NHK『ブギウギ』第49回

昨日のマクラではSHISHAMO の『君と夏フェス』のことを書いたのだけれど、奇しくも同じく昨日、いつも使っている YouTube Music から今年僕がたくさん聞いた曲というのを知らせてきて、トップが『君と夏フェス』だったので微笑ましく思った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第49回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

鈴子(趣里)と茨田りつ子(菊地凛子)の合同コンサートは、ブルースの女王・りつ子とスゥイングの女王・スズ子の共演ということで前評判が高く、チケットは完売した。
鈴子はもちろん、彼女の楽団員たちもやる気に満ち溢れた。

コンサート当日、梅吉(柳葉敏郎)も聞きに来た。彼は亡き・六郎(黒崎煌代)がかわいがっていたカメを籠に入れて持ち込んだ。

先の出番はりつ子だった。りつ子は開演の挨拶として、歌手は歌と共に生きていると話した。何があろうと、絶望に打ちひしがれようと、歌うのだと述べた。鈴子は舞台袖からその話に聞き入っていた。

りつ子が歌い終えると、鈴子の番となった。
りつ子のような前口上はなく、静かに舞台へと進み出た。ほどなく羽鳥(草彅剛)の指揮で二村(えなりかずき)がピアノで前奏を弾き始めた。

それは、鈴子たっての願いで1曲目に選ばれた新曲『大空の弟』だった。
詞の内容は、姉が戦地にいる弟の身を案じるというものだった。ただし、単に心配するだけではなく、国を守ってくれることに感謝するというものだった。
歌詞に鈴子の名は出てこないが、弟の名は「六郎」だと明示されていた。まさに鈴子の心情がそのまま表現された歌であった。客席の梅吉も感じ入りながら聞いた。

歌っている途中から鈴子の目には涙が溢れ出してきた。歌い終わると嗚咽を漏らして、舞台上に崩れて座り込んでしまった。指揮台の羽鳥からしっかりするよう声をかけられるが、鈴子はそのまま動けなくなってしまった。
ふと客席に目をやると、六郎の幻が見えた。その六郎は、穏やかで優しく笑っていた。

六郎の幻影はすぐに消えてしまったが、鈴子は気を取り直した。
立ち上がり、大きく息をつくと次の曲が始まった。鈴子の大人気曲『ラッパと娘』である。鈴子はスタンドマイクの前から動けなかったが、その場でステップを踏み、体を大きく動かした。客は大いに盛り上がり、会場全体から手拍子が鳴った。

歌い終わると客は総立ちになり、拍手は鳴り止まなかった。
鈴子は満面の笑顔で投げキッスした。

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NHK『ブギウギ』第48回

僕はチバユウスケのファンというわけではなかったけれど、今年の7月末にバンド発表会で SHISHAMO の『君と夏フェス』を演奏することになり(その時の記事)、この曲には「私の大好きなロックスター 真夏のステージでスーツを着たロックスター」という歌詞があって、僕はそれについて、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT のことを指していると思っていて、チバユウスケやアベフトシになったつもりで真夏なのに黒いスーツで発表会のステージに上がったという経緯があるので、昨日発表されたチバユウスケさんの訃報には悲しい思いをしている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第48回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

羽鳥(草彅剛)が鈴子(趣里)の様子を見に来てくれた。
鈴子は自分の様子を正直に話した。世の中はアメリカ・イギリスとの開戦で熱狂状態にあり、鈴子もお祭りが来たような気分になっている。それと同時に、弟・六郎(黒崎煌代)の戦死の知らせを受けて葬式のような気分もずっと続いていると言う。
六郎の思い出話として、自分を慕っていつも後ろをついて来たのが可愛かったとか、亀が大好きだったことなどを話した。彼はかわいがっていたカメを鈴子に預けて出征した。戦地からの手紙でも亀のことばかり書いてきて、同じ空の下にそのカメがいると思うと元気が出るなどと言っていたことを話した。

後日、さらに羽鳥は、鈴子を自宅へ食事に招いた。
鈴子が喜んで出かけると、そこには茨田りつ子(菊地凛子)もいた。その場で羽鳥は、鈴子とりつ子の合同コンサート『二大歌手による銃後を鼓舞する大音楽会』の開催を提案した。彼女らが多くの興行主から敬遠されているのならば、自分たちでやればいいと言うのだ。こうして、12月23日に日帝劇場で開催することがきまり、ビラも作られた。

