フジ『北の国から』第21回

1982年に放送された本作では当たり前のように「トルコ(風呂)」という呼称が使われているわけだが、本まとめ記事においては1984年の改名運動(wikipediaで調べる)の流れを受け「ソープランド」と言い換えているのだけれども、それはさておき、「ダッチワイフ」を「ラブドール」と呼ぶ風潮にもやっと慣れてきたと思ったら、本日iroha (designed by TENGA)を見ていて「セルフプレジャー」という言葉を新たに知って軽くのぼせた当方が、BSフジ『北の国から』の第21回を見ましたよ。

* * *

富良野の飲み屋街では、すすきののソープランドで働く女の噂が流れていた。本名は分からないが、麓郷にいた若い娘が「雪子」という源氏名で働いているというのだ。富良野の男がソープランドで出くわしたと言って、あちこちでしゃべっているのだ。

その噂は、駒草に入り浸っている五郎(田中邦衛)の耳にも届いた。そして、すぐにつらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)ではないかと疑った。五郎は駒草のママ(羽島靖子)に協力してもらい、噂の発信源の男に会うことができた。彼から話を聞き、つららであるという確信を強め、働いている店も特定した。男にはこれ以上騒ぎを大きくしないように頼んだ。
五郎はこのことを誰にも話さなかったが、清吉(大滝秀治)にだけは全てを知らせた。清吉も強いショックを受けつつ、自分に知らせてくれたことを感謝するのだった。

雪子(竹下景子)は中畑(地井武男)の製材所で働かせてもらっている。そのため、中畑の妻・みずえ(清水まゆみ)は雪子の生活について知るとはなく知ってしまうことがある。どうやら雪子が部屋探しを始めていて、五郎の家を出る気でいるらしいことに感づいた。みずえは夫に自分の推測を話した。五郎に好きな女性ができ、それに気兼ねした雪子が家を出ようとしているのではないかと話すのだった。
その推測を聞いた中畑は、五郎に話を聞くことにした。ふたりは親友だということもあり、中畑は単刀直入に好きな女ができたのかと訪ねた。こごみ(児島美ゆき)と密かに交際している五郎はドキリとしたが、中畑の前では肯定も否定もせず、表情でごまかした。五郎が恋愛に疎いと見ている中畑は、雪子が五郎に惚れている可能性を指摘した。それについては、五郎は即座に否定した。

その夜、五郎はいつものように駒草で飲んだ。つららに関する噂が真実であったことをこごみに報告した。すると、こごみも五郎と同じようにつららに同情した。
一方でこごみは、他人が思うほどには、つらら本人は惨めな思いをしていないかもしれないと語り出した。実は、こごみも東京で付き合っていた男に騙されて、体を売る寸前まで行ったことがあるのだという。その時のこごみは、全てに諦めてしまい、少しも悲しく思わなかったのだという。他人から見れば同情されるべき状況であっても、本人は意外と深刻に考えていないこともあるのだと話した。

五郎とこごみは親密になる一方だったが、純(吉岡秀隆)はこごみのことが嫌いだった。彼女のせいで五郎がだらしなくなってしまったことが気に食わないのだ。草太(岩城滉一)に人が傷つく言葉を教えてくれと頼んだ。その言葉をこごみに投げかけて、彼女が二度と自分たちに近寄らないようにしようというのだ。
ところが、草太はそれには応じなかった。男は時に寂しくなるものであり、五郎の気持ちも分かってやれと諭した。一部始終を聞いていた雪子も純をたしなめた。体の傷はすぐに癒えるが、言葉の傷はなかなか治らないものだと言って聞かせた。その上、汚い言葉は後で自分が傷つく結果になると説くのだった。純はそれ以上何も言えなくなった。

そんなある日、中畑の下で働く中川(尾上和)は、五郎がこごみの家に入っていくのを目撃した。翌日、中川は即座に中畑に報告した。実は、一時、中畑とこごみは男女の仲になっており、そのことは中川も知っていたのだ。
夜になり、中畑は五郎を呼び出した。そこで、自分とこごみの関係を打ち明けた。前年の暮れから2月頃にかけて、付き合っていたというのだ。しかし、妻・みずえに関係がばれてしまい、それを機にきれいに別れたという。中畑によれば、こごみは情が深く、気立ての良い、いい女だという。ただし、それが仇となり、哀れな男を見ると放っておけなくなるのだという。世話をやくだけではなく、誰にでも体を開くのだ。中畑は、自分たち以外にもこごみと寝た男が複数いると話した。
五郎は落ち込んだ。中畑の話を黙って聞くより他できなかった。

