「木の都」(織田作之助)

先日、織田作之助の「夫婦善哉」を求めて本屋さんを回ったのだが、なんだ、青空文庫に収録されてるんじゃん。

そうとは知らず、今日は「木の都」を読んだ(青空文庫で「木の都」を読む)。


お話は、小さい頃に育った大阪の街(上町あたり?夕陽丘というところらしい)を久しぶりに訪れて、懐かしい思いをするところから始まる。
口縄坂の中腹には女学校があって、そこのおねぇさんに憧れちゃった若気の至りとか。

昔懐かしい店もたいてい残っているのだが、よく通った古本屋がなくなっていた。
その古本屋のかわりに、レコード屋ができている。
そこの店主ってのが、京都に住んでたときに世話になった洋食屋の主人で、妙な再会を果たす。

そして、その旧洋食屋、現レコード屋の家族の器用なんだか不器用なんだかよくわからない家族愛が描かれる。

短いからサクッと読めるし、大阪の下町に行ってみたくなるし(話の舞台が現在も残っているのかはわからん)、ふるさとが懐かしくなるし、いいお話だと思った。

新坊が帰つて来ると私はいつもレコードを止めて貰つて、主人が奥の新坊に風呂へ行つて来いとか、菓子の配給があつたから食べろとか声を掛ける隙をつくるやうにした。奥ではうんと一言返辞があるだけだつたが、父子の愛情が通ふ温さに私はあまくしびれて、それは音楽以上だつた。

父子の愛情にあまくしびれて、音楽以上だってよ。
このフレーズ、心のメモ帳に書きとめた。

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