鈴子の楽団員たちも大喜びした。やっとまともな仕事ができるのだ。しかも、これが評判になることは間違いないと思われ、今後の仕事も増えるものと期待された。

しかし、そんな楽団員たちとは対照的に、鈴子は塞ぎ込んだままだった。六郎の戦死がまだ完全には受け入れられていなかったのだ。

そればかりか、梅吉(柳葉敏郎)が生まれ故郷の香川に帰ると言って荷造りを始めた。東京でやることもなく、大阪の家もなくなってしまった。そんな折、香川の幼馴染で繊維工場の跡取りから連絡があり、仕事を手伝って欲しいと言われたという。人生をやり直す好期だと言うのだ。
鈴子は引き留めたが、梅吉は聞く耳を持たない。母・ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、六郎も戦死して、家族は鈴子と梅吉のふたりだけになった。それなのに別れると言うのかと詰め寄ったが、梅吉の考えは変わらなかった。ついに鈴子は、自分と梅吉は本当の親子でないから別れても平気なのかと問うたが、梅吉は無視して部屋を出ていってしまった。

せっかく合同コンサートの開催が決まったのに、鈴子は全く歌えなくなってしまった。
思い詰めた鈴子は羽鳥を訪ねた。歌おうと思ってもいろいろなことが頭に浮かんで喉が詰まるのだと話した。

すると羽鳥は、できたばかりだという新曲の楽譜を手渡し、ピアノを弾き始めた。
その曲は『大空の弟』という題名で、鈴子から聞いた六郎の思い出を歌にしたものだという。これならば、今の心境のまま歌えるのではないかと言うのだ。
鈴子は、それをいい歌だと思った。

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NHK『ブギウギ』第47回

「福来スズ子とその楽団」のマネージャー・五木ひろきってのは演歌歌手の五木ひろしにそっくりだし、それを演じている村上信悟は関ジャニ♾️の村上信五とそっくりだし、いろいろややこしいと思っている当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第47回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

鈴子(趣里)が下宿に帰ってくると、小夜(富田望生)が困ったように無言で廊下に立っていた。梅吉(柳葉敏郎)は一人で部屋にいるようだ。
わけがわからず、鈴子は部屋に入った。

梅吉は、夕暮れの中、灯りもつけずにぼんやりと座っていた。六郎の戦死告知書が届いたのだと言う。
梅吉は何かの手違いだと思い込もうとしていた。鈴子も現実を受け入れられず、混乱した。その夜はただ茫然と過ぎていった。

翌朝、鈴子は珍しく寝坊した。
下宿大家・チズ(ふせえり)に差し出されたおむすびをぼんやりと食べ、残りを梅吉の枕元に持っていった。どういうわけか、小夜の姿はなかった。梅吉に一言だけ声をかけると、「福来スズ子とその楽団」の事務所へ出かけた。

事務所には、ひと足先に小夜が来ていた。小夜は、楽団員たちに六郎の戦死を伝えた。しばらくの間、鈴子は仕事のできる状態ではないだろうと報告した。
ところが、その矢先に鈴子が姿を現した。楽団員たちはゆっくり休むよう勧めたが、鈴子は聞く耳を持たなかった。自分の楽団なのだから、率先して仕事をするのは当たり前だとひきつった笑顔で答えた。むしろ、部屋でじっとしている方がしんどいのだと言う。しかし、楽団員たちは重苦しい雰囲気になった。
鈴子は、自分がいることでみんなに気を遣わせているのだと悟った。そう言って、帰ることにした。

帰っていく鈴子のことが心配になって、小夜は追いかけた。すると鈴子は、何もない道端に立っていた。
小夜に気づいた鈴子は、じっとしていると気がおかしくなりそうだと言って、その場で歌い出した。しかし、うまく声が出ない。体で拍子をとろうとしても、体が思うように動かない。
鈴子はその場にしゃがみこんだ。気を抜くと六郎のことばかりが頭に浮かぶのだという。彼が死ぬ時、どんな気持ちだったのか、きっと怖くて寂しかっただろう、かわいそうだと言って泣きはじめた。
小夜は鈴子を背中から抱きしめてやり、慰めた。

それから数日、鈴子は下宿の部屋で過ごした。しかし、いつまでも休んでいられないと考え、朝早くに事務所へ出かけた。まだ誰もいない事務所の掃除をした。
すると劇団員たちが次々にやってきた。

そんな中、トランペット奏者・一井(陰山泰)が興奮した様子で事務所に入ってきた。
ラジオをつけると、日本がアメリカと戦争を開始したと報道していた。その日は1941年(昭和16年)12月8日だった。
他の劇団員たちも一井につられて興奮した。