五郎が家に帰ると、清吉がよそ行きの服で待っていた。清吉と五郎は家の外でふたりだけで話した。清吉は札幌へ行き、つららのことを調べてきたという。物陰からつららの働いているという店を見張っていたという。午前3時ころ、本当につららが店から出てきた。麓郷にいた時とは打って変わってきれいで清潔で上品に見えたという。店で果物を買い、タクシーに乗り込んで去っていく姿は、まるで良家の令嬢のように思えたほどだ。清吉は声をかけることもできず、足がすくんで立っているのがやっとだったという。今思い出しても、ソープランドに務めている娘が、どうしてあのように堂々としていられるのかわからないと話した。

草太のボクシングの試合が近づいてきた。純と雪子はふたりで札幌まで応援に行くことになっていた。
草太は最終調整に打ち込み、精悍な顔つきになってきた。黒板家に油を売りに来ることもなくなったし、軽薄なところもなくなり、声をかけてもほとんど返事をしなくなった。純からは、別人のよう見え、とても素敵に思えた。

ランニング中に雪子と出くわした草太は、試合の前日に札幌に来て欲しいと頼んだ。草太は試合の前の日に雪子とともに札幌の街を歩きたいのだという。もし試合に負けたら、惨めな気持ちになり、たとえ雪子であっても会いたくなくなる。だから、前日に会いたいと言うのだ。
もちろん、草太は負ける気がしなかった。むしろ、勝つ以外に自分の生きる道は無いと考えていた。そして、試合に勝ったあかつきには、雪子に大事な告白をするから本気で聞いてくれと頼むのだった。それを言うと、草太はランニングに戻った。

いよいよ試合の前日。雪子は純を連れて、約束通り札幌に到着した。純は初めて見る札幌に興奮した。想像していたよりもずっと都会だったからだ。
純と雪子は、草太が用意してくれた宿で彼からの連絡を待っていた。しかし、なかなか連絡がなかった。すると、草太の代わりにコーチの成田(ガッツ石松)から電話がかかってきた。彼が夕食を共にするという。そして、草太は姿を表さなかった。

成田は、草太を叱ったという。試合の前に人に会うなどという、草太の甘えた態度に怒ったのだ。成田の考えによれば、ボクシングの試合は生きるか死ぬかの事態なのである。試合の前日は卵1個食べれればいい方で、あとは布団に包まって朝が来るのを待つものだという。成田は自分の現役時代の話を始めた。成田の実家は貧しい農家であったという。自分も含め家族全員が地面に這いつくばって朝から晩まで働いた。働いても暮らしは楽にならない。成田は、そんな暮らしから抜け出すためにボクシングに賭けた。土に這いつくばる苦しさを思えば、どんなことも我慢できたのだという。
それから、負けた選手の惨めさを説明した。それまで選手を甲斐甲斐しく世話してくれていたセコンドたちは、選手が負けるとそそくさと帰ってしまうのだという。ボクサーの手はグローブで包まれ手の自由が聞かないのに、グローブの紐すらほどいてくれないのだという。控え室に一人ぼっちになり、傷の痛さと負けた悔しさで涙が出そうになるのを我慢しつつ、後片付けをすることほど惨めなことはないと言うのだ。

食事を終えると、成田がふたりをホテルまで送った。純を先に部屋に帰らせると、成田は雪子にだけ別の話をした。草太を怒鳴ったことには、実は別の理由があったのだという。草太が「雪子のために勝つ」と言ったことに激怒したのだ。色恋のためにボクシングをするのは映画や小説の絵空事だと言うのが成田の意見だ。
それに加えて、草太がつららではなく雪子のことを念頭に置いていることがどうにも許せないのだという。つららを差し置いて雪子と札幌でデートしようとする行為に我慢がならないのだ。成田は、つららがソープランドで働いていることを雪子に話した。そのことを今夜、草太にも教えたのだという。寝耳に水だった草太は泣き崩れてしまったという。成田は草太に泣く代わりに怒れと炊きつけた。自分の不甲斐なさを自身への怒りに変え、その勢いで勝てと発破をかけた。そして、つららのために勝てと伝えたのだという。

