映画を見る数日前には、浅田次郎の原作(『鉄道員
当然、映画と原作を比較してみてしまうわけで。
僕は、原作を読めば十分だと思う。
映画だと1,800円ほど払って2時間も拘束されるわけだが、原作は文庫で500円だし30分もあればサラリと読める。
コストパフォーマンスで比較すれば、明らかに原作だ。
ただし、コストパフォーマンス以外に映画版と原作で大きく異なる部分がある。
それは、主役夫婦の違いだ。
映画では宮沢りえと加瀬亮が演じる、オリヲン座の館主に焦点が当てられ、彼らが如何にして映画館を引き継ぎ、不純な男女関係を近所から白い目で見られ、貧乏に耐え、映画ファンの子どもを愛しみ、映画産業の斜陽に巻き込まれ、ついに閉館を決意したか、そしてどれだけ互いに惹かれていたかが描かれる。
それはそれで、お涙頂戴のプラトニック・ラブストーリーとして成り立っている。
しかし、原作を読んだ身にとっては、上っ面だけの底の浅いありがちな物語に堕落してしまったとしか思えない。
原作では、子ども時代にオリヲン座に通っていた幼馴染の夫婦が狂言回しにされている。
その夫婦に焦点を当てつつ、あぶり出しのようにオリヲン座の館主夫婦の絆を描きあげた点こそが、この作品の魅力なのに。
はじめっからオリヲン座夫婦の関係をダラダラ見せたって、興ざめがするだけだ。
ちなみに、原作で主役になっている夫婦は映画にも登場し、田口トモロヲと樋口可南子が演じている。
ほとんど、いてもいなくても同じような扱いになっており、僕は大変失望した。
どこにもヒネリが利かず、完全に一本調子で退屈な映画だった。
唯一、映画の見所は、宮沢りえがふらふらと自転車に乗るシーン。
映画「明日に向かって撃て」でポール・ニューマンとキャサリン・ロスが自転車を乗り回すシーンが大好き(あのBGMも大好きだ)な僕であり、自転車シーンのプチ・フェチの僕にとっては眼福だった。
それ以外は、原作で十分なり。
追記:
「明日に向かって撃て」の自転車シーン、簡単に見つかった。
ついでに「雨にぬれても」の1人リコーダー四重奏もちょっと感激。