その頃、小夜は梅吉に日米開戦を知らせていた。しかし、梅吉は何も答えず、呆けたように布団で横になるだけだった。

街を歩くと、みな高揚感に包まれていた。アメリカに勝つと誰もが信じて疑わなかった。あちこちでバンザイの掛け声が聞こえた。
鈴子はそれを横目に、険しい表情で歩いていた。しかし、人々につられて一緒にバンザイを唱えた。

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NHK『ブギウギ』第46回

昨日は学生時代の同級生の@daihikoから急に難波で飲もうと誘われてしゃーねーなぁと出かけて行ってきたし、その顛末について面白おかしくここに書くことを期待されてるのかもしんないけれど書かないし、その代わりに秋山美月役の伊原六花さんがドラマの裏舞台を紹介しているYouTube動画を載せることにする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第46回めの放送を見ましたよ。

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第10週『大空の弟』

梅丸楽劇団が解散してから半年、鈴子(趣里)は「福来スズ子とその楽団」を立ち上げた。
梅丸で一緒だったトランペット奏者・一井(陰山泰)の家を事務所として使わせてもらい、大きな看板も掲げた。

ただし、楽団員は思うように集まらなかった。あちこちに声をかけたが、一井の他に見つかったのは、ピアノ・二村(えなりかずき)、ギター・三谷(国木田かっぱ)、ドラム四条(伊藤えん魔)の3人だけだけだった。それでも念願だった楽団が立ち上がり、鈴子は満足した。

楽団のマネージャーとして五木ひろき(村上信悟)も就任した。彼は梅丸の辛島(安井順平)からの紹介だった。
辛島から紹介されたことや、本人が腕利きのマネージャーを自認していることなどから、鈴子は彼のことを信頼した。彼はあちこちの劇場に売り込みをかけており、近いうちに公演予定でいっぱいになるだろうと豪語した。鈴子は期待した。また、宣伝のためにビラを配れと言われたら、鈴子は他の楽団員の分も含めて率先して配りに出かけた。

そんな矢先、事務所に小林小夜(富田望生)が訪ねてきた。鈴子が楽団を立ち上げたと聞いて会いにきたという。
梅吉(柳葉敏郎)に酒を飲ませたかどで一度追い払った経緯はあるが、マネージャー・五木から付き人は必要だと説得され受け入れることにした。当面は、鈴子の下宿先で家事をやらせることにした。

それから時が経ち、1941年(昭和16年)12月となった。
年も暮れようとしているが、鈴子たちの楽団は一度も公演をしていなかった。鈴子は適性音楽を歌っており警察の監視対象になっているという悪い噂が流れていて、公演を受けれ入れてくれる劇場がひとつも見つからないのだ。銀行から借りた活動資金も底をつきかけていた。
マネージャー・五木も諦めかけている。鈴子に人気があったのは、梅丸という大きな組織に所属し大きな劇場で派手な演出があったからだとし、今のように小規模な楽団では見向きされないのも当然だと思うようになった。仕事のない楽団員たちの間にも暗い雰囲気が漂っていた。

それでも鈴子はひとつも暗い顔を見せず、常に前向きな態度を見せた。まったく手応えがなくても、地道にひとりでビラ配りを続けた。
それでもふとした瞬間に徒労感を感じることもあった。

ある日、下宿で梅吉と小夜が仲よくカメの世話をしていた。出征前に六郎(黒崎煌代)が大事に飼っていたカメで、今でも元気にしている。
その時、役人が訪ねてきて、六郎の戦死が伝えられた。

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NHK『ブギウギ』第45回

昨日、安野モヨコ『還暦不行届」(Amazonで買う)が届いたから読んだわけだけれど、20年前に描かれた『監督不行届』(Amazonで買う)と同様にエッセイ漫画かと思って買ったのにほとんどが文章エッセイで最初は面食らったのだけれど(いくつか漫画やイラストはもちろんある)、夫・庵野秀明との滑稽な夫婦生活が面白おかしく書かれていて、その点では前作と雰囲気が同じなので読んで楽しかったし、むしろこの20年間に夫婦がそれぞれが辛い時期を過ごし一緒に乗り越えてきた深い愛情が随所に滲み出ていてすごく良かったし、なんならもう1週間早く入手して11月22日のいい夫婦の日に読むべきだったと激しく後悔した当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第45回めの放送を見ましたよ。

