社会心理学研究34巻に掲載されている渡邊・城間『NHK連続テレビ小説に表れる男性役割:時代的な変遷、登場人物の年代、女性主人公との関係性による差異』を読んで、「分析対象は任意に選んだらしいけれど、なんで『てっぱん』やら『純と愛』なんだよ。その時代なら『カーネーション』だろ!」と思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』の第4回めの放送を見ましたよ。
なつ(栗野咲莉)の姿が見えなくなったことで柴田家は騒ぎになるが、泰樹(草刈正雄)がついているらしいとわかって、すぐに落ち着いた。
なつの存在を疎ましく思っている夕見子(荒川梨杏)に対して、剛男(藤木直人)は なつを引き取った理由を話して聞かせた。
戦地で剛男はいつも夕見子のことを思っていたという。おそらく、なつの父もなつに対して同じ思いでいたと推察される。結果として剛男が生き残り、なつの父が戦死したのだが、紙一重で逆の境遇になっていたかもしれない。その場合、夕見子が なつの立場になるわけである。夕見子が世間から冷たくされると思うと、剛男は胸が押しつぶされる思いである。だから なつを引き取ったというのだ。
それを聞いて、夕見子は納得した。なつに対する態度も和らげるようになった。
その頃、なつは泰樹と共に帯広にいた。帯広は十勝で一番の繁華街で、闇市も立っている。泰樹はそこで長靴を見繕い、なつに買い与えた。今履いているズックでは仕事ができないからだという。
歩きながら泰樹は、なつの東京での暮らしについて聞いた。
両親の死後、なつは路上で靴磨きをしていたという。それならば、妹・千遥(田中乃愛)の面倒をみながらできるからである。兄・咲太郎(渡邉蒼)は他所で仕入れた新聞を倍の値段で売るほか、踊りの大道芸をやったいたという。兄の言いつけで、兄妹は一切盗みはしなかったという。
現在、兄は孤児院におり、5歳の妹は遠い親戚の家に引き取られているという。兄妹が離れ離れとなるが、なつを十勝の剛男に託したのは兄・咲太郎の願いだったという。
闇市の後、泰樹が向かったのは菓子屋・雪月だった。
そこには、泰樹と同じく開拓一世の小畑とよ(高畑淳子)がいた。泰樹と とよは、まるで喧嘩でもしているかのような乱暴な言葉で話す。泰樹が なつのことを「東京から来た弟子だ」と紹介すると、とよは「人さらいでもしたのかい?」と聞き返す。なつは驚くばかりだった。
それでも、菓子屋の小畑一家は、なつのことを温かく迎えてくれた。
とよは寡婦で、現在は息子の雪之助(安田顕)が店を任されている。
しかし、戦後の物資難で菓子の材料が手に入らないばかりか、戦中の金属供出で道具まで持っていかれたので店は開店休業状態である。何も品物がなかった。
それでも、泰樹が持ってきた牛乳と卵、それに偶然手に入った蜂蜜を使って、雪之助はアイスクリームを作ってくれた。
そのアイスクリームを食べながら、泰樹はゆっくりと なつに話をした。
開拓者の口が悪いのは、そうでもしなければ厳しい開拓作業に耐えられないからだと説明した。悪気があるのではなく、言いたいことを言い合える仲間がいることで互いに助け合えるのだというのだ。そうやって開拓者たちは生き延びてきた。
それから、人はちゃんと働けば、いつか報われるときが来ると話した。
もし、働いても報われないならば、それは働き方が足りないか、働かせている監督者が悪いかのいずれかである。そんな時は、その場を逃げ出せと教えた。
それから、人を当てにすることは最悪だと諭した。自分の力を信じて働いていれば、それを見ていた誰かが助けてくれるものだと話した。
実際、この数日、なつが懸命に働いた成果が牛乳となり、それがおいしいアイスクリームに姿を変えて、今まさに なつが報われている。泰樹も なつの働きを大いに評価していると言う。立派な働き手だと評価した。
そして、もう無理に笑ったり、卑屈になったりする必要はないと諭した。これからは堂々とこの地で生きていけと応援した。
なつは涙を一粒こぼした。
帰路の荷馬車から見た夕空がとても美しかった。
やばい。ラストの泰樹(草刈正雄)の語りがグッとくる。見ながら涙ぐんだし、今まとめ記事を書きながらもう一回グスグスした。
このシーンはアレだね。
将来、大きくなった なつ(広瀬すず)は東京に出てアニメーターになるわけだけれど、職場では意地悪な先輩がいたり、同世代のライバルがいたりして、いろいろうまくいかないんだろうね。そんなときに、泰樹の言葉が思い出されて、今日のシーンが回想されるわけだよね。
それだけの価値あるわ。
というわけで、とても良いものを見れましたし、なんかこれ以上良さそうな場面は今後なさそうなので、今日を限りにまとめ記事は終了したいと思います。
当方の好物であるところの貫地谷しほりさんがアニメーター編でご出演されるそうですので、ドラマ自体は見続ける予定ですが。
次は、10月に戸田恵梨香さん主演の『スカーレット』でお会いしましょう。
ご愛読ありがとうございました。