女の子から男子へのプレゼントとして手編みのニット品はありがちなのに、ミシンを使った縫製品がポピュラーじゃないのはなんでだろうと不思議に思い始めた当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第21回目の放送を見ましたよ。
女たらしで有名な歌舞伎役者・中村春太郎(小泉孝太郎)と一緒に居た女性は奈津(栗山千明)だった。糸子(尾野真千子)は急いで注意しに行こうとしたが、心斎橋で騒ぎを起こすのは得策ではないと祖母ら(十朱幸代、渡辺大知)に止められた。
糸子は軽率な奈津のことに腹を立てながら家に帰った。
家に入る前、善作(小林薫)を説得しなければと、糸子は自分を奮い立たせた。父に秘密で心斎橋に通っていたこと、神戸の祖母にミシンを買ってもらうこと、そのミシンでもって洋裁講習を受けたいことなどをきちんと話さなければならないのだ。
しかし、その日はただでさえ善作は虫の居所が悪かった。糸子が自分に内緒で心斎橋に行っていたことが気に入らない。その上、糸子が神戸の親戚の世話になるということは、自分の不甲斐なさを指摘されているようでますます気に入らなかった。善作は烈火のごとく怒り出し、当然、糸子の願いは聞き届けられなかった。
その夜、糸子は布団の中で泣き続けた。自分には夢も希望もなくなったと悲しくなって泣き続けた。その声は、階下の善作にも聞こえていた。
今年もだんじり祭が始まった。
自分の将来を悲観していた糸子であったが、だんじり祭を見物するとすっかり気分が晴れた。くよくよと悩んでいるのが馬鹿馬鹿しくなるほど、だんじり祭は糸子にとって素敵なものだった。
糸子は見物客の中に奈津を見つけた。駆け寄って、春太郎との付き合いをたしなめた。当然、奈津は反発し、小突き合いの喧嘩になった。そこへ泰蔵(須賀貴匡)が止めにやってきた。泰蔵への恋心の忘れられない奈津は、びっくりして逃げ出してしまった。
その頃、パッチ店の大将・桝谷(トミーズ雅)が善作に会っていた。
桝谷は糸子を解雇したことを謝罪しながら、糸子にはたいへん見所があると褒めた。桝谷がこれまで見てきた職人の中でも、糸子は腕が立つし、将来の見通しにも明るいという。もし彼女が娘だったら、自分なぞ早々に引退して、店を丸ごと任せてしまいたいほどだと告げた。さらに、控えめで失礼に当たらないように、これからは和服ではなく洋服の時代だと善作に助言するのだった。
善作は桝谷の話を否定することはできず、何かを思いながら黙って聞いていた。
翌日、善作は木之元(甲本雅裕)に案内させて心斎橋へ出かけた。木之元は店頭をミシンの実演販売に貸した縁で、根岸(財前直見)の居所を知っていたのだ。恐る恐るミシン教室の扉を開け、善作は根岸に面会した。
昨日、女たらしの歌舞伎役者役として小泉孝太郎が登場。あまりにヘタクソな関西弁であったので、全国の視聴者は彼の演技力にただならぬ不安を覚えた。僕もひどくガッカリしていた。「父(小泉純一郎)の威光で俳優になったクソ野郎がっ」などと、テレビの前で口汚く罵ったりしていた。
ところが、そのヘタクソな関西弁自体が芝居だったらしい。
今日、糸子が奈津を問い詰めるシーンで、「ごっついニヤけた、喋り方の変な男」と言及していた。そうか、喋り方が変な男の演技をしていたんだ。くそわろた。
『てっぱん』でともさかりえがへんてこ関西弁をしゃべっていたり、『ちりとてちん』で川平慈英がハーフでバタ臭い顔立ちなのに田舎の橋工場の社長をしていた件などと同様に、ちゃんと意味があったのだな。
#長野を舞台にした『おひさま』では、登場人物が全員標準語なのに、「いらっしゃいませ」「おいしい」だけがわざとらしく方言になっていてその違和感に突っ込まれたりしていたけど。
それはそれとして。
奈津の恋愛パートに関しては、本筋とどのように絡んでくるのかよく分からず、見ていてちょっと退屈ではある。しかし、この脚本家はかなりの構成力を持っているっぽいので、この後あっと驚く展開に結びつくのだろうと楽しみにもしている。