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第9週『カカシみたいなワテ』

梅丸楽劇団が解散してから数週間が経った。
鈴子(趣里)は何もすることがなく、下宿でぶらぶらしているだけだった。その間、一度も歌わなかった。
ふと、このままじっとしていては歌い方を忘れてしまうのではないかと恐ろしくなった。

鈴子は、楽劇団の元統括・辛島(安井順平)を訪ねた。
彼によれば、梅丸社内では鈴子を大阪の梅丸少女歌劇団(USK)に呼び戻したいという意見もあるという。そちらはまだ劇団が存続しているし、鈴子が梅丸で人気の看板歌手であることに変わりはないからだ。
しかし、鈴子はその提案をやんわりと断った。先に大阪に戻った秋山(伊原六花)からの手紙によれば、USKでも愛国ものの演目が中心となり、以前とは大きく様変わりしてしまっているのだという。鈴子はそのような状況では思う存分歌えないと言って移籍に乗り気ではなかった。

続いて鈴子は羽鳥(草彅剛)の家を訪ねた。劇団は解散したものの、羽鳥は作曲の仕事で多忙を極めているようだった。
鈴子は手短に大阪への移籍について相談した。鈴子は大阪の実家はすでに引き払われたため、特に郷愁もなくなったと説明した。そして何よりも、どちらにせよ愛国精神にのっとった演目では楽しく歌えないと話した。

羽鳥は、場所はどこでもよく、自分が楽しめる場所で歌うべきだと助言した。
その言葉に鈴子は反論した。羽鳥は今も作曲を続けるなど、どんな状況でも音楽を楽しんでいる。しかし、誰もがそうであるわけではなく、鈴子自身も現在のような状況では楽しく歌えないと訴えた。
羽鳥はいつものように飄々と、鈴子は自分と同じタイプだと思うと話した。

帰り際、羽鳥はその日行われる茨田りつ子(菊地凛子)の公演の招待券をくれた。羽鳥は仕事が忙しくなって行けなくなったので代わりに行って欲しいというのだ。

そのまま鈴子は茨田りつ子の公演に向かった。りつ子は「茨田りつ子とその楽団」という名義で、自分で雇った楽器演奏者数名を従えていた。客席数はせいぜい20-30しかなく、梅丸の劇場とは比べ物にならない規模だったが、満席だった。
警察官から検閲されていたが、りつ子は自分らしい公演をやり遂げた。鈴子は強く心を掴まれた。

終演後、鈴子はりつ子の楽屋を訪ねた。自分の感動を正直に精一杯伝えた。
しかし、りつ子はいつものように冷ややかに対応した。りつ子は独立して自分で楽団を抱えており、大きな会社に雇われている鈴子とは覚悟が違うと話した。誰からどんなことを言われようと、必死に自分の歌を歌うしかないのだという。今のような時局では、いつ歌えなくなるとも限らない。だから必死なのだと話した。
鈴子にも自分で好きなように歌えばいいと話した。

帰り道、鈴子は伝蔵(坂田聡)のおでん屋台に寄り道した。酔い潰れているだろう梅吉(柳葉敏郎)を迎えにこうと思った。ついでに、梅吉が起こした喧嘩騒ぎのことを伝造に謝らなくてはならないと思ったからだ。
はたして、梅吉はやはり屋台で酔い潰れて眠っていた。

梅吉は喧嘩の理由を一切話さない。訳はわからないが、鈴子はひとまず伝蔵に騒動を謝った。
すると、伝造が一部始終を教えてくれた。たまたま隣の席で飲んでいた二人連れが梅丸楽劇団の解散について話し始めたのだという。特に、鈴子が棒立ちで歌うようになって全くつまらなくなった、もう歌手として終わりだなどと悪口を言ったのだ。それを聞いた梅吉は激昂し、殴りかかったのだと言う。

温和で暴力を振るうような人間ではない父が、自分のために人を殴ったと聞いて鈴子は嬉しくなった。
目を覚ました梅吉は酒を所望した。ずっと酒浸りの父を腹立たしく思っていた鈴子だが、この時ばかりは酒を飲むことを許した。
そして、ふたりで亡きツヤ(水川あさみ)の思い出話をした。彼女がどれだけ鈴子の歌が好きだったかと語り合った。
ふたりは仲直りし、鈴子はツヤのためにも歌い続けることを決意した。

ある日、鈴子は梅丸楽劇団のトランペット奏者兼バンドマスターだった一井(陰山泰)を訪ねた。彼にまだ新しい所属先が決まっていないことを確認すると、鈴子は彼に新しい仕事を提案した。鈴子は「福来スズ子とその楽団」を立ち上げることにしたと説明し、そこに参加してほしいと頼んだ。
一井は二つ返事で応じた。

