよりも刺し身やジンギスカンを食べてばっかりだ。

 目の前にラーメンを差し出されて、僕は困った。しばらくご無沙汰していたせいで、僕は札幌ラーメンがどういったものか、ほとんど憶えていなかった。しかも、小さい頃から味噌ラーメンは好きじゃなかったことも思い出した。ますます、味噌ラーメンらしい味噌ラーメンがどういうものか、僕には分からなくなった。

 頭にたくさんの疑問符を浮かべながら、「札幌味噌ラーメン」を食べた。
 麺はやや細めのストレート。北海道の麺って、もっと太くてモチモチしていなかったっけ?スープは確かに味噌の味がする。しかし、もっと濃厚で鼻に抜けるような芳香がするもんじゃなかったっけ?なんだか、化学調味料で舌がチリチリする感覚しかない。

 とうきびとバターと味噌スープのおかげで、北海道のイメージは湧いたが、イメージ以上のものは感じなかった。

* * *


 やはり僕が学生だった頃、札幌駅前に博多ラーメン屋ができた。そこで初めて博多ラーメンを食べた僕は美味しくて感激した。しかし、九州地方に住んだ経験があって、本場を知っている人は、ちょっと違うと言っていた。
 けれども僕は、初めて真っ白なとんこつスープを飲み、カウンターに向かって「替え玉!」と言う雰囲気に酔った。

 実態はどうでもいいのだ。重要なのは、その地方に対するイメージだ。

 大阪書店の裏ビデオチラシはとても胡散臭かったが、その胡散臭さが僕らの「大阪イメージ」に合致していて、それはそれで楽しかった。受験不正としてしか知らなかった「替え玉」を、ラーメンで別の文脈で言えたことが嬉しかった。

 大将ラーメンで出された「札幌味噌ラーメン」は、道産子の僕には全然アピールしなかった。
 けれども、北海道にあまり縁のない人が、スープの上にゴロンと浮かべられたバターを見て
「さすが、北海道だね!」
と雰囲気を感じるには、全然悪くない店だと思った。


 なお、札幌味噌ラーメンを手がかりに下した僕の評価は、この店にとってフェアではないと思う。少なくとももう1回行って、今度は「熟成醤油」あたりを頼んでみようと思う。


【大阪拉麺食堂 大将ラーメン】
住所: 木津川市吐師宮ノ前14-1
営業時間: 11:00 – 26:00 年中無休
駐車場: 店の横に20台くらい



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コメント (1)

  1. この店、なくなった模様。焼肉屋の看板が出ていました。
    ほんの10日前に食べに行って、ラーメンもこなれてきた感じ(記事に書いてある北海道ラーメンはあっと言う間に消えたが)で、これから通ってもいいなと思っていた矢先なのに。

    ていうか、ラーメンやめるならアンケートに記入させるなよ。以下は、10日前に行ったときに書いたアンケート。
    http://movapic.com/almore/pic/3018457

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