「源氏物語」に思う。思わざるを得ない。

先日、本屋の店頭で気を失い、瀬戸内寂聴の「現代語訳 源氏物語(一)」を購入したところで気がついた。
しかも、単行本版。家に帰ってきて amazon で調べたら、半値で文庫版が出ていることを知って、再び気が遠くなった。
気を取り直して、2巻以降は文庫版を買うことにした。

そんなわけで、「源氏物語」なのである。
当方にとっての源氏物語といえば、高校の時の国語の教科書に「桐壺」の冒頭部分が掲載されており、そこを授業で勉強したのがほとんどである。

追加知識としては、
「光源氏はロリコンで、かわいい幼女を引き取って育て、年頃になったら美味しくいただいちゃう。そのくせ、ほかの女性にもモテまくりで、あっちこっちでヤリまくり。」
といった、どう考えても青少年の健全な育成には好ましくない表現がふんだんに使用されているわけだが、物語の本質を突いていないような、突いているようなものである。

こんな自分の知識が、果たして正しいのか否か、きちんと見定める必要がある。
そんなわけで、源氏物語を読み始めたわけである。


国語の教科書で読んだ古文体と異なり、やはり現代語役は格段に読みやすい。

しかし、確かに日本語としてはわかるわけだが、時代背景やら官位の名称やらがわからないので、実は話の意味はよくわからない。
たとえて言うなら、麗しい美女であるあなたが合コンに参加し、相手の男たちがガンダム話で勝手に盛り上がって、日本語だということはわかるのだが、話している内容がまったくわからない、アノ感じである。

「帚木」の途中まで進んだ時点で、当方、ついにギブアップ。
なお、わからない人のために説明しておくと、「帚木」とは源氏物語全54帖のうち、2つめである。
そのダメっぷりが容易に想像できるだろう。

そんなやさき、出口汪の「源氏物語が面白いほどわかる本」っつーのがガイドブックとして最適という情報を得たので、そちらに浮気してみる。

「この尻の軽さは、まるで光源氏が女から女へ渡っていくようだ。俺も光に一歩近づいた!」
と、なんだかよくわからない、けど、きっとダメそうなつぶやきをしたとか、しなかったとか。

同書は、源氏物語のエッセンスをうまく抽出してストーリーを教えてくれるだけではなく、当時の時代背景や、現代とは違う当時の人々にとっての常識などを丁寧に説明してくれるので、ものすごくわかった気になれる。

確かに、光源氏はヤリまくりだ。
しかし、当時の時代背景を考えると、政略結婚が全盛だったのだ。
権力者の娘とねんごろになることは、その娘の父親の権力を後ろ盾として得ることに等しく、貴族社会で生き抜くためには仕方のないことだったのだ。
現代のサラリーマンが上司に取り入るために飲みたくもない酒を飲むのと同じように、当時の貴族は権力者に取り入るためにその娘と結婚するわけだ。
そう考えりゃ、光のヤリまくり生活もある意味「仕事」なのだ。
#うらやましい仕事だけどね。

でもー、でもー、光を見ていると、没落貴族の娘とも平気でヤッちゃうから、ありゃあただの女好きだと思うけどなぁ。

光の女好きはとりあえず置いておくとして、女性のほうもそんな貴族社会のカラクリを知り尽くしているので、夫の浮気にもそれほど目くじらを立てないし。
#ちょっと拗ねたりはするけど。

光源氏のロリコン嗜好の対象であり象徴たる若紫にいたっては、光がよその女に産ませた子供を実の子のように可愛がって育てるようだし。
#若紫自身には子供ができなかった。
人間ができてる > 若紫

さらに人間ができてる点は、光がよその女に会えないことを寂しく思って、妻である若紫に愚痴愚痴言ってみたり。
すげぇ世の中だなぁ。
現代の恋人同士や夫婦で、そんなことが許されるだろうか。いや、許されない(反語)。
かなり衝撃である。
これで世の中が回っているんだから、びっくりだ。
#当方は、とある恋人さんに昔の女の話をして、ものすごく怒られた経験があるとか、ないとか。

結局、「源氏物語」(のガイドブック)を(途中まで)読んで、何を思ったかというと、
「所詮、大昔の常識に基づいた話だし、その上フィクションだし、光の行動を参考にしても、俺はちっともモテねぇだろうなぁ」
という、悲しい事実である。

ついでに言うなら、・・・(以下、自粛)。

コメント (4)

  1. Felice

    現代語訳にしてわかりやすく背景も描写するのって多分すごく難しいんでしょうね。橋本治の「桃尻語訳・枕草子」はその面でうまくクリアしていたと思います。でも、わたしは読んでいないんですが、治ちゃんの「現代語訳・源氏物語」は割と不評ですね~~。
    そんなわたしの「源氏物語」の知識は寂聴・谷崎以前に少女漫画「「あさきゆめみし」(大和和紀)からです。人物の描き分けがあんまりないので少女漫画を読み慣れていないと見づらいかもしれませんが、衣装や建具などは相当細かく調べて描いているので、当時の雰囲気は伝わってきます。

    それと、当時の貴族女性が夫の浮気に寛容だったということはないと思います。若紫は実家がなく、後ろ盾がないから受け入れざるを得ないという背景だったような?
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9C%BB%E8%9B%89%E6%97%A5%E8%A8%98
    「源氏物語」より前に書かれた「蜻蛉日記」には激しい嫉妬や苦悶が綴られています。

  2. 木公

    「あさきゆめみし」は、学生時代に住んでいたマンションの古紙回収コーナーに捨てられていたのを拾ってきて読んだことはあります。
    しかし、序盤の数冊のみで、しかも歯抜け状態だったので話がよくわからず断念しました。
    そして、ご指摘のとおり、人物の書き分けが不明瞭で、ますます混乱しました。
    それっきり、読み直していないのです。

    確かに、夫の浮気をまったく意に介さないということはなかったでしょうし、激しい嫉妬をする人もたくさんいますよね。
    そもそも、弘徽殿女御らが桐壺に激しく嫉妬するくだりから源氏物語は始まっているわけですから。
    #僕の本文の書き方が、「女性はまったく嫉妬しない」という方向にミスリード気味だったかもしれない。

    若紫に関しては、光源氏と明石の君の間に生まれる娘を非常に可愛がるくだりがあり(自分は乳が出ないのに、娘に乳首をあてがう)、それをもって「わりと寛容」と書きました。
    とはいえ、若紫ももちろん、光源氏の浮気に結構グチグチ言ってますよね。

  3. ema

    私は田辺聖子版(宇治十帖除く)を、文庫本三冊で読みました。

    他の方の源氏物語を読んでいないので、比較にはなりづらいですが
    全エピソードは載せずに、かいつまんでの収録だったので
    何とか読み終えることができましたよ。

    ただ上記のようにエピソードすっ飛ばしで、よく分からなくなったり
    することも度々アリ、都度wikiに頼る始末・・・。

    あれだけ女性関係に活発だった光君も、振り返ってみれば
    子供はたったの3人、うち一人に対しては親子の名乗りを
    あげることも出来ず仕舞。紫の上との間には、子供に恵まれず
    何とも因果な人生だったと思います。

    余力があれば、谷崎版にチャレンジしてみたい今日この頃。。。

  4. 木公

    谷崎版!
    確かにl、あのエロ作家が源氏物語を訳したものは、いろいろと気になります。

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