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NHK『ブギウギ』第44回

堀内孝雄の『君のひとみは10000ボルト』に遅れること45年、元KISSAce Frehley が “10,000 Volts” という曲を出したことを知った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第44回めの放送を見ましたよ。

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第9週『カカシみたいなワテ』

梅丸楽劇団の団員たちに次々と召集令状が届いていた。音楽監督の羽鳥(草彅剛)は楽器が減った分を編曲で補う作業に追われ、夜も眠れないほどだった。それでも羽鳥は苦労だとは感じず、どこか楽しんでいる風でもあった。何があっても音を鳴らし続けるのが自分自身や楽団の使命だと捉えていた。

そんな羽鳥に対して、鈴子(趣里)はもどかしさを感じていた。自分には編曲作業を手伝うことができない。そればかりか、ステージで大胆なステップを踏むことが禁じられ客足が遠のいているのに、何も打開策を打てないでいるからだ。

羽鳥の新曲レコード『湖畔の宿』は、当局から貧弱で女々しい曲であり時局にそぐわないと評された。当局からあまり目をつけられたくないレコード会社は、この曲の宣伝を自粛するなどしていた。
一方、同じく羽鳥の作った『蘇州夜曲』は大ヒットしていた。

そこで鈴子は、羽鳥に『蘇州夜曲』を歌いたいと直談判した。この曲調ならばステップを踏んで歌う必要がないし、客ウケもよいと考えたのだ。
しかし羽鳥は許可しなかった。今まで通りの曲目や演出で続けるべきだと言うのだ。各楽器の担当者が減った分は、羽鳥が編曲の工夫で補うと言う。どんな状況になろうとも音を出し続けることが楽団の使命だと言うばかりだった。

鈴子はこのままでは梅丸楽劇団の存亡も危ういと思い、ますます不安になった。
すると羽鳥は、『ラッパと娘』の伴奏を弾き始めた。鈴子が大胆にステップを踏んで、人気を博した曲である。不安に押しつぶされそうになっている鈴子に対して、羽鳥はこの場で歌うように促した。
鈴子は、ふたりきりの練習室で思う存分歌い踊った。鈴子は久しぶりに体を大きく動かし、音楽の楽しさを再認識した。

しかし、梅丸楽劇団は客入りを取り戻すことはできず、解散することになった。
羽鳥はいつものように飄々とした態度で、またいつか再集合して演奏しようと呼びかけた。けれども、楽団員たちはそんな羽鳥を冷ややかに見ていた。羽鳥ほどの作曲家ならば今後も仕事があるだろうが、単なる劇団員たちには次の仕事のあてがなかったからだ。他の楽団も状況は似たような者で、バンドマスター兼トランペット奏者の一井(陰山泰)ですら廃業を考えざるを得ないほどなのだ。
こうして劇団は2年に渡る歴史に幕を閉じた。

その頃、鈴子は梅吉(柳葉敏郎)と仲違いしていた。梅吉の自堕落な生活に鈴子は我慢できなくなったのだ。ふたりは全く口を聞かなくなった。寝室も別々となり、梅吉は下宿屋の居間で寝るようになった。大家のチズ(ふせえり)は迷惑だから早く仲直りしろと促すが、双方とも譲歩しようとはしなかった。

梅丸楽劇団が解散した日、鈴子が下宿に帰ってくると、梅吉が酔って喧嘩をして警察に捕まったとチズから聞かされた。
慌てて警察署に行ってみると、梅吉はすぐに釈放されたものの、喧嘩の原因については一切話そうとしなかった。ふたりの関係はますます悪化した。

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NHK『ブギウギ』第43回

富田望生の出演作といえば、清原果耶演じる主人公と人格が入れ替わる『宇宙を駆けるよだか』を真っ先に思い出す当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第43回めの放送を見ましたよ。

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第9週『カカシみたいなワテ』

小林小夜(富田望生)と名乗る田舎娘が押しかけてきた。鈴子(趣里)の歌に憧れており、弟子にしてほしいという。
鈴子は弟子をとるつもりはなかったが、小夜には行くあてがないと聞いて、仕方なく次の行き先が見つかるまで自分の下宿に居候させてやることにした。期間は1週間程度だろうと思い、大家のチズ(ふせえり)の了承も得た。