翌日16時に草太の試合が始まった。しかし、草太にはほとんどいいところはなかった。2ラウンド1分40秒でノックアウトされて負けた。草太は意識を失い、担架で運び出されてしまった。

意気消沈した純と雪子は出口へ向かった。するとそこへつららが現れ、ふたりを喫茶店に誘った。
純は、明るく綺麗になり垢抜けたつららに驚いた。筏下りの日に富良野に来ていたこと(第18回)を言おうか迷ったが、なんとなく言いそびれて黙っていた。代わりにつららの札幌での仕事を訪ねた。すると、つららは「ファッション関係」と即答した。純はつららが美しくなったことに合点がいった。

雪子から、草太に会わないのかと聞かれると、つららは会わないと答えた。見に来ることも知らせていないという。草太とのことはすでに過去のことであり、麓郷のことは忘れたと答えた。同じく雪子から、都会での仕事は大変だろうと気遣われると、むしろ楽すぎて困ると答えた。自分には元々都会での暮らしがあっていたのだろうなどと答えた。
続けてつららは、アパートの隣の住人の話を始めた。その人はベランダでかぼちゃを大切に育てているのだという。つららにしてみれば、スーパーで金を払えば簡単に手に入るものをわざわざ育てることが不思議だったという。つららがその隣人を見ていて思ったことは、農業は人の本能なのかもしれないということだ。農家は金にならないのに、1年中天気の心配をし、汗水流して地べたに這いつくばっている。自分はもう農家の暮らしに戻るつもりはないが、農家の暮らしはもしかしたら素敵なことなのかもしれないと考えるようになったと話した。

その話を聞きながら、雪子は涙ぐんでいた。純には雪子の涙の理由がわからなかった。きっと、試合に負けた草太のことを思って泣いているのだろうと想像した。あとから聞いた所によれば、草太は控え室に運び込まれてすぐに意識を取り戻したという。しかし、俯いたきり誰とも口を利こうとしなかったらしい。
それでも純は、草太がとても素敵だと思った。彼の戦う姿に感動を覚えていた。

麓郷では、五郎と共に螢(中嶋朋子)が留守番をしていた。螢はボクシングが恐ろしくて、観戦する気になれなかったのだ。
螢は、最近五郎が富良野に出かけないことを指摘した。一人で留守番できるので、五郎が出かけても良いと言った。そして、五郎に好きな人ができても自分は平気だと付け加えるのだった。

8月20日になり、小学校の夏休みは終わった。純と螢は本校へ通い始めた。富良野はもう秋が始まりかけていた。
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五郎(田中邦衛)と中畑(地井武男)が穴兄弟(しかも、兄弟多数)であったという事実は、笑うべきところなのか、悲しんでやるべきところなのか判断に困った当方です。誰とでもすぐに寝るような女はちょっとどうかと思うものの、こごみ(児島美ゆき)は複数の男と同時進行しているわけでは無さそうだし、何よりも情が深くて気立ての良い女なんてそういないんじゃないか?よ~知らんけど。

ボクシング・トレーナーの成田(ガッツ石松)が農業が嫌でボクシングに打ち込んだという話と、つらら(熊谷美由紀/現・松田美由紀)が農業は人の本能だと語るところは、地味ながら巧妙なコントラストを描いていましたね。
成田はどうやらボクシングでは大成しなかったようで、現在それほど裕福な生活をしているわけでは無さそうだ。富良野でジムを開いている点からも、貧しさからは完全には抜け出せておらず、結局元の木阿弥になってしまっているんでしょうね。だからいまだに農業を恨んでいるように見えます。若く現役だった時代には多少羽振りがよかったのかもしれないけれど、少なくとも今は見る陰がありません。
一方のつららは、性産業でかなり儲けているように見えます。身なりが良いですし、振る舞いも堂々としていて余裕があります。都会で暮らし、完全に農業からは離れることができました。家庭菜園すらバカにしている。それにもかかわらず、どこか農業への憧憬を残しているところが涙を誘います。そして、現役を終えた成田が没落し農業を恨んでいる様子を見ると、女ざかりを過ぎたつららがどうなっていくのか、不穏な未来しか見えて来ません。悲しいです。

さて、本ドラマもあと3回で終了。明日以降は衝撃の展開ですね。
あと、今日の最後の五郎と螢(中嶋朋子)のシーンで、よく見れば画面の奥で五郎が子どもの運動靴を針と糸で修繕している。これは、これは!!(水曜日の第23話へ続く)

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