会社の同僚から西木津に「麺屋じすり」というラーメン屋ができたと聞いた。今日の昼。
場所を聞くと、僕が週に2回は通る道沿いにあるという。2ヶ月位前に開店したとのことだが、全く気づいてなかった。
本当にあるのか?幻じゃないのか?存在を確かめるために現場へ行ってきた。
はたして店はちゃんとあった。
主力メニューは、鶏白湯らーめん(700円)と海老だしらーめん(750円)のようだ。
鶏白湯は「まったり」、海老は「がっつり」だという看板が出ていた。
僕は鶏白湯らーめん(大盛り +100円)をチョイス。麺にコシがあり、コクのあるスープとよくからんで美味しかった。
店内は狭く、テーブルとカウンターを合わせて10人も入れば満員。主人(アラフォーくらいの精悍な男)がほぼ一人で調理しているので、混んでいるとちょっと待たされるかも。
今日は、中学生くらいの男子の一団(4人)と高校生男子ペアがいて、それ以外に夫婦連れ2組がいたので満員だった。奇跡的にカウンターが1席空いていて、僕はスムーズに座れたけれど、ラーメンが出てくるまでにはちょっと時間がかかった。ちょっとの差で、5人連れの一家がやって来たのだが、店の中で待たされていた。
さらに運の悪いことに、全員がほぼ同時に入店したというタイミングらしかったのが拍車をかけた。
ただ、カウンターの初老の夫婦は餃子とチャーシューの盛り合わせをアテにビールをちびちびやっていた。あれはあれで良さそうだった。
僕も車じゃなかったら、のんびりとビール飲みたかった。
ところで、この店の目の前には駐車場がないので注意。しかも、店の目の前はバス停なので迷惑な駐停車は特に慎みたい。
ちゃんと駐車場は用意されていて、店に向かって右側、方角で言えば西に10mほど行った川沿いの空き地が駐車場となっている。
来店する際は、この駐車場を目指そう。
さて本題。
僕がラーメンを食べ終わって駐車場に向かうと、さっきの中学生くらいの一団も自転車に乗って帰るところだった。僕が車を出そうとすると、そのうち2人が残った。
スマホのライトで地面を照らし、這いつくばって何かを探している様子だ。駐車場は未舗装で、丈は短いが雑草が生えている。街灯もほとんど無いので苦心しているようだ。
僕が車を転回させると、ちょうどヘッドライトが彼らの足元を照らした。自分の良心が試されていると思ったので、しばらくそのまま車を停めて照らしてやることにした。
窓を開けて声をかけると、僕が照らしていることへの感謝とともに、お金を落としたという返事が返ってきた。
金を落とすとはただ事ではない。僕も車を降りて一緒に探してやることにした。
前述したとおり、そこには雑草が生えていて、捜索は難航した。スマホで照らすよりはマシだったが、車のヘッドライトでいくら照らしても草の生え際がどうしても影になってよく見えない。彼らは視覚だけではなく、地べたを手で探りながら一生懸命探している。
よほど大事なお小遣いを落としてしまったのだろう。不憫になった。
僕も手探りしながら、いくら落としたのか聞いてみた。すると、落としたのは「50円」だと言うのだ。
正直に言えば、僕はズッコケそうになった。たった50円のためにそこまで一生懸命になるのか、と。もうかれこれ5分くらいは雑草付き地べたと格闘しているぞ。僕ならとっくにどーでもよくなって、1分後には忘れてしまうような金額だ。
けれども、彼らは僕じゃない。彼らにとってはとても惜しい金額なのかもしれない。そう思うと不憫になってきた。思わず、僕も真剣に探しはじめてしまった。
しかし、やはり、心のどこかで「たかが50円じゃないか。こんなことに付き合ってられるかよ。蚊に刺されたらどーすんだよ」とも思うわけで。
いっその事、落とした彼に25円あげようかと思った。さっき、ラーメン屋で支払いをする時に財布を覗いたので、ちょうどよい小銭のあることも知っていた。
縁もゆかりもない彼に対して僕が25円あげると、僕はまるまる25円損したことになる。
一方、彼は僕から25円もらえるのだけれど、最初に50円紛失しているのだから、差し引きで25円を損したことになる。
「君も僕もちょうど25円ずつ失ったわけだから、これで痛み分けってことで、今夜は解散しようぜ」
と提案しようかと思ったのだ。
でもなぁ。
知らんオッサンからいきなり金を渡されるなんて気持ち悪いかもしれないし。
ただでさえ暗い場所でお金を落として慌てふためいている少年に「三方一両損」を説明したところで、ちゃんと意味を理解してくれるかどうかわからんし。
加えて、彼は50円をあんなに一生懸命探している。50円にとても重い価値を置いているのだろう。
それを、僕が「50円(や25円)なんて特に価値のあるものでもないから、君に即断であげちゃうことができるよ」みたいな態度をとると、彼のお金に対する価値や概念を破壊してしまうかもしれないし。
いろいろ迷っている間に、中学生くんは「もう諦めます。ありがとうございます」と言って、帰っていった。
やっぱり25円あげればよかったかなぁ。それともほっといてよかったのかなぁ。
模範的な良識人の行動がよくわかりません。