鈴子は、自分が仕事に行っている間、小夜に家事と梅吉(柳葉敏郎)の世話を任せることにした。
仕事に出かける直前、小夜に食費として現金を渡した。ただし、梅吉には絶対に酒を飲ませるなときつく言いつけた。

小夜と梅吉は赤の他人であったが、初対面からとても仲良くなった。
小夜は12歳の時に親に捨てられ奉公に出された。奉公先の主人は、梅吉とは比べ物にならないほどの粗暴な人間だったという。それに比べれば、梅吉はずっと紳士的な人物に思えた。
梅吉も、小夜の明るい性格を気に入った。冗談を言えば、小夜は当意即妙に答えてくれる。
梅吉は、小夜のことを本当の娘のように思い、自分のことを「お父ちゃん」と呼ぶことを許した。小夜も素直にそれを受け入れた。梅吉は、六郎(黒崎煌代)が戦争から帰ってきたら小夜と結婚させることを決めた。小夜はそれもまた喜んで承諾した。

その日、団員のひとりが梅丸楽劇団を辞めることになった。召集令状が届いたのだ。
警察の指導により地味な演出しかできなくなり、近頃では客足も目に見えて減っていた。

このままでは経営が成り立たず、劇団は解散の危機にある。
鈴子は劇団統括・辛島(安井順平)に、警察の指導に従っていては取り返しがつかなくなると訴えた。警官に賄賂を渡してでも元通りにする必要があるというのが鈴子の意見だった。
しかし、辛島によれば劇団の演出に眼をつけているのは警察だけではないという。市井の人々からの投書がおびただしい数になっていると言って、その山を見せた。旗揚げの頃から派手な演出に対する苦情の声は少々あったが、最近では数えきれないほどになったのだ。
梅丸楽劇団に目をつけているのは警察だけでなく、一般の人々も同様なのだ。辛島自身もどうすればいいかわからないという。

鈴子は重苦しい気分で下宿に帰ってきた。
すると、表に聞こえるほどの大声で小夜の歌う民謡が聞こえてきた。小夜の居候を認めた大家・チズも迷惑していた。昼間からずっと騒ぎっぱなしなのだという。

鈴子が慌てて部屋に入ると、梅吉は酒を飲んで酔っ払っていた。出がけに、梅吉には絶対に酒を飲ませるなと命じたはずなのに、それが守られていなかった。
梅吉は、自分が頼んだのだから小夜の責任ではないと弁護した。さらに、六郎と小夜を結婚させることも決まったと話した。
小夜も梅吉の調子に合わせて上機嫌だった。六郎の妻になるのが楽しみだと話した。

鈴子は静かに怒りながら、小夜に出ていくよう命じた。
小夜はつい昨日までは歌手になりたいと言っていたのに、今は人妻になることを楽しみにしている。梅吉に酒を飲ませないという約束も守れない。そのような人間は信用できないからだ。
小夜はそれ以上は弁明せず、頭を下げると下宿を出て行った。

梅吉は、鈴子を冷たい鬼だとなじった。小夜に身寄りがないことを知っていながら放り出したからだ。
鈴子は反論した。このような結末になったのも、梅吉がだらしないからである。酒を飲んでは寝るばかりの毎日だからである。もっとしっかりしてほしいと叱った。
亡くなったツヤ(水川あさみ)ならば梅吉のことだけを考えて暮らすこともできただろうが、鈴子には歌手として人前に出るという仕事がある。梅吉の世話だけをしているわけにはいかないのだと告げた。

鈴子は、ツヤを失ったことを言い訳に梅吉が自堕落な生活をしていることが許せなかった。鈴子も梅吉を同じくらいにツヤの喪失に心を痛めているのに、自分は立ち直ったふりをして、梅吉だけが特権のように悲しんでいることをずるいと思うのだった。

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NHK『ブギウギ』第42回

昨夜は『ミワさんなりすます』の25話Reiちゃんさんを見たし、今日はReiちゃんさんのニューアルバム『VOICE』がAmazonから届く予定だし、明日はBillboard Live OSAKAでReiちゃんさんのライブ『JAM! JAM! JAM! 2023』を聞きに行く予定の当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第42回めの放送を見ましたよ。

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第9週『カカシみたいなワテ』

警察から、舞台の3尺四方の枠内で歌うように指導されたにもかかわらず、客を楽しませるために鈴子(趣里)はその決まりを破って歌った。そのせいで公演は途中で中止され、鈴子は警察署で取り調べを受けた。反省する態度を示したため、鈴子はすぐに釈放された。

