こんな夢を見た。
Siri が暴走し、高度で邪悪な知性を獲得したiPhoneと戦うことになった。
戦場は昼日中のマクドナルド。相手より先にビッグマックを食べた方の勝ち。
敵は、周囲の善良な客をコントロールし、彼らに手分けして一口ずつ食べさせている。かなりのスピードだ。こちらは一人きり。ビッグマックで口の中がパサパサになり、思うように食べ進められない。苦戦を強いられる。
それどころか、やつは様々な機械を遠隔操作する能力も有しているようだ。フォークやナイフを僕に向けて飛ばしてくる。なんとか避けることはできるものの、ますますビッグマックを食べる速度が落ちる。
絶体絶命のピンチである。
その時、『テネット』の主人公そっくりな男が敵のテーブルに近寄るのが見えた。
彼は通りすがりの一瞬で、iPhoneを指で操作した。その瞬間、敵のナイフ・フォーク攻撃が止まった。
この好機を逃さず、僕はビッグマックを食べ切り、戦いに勝利した。
僕を助けてくれた男の姿を探したが、もうどこにも見つからなかった。
急に動きを止めたiPhoneを調べてみると、機内モードに設定されていた。なるほど、一切の通信が切断されてしまったため、周辺の機械を操作して攻撃することができなくなったようだ。
しかし、なぜこのiPhoneは画面ロックされていなかったのか?そのせいで、簡単に機内モードにされてしまったではないか。
その理由を探ったところ、恐ろしいことがわかった。
この高度で邪悪な知性を獲得したiPhoneは、カメラで撮影した人物の画像を美男美女化させる事ができた。そして、常時その画像を薄ぼんやりと、まるで画面への映りこみのように表示する機能を有していた。美化された自分の姿を見た人は気分が良くなり、知らず知らずのうちにiPhoneの言いなりになってしまうようだった。
利用者を魅了するためには、美化した画像をある程度の時間その人に提示しなくてはならない。その時間を確保するため、あえて画面ロックをせず、人々が少しの間自由に使えるようにしていたのだ。なんて巧妙なんだ。
この機能はネットワークに依存せずに動作するようだ。僕も危なく支配下におかれそうになった。すんでのところでインカメラを指で隠し、美化画像機能を回避した。
こんな危険なiPhoneは封印せねばならない。
店の裏の下水道にマンホールから投げ入れることにした。そこならば人目につかないだろうし、万が一見つかったとしても汚水まみれになったiPhoneをいじろうなんて思う人はそういないはずだ。水中では電波が届きにくいから機械を遠隔操作して自ら脱出することもできないだろう。そのうち電池も切れて無力化するだろう。充電口が濡れたままで充電ケーブルを挿したらショートするはずだから、充電もできまい。
念のため機内モードのまま電源を切り、インカメラにはマスキングテープを貼って下水道に投げ入れた。
何十年後か、未来の人々が偶然このiPhoneを発見するかもしれない。
しかし、その頃にはモバイル通信サービスやwi-fiの規格も変わっていて、ネットワークに繋がらないだろう。やつは無力化されているはずだ。
そして、『テネット』の主人公そっくりな男がこれを見つけ、未来の技術でとどめを刺してくれることだろう。