鈴子と入れ替わりに、茨田りつ子(菊地凛子)も警察に呼ばれていた。彼女が警察に呼ばれるのは5回目で、全く反省せず、反抗的な態度を改めないという。どんなに指導されても演出を変えようとしないばかりか、普段着も華美な服装のままだった。
警察に鈴子を迎えにきた羽鳥(草彅剛)は、茨田りつ子のことを面白がっていた。彼は鈴子の無事を確認できたので、りつ子の取り調べが終わるのを待つと言う。

鈴子は、同じく迎えにきた劇団統括・辛島(安井順平)と一緒に帰った。
辛島は、警察の指導に従うよう改めて釘を刺した。茨田りつ子はどの劇団にも所属せず、楽団も自分で雇うなど独立してやっている。だから、最終的にはりつ子本人の責任で片付く。一方の鈴子は、梅丸楽劇団に所属しており、鈴子が問題を起こすと劇団全体の存亡に関わる。ゆえに、りつ子のようなわがままは控えるようにと注意した。鈴子も納得せざるを得なかった。

次の公演では、鈴子は命じられた通り、決められた枠内から一歩もはみ出さずに歌った。鈴子のトレードマークであるつけまつ毛も半分以下の長さにした。

公演を終えると、控え室に茨田りつ子が現れた。羽鳥に招待されたのだという。りつ子はいつも通りに派手な私服に身を包んでいた。劇場の途中で婦人会に注意されたが、逆にこれは自分の戦闘服だと言い返した。

りつ子は鈴子に向かってつまらない公演だったと無遠慮に述べた。鈴子は突っ立ったままで、まるでカカシのようだったと言うのだ。警察の言いなりになるばかりで、つまらない歌を聞かされる客が気の毒だと愚弄した。いやいや歌うのならやめてしまえとまで言い放った。
鈴子は、もっと自由に楽しく歌いたいのだが仕方ないことだと言い訳するが、りつ子は冷ややかな目で見て帰って行った。

それと入れ替わりに、小林小夜(富田望生)と名乗る田舎娘が、係員の静止を振り切って控え室に飛び込んできた。鈴子の弟子にして欲しいと言うのだ。小夜によれば、鈴子の歌を聴くと辛い気持ちが楽になり、楽しいはずなのに涙が出るという。これまで歌の勉強をしたことはないが、自分も鈴子のような歌手になりたいと訴えた。

鈴子は、弟子を取るつもりはないので諦めろと告げた。
しかし、小夜は身一つで上京し、行くあても金もないと聞いて情にほだされた。弟子にはしないが、自分のところに居候させることにした。

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NHK『ブギウギ』第41回

今朝も寒くてなかなか布団から出られず、朝ドラ見れない危機に遭遇したんだけれど、なんとか乗り切った当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第41回めの放送を見ましたよ。

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第9週『カカシみたいなワテ』

1940年(昭和15年)、ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、鈴子(趣里)がが父・梅吉(柳葉敏郎)と東京の下宿で暮らし始めて1年が経った。
初めの頃こそ梅吉は映画の脚本で一旗上げるのだと張り切っていたが、今ではそれも放り投げ、酒浸りの日々になってしまった。日が暮れるのを待ち構えるように伝蔵(坂田聡)のおでん屋台に出かけて行き、しこたま飲んで酔っ払って帰ってくる。部屋に戻ることができず、玄関前の路上で夜を明かすこともしばしばだった。朝、鈴子が劇場に出かける時に見つかるといった始末である。鈴子は心配はするものの、すぐにどうすることもできなかった。

梅丸楽劇団にも大きな変化が訪れていた。
戦争が激しくなるにつれ国内は軍事優先となり、贅沢が禁じられる法律も布告された。梅丸楽劇団は公演を続けていたものの、より大きな制限を受けるようになった。
警察が舞台演出の監督をするようになり、より愛国精神に則った公演をするよう指導された。派手な演出や演奏は全て取りやめる他、楽器の名称など専門用語にも外来語を使うことが禁じられた。団員たちは反発したが、警察官に一喝されると大人しくなった。

鈴子は派手な動きを禁じられた。舞台の上に3尺(約90cm)四方の目印が付けられ、その中から出ずに歌うことを命じられた。鈴子は全身を大きく動かし、動き回ることで拍子をとる癖がついていた。それが禁じられたので難儀した。

鈴子のダイナミックな歌と踊りを楽しみにしていた客たちも、ほとんど動かない鈴子を見てガッカリした。その様子を舞台で感じ取った鈴子は、目印を超えていつも通りに歌い出した。客は一気に盛り上がった。
しかし、監視していた警察官がすぐさま警笛を吹き、即座に公演が中止させられた。客は中途半端に終わった不満を口にしながら帰って行った。

鈴子は警察署に連れて行かれ、取り調べと説教を受けた。
鈴子は大きな動きが自分の持ち味だと弁明したが、一切受け入れられなかった。それどころか、3cmあるつけまつ毛の使用も禁じられた。改めなければ、今後の公演も差し止めると脅された。鈴子は渋々受け入れ、やっと帰宅する許可が出た。

警察署内を歩いていると、茨田りつ子(菊地凛子)が警察官に連れられて歩いてきた。彼女は何度指導されても派手な化粧や衣装を改めないという。そればかりか、自分は客に夢を与える歌手だから帰るつもりはないと口答えばかりしているという。鈴子は、警察官からあのようにはなるなと釘を刺された。

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NHK『ブギウギ』第40回

先日、ある人が飛び石連休のことを「飛び級連休」と言い間違っていたんだけれど、周りの誰も突っ込まなかったし、僕もスルーしたんだけれど、どうにも気になったので本人にはきっと見つからないここに記しておく当方が、NHK朝の連続テレビ小説『ブギウギ』の第40回めの放送を見ましたよ。

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第8週『ワテのお母ちゃん』

ツヤ(水川あさみ)の葬儀が終わった。梅吉(柳葉敏郎)は、ツヤはしみったれたのが嫌いだったと言って、賑やかに騒いだ。

葬儀が落ち着くと、次は経営するはな湯のことを考えなければならなくなった。実は赤字続きで、このままでは経営が成り立たないのだ。ツヤの治療費にも出費がかさんだという事情もある。鈴子(趣里)は、銭湯は少なくとも閉店、もしくは売ってしまうしかないと考えていた。梅吉のことは、自分が東京に連れて行って面倒をみると言う。
しかし、梅吉は承知しなかった。はな湯を亡き妻・ツヤの象徴のように考えていたからだ。

鈴子と梅吉が相談していると、使用人・ゴンベエ(宇野祥平)が貯金箱を持ってやってきた。彼には食事が賄われていたので、もらった給料を使うあてがなかったという。だから、一銭も使わずに全て貯めてあった。その金を銭湯立て直しに使って欲しいと願い出た。
ゴンベエの貯金は200円だった。しかし、鈴子の試算によれば、その倍の400円が必要だった(この金額、覚えておいてください)。鈴子はゴンベエに感謝しつつも、申し出を断った。

いよいよ閉店が決まり、鈴子は常連客たちに説明をした。
そこへ、三沢光子(本上まなみ)と名乗る見知らぬ女がゴンベエを訪ねてきた。
光子によれば、ゴンベエの本名は伊福部玉五郎といい、舟場の大きな呉服屋の若旦那だったのだという。親を早くに亡くし跡をついだものの、悪い取り巻きに食い物にされ大きな借金を作った。それを苦にして川に飛び込んだという噂を最後に消息がわからなくなったと話した。
ゴンベエがはな湯に来た時にはすでに記憶喪失で、彼の過去については一切わからなかった。しかし、ゴンベエは道頓堀で溺れているのを梅吉が助けた経緯があり、光子の話はそれと一致していた。

光子は、前日から神戸の旅館で働き出した。そこに尋ね人の貼り紙があり、その似顔絵が自分の知る玉五郎にそっくりだったので訪ねてきたのだいう。その張り紙は、ずいぶん前にツヤが作成してあちこちに配ったものだ。鈴子と梅吉は不思議な縁を感じた。

光子は以前からずっと玉五郎に心を寄せており、再会できたら結婚しようと願っていたという。そのための資金として、200円の貯金も作ったとはなした。一緒に人生をやり直して欲しいと願った。
ゴンベエは、昔の記憶は無くなってしまったが、こんな自分でよければ結婚して欲しいと応じた。さらに、自分と光子の貯金を合わせれば400円になる。それで一緒にはな湯を引き継ぎたいと話した。
光子は、玉五郎の願いなら喜んで承知すると答えた。こうして、ゴンベエと光子がはな湯を引き継ぐことになった。

鈴子と梅吉は、ツヤの貼り紙が奇跡を起こしたことに感激した。
一方で、梅吉は鈴子と一緒に東京へ行くことを承諾した。確かにツヤの思い出のたくさんあるはな湯は離れ難いが、ツヤのいないはな湯に自分だけがいても仕方ないと言うのだ。

こうして、梅吉は鈴子とともに東京へ向かった。

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