第1章: 経済学の十大原理 (マンキュー経済学)

『マンキュー経済学』 第1章まとめ

【経済学とは何か】
世の中の資源には限りがある(希少性)。そのような希少な資源をどのように管理するかを扱うのが経済学。
そのため、個人がどのように意思決定するのかとか、人々がどのように物を交換するかとか、世の中全体にどんな現象が起きるかとかを対象にする。

【経済学の十大原理】

経済学の考え方は、古今東西いろいろある。しかし、ほとんどの経済学者達が、「およそ、これは間違いない」と認めている考え方がある。
それをマンキューは「経済学の十大原理」としてリストアップしている。

―― 人々はどのように意思決定するか ――

第1原理: 人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している。

人々は意思決定をするときに、ある目標と別の目標との間のトレードオフに直面する。何かを得るためには、別の何かを手放す必要がある。

ジュースを手に入れるためには、お金を手放さなくてはならない。お金が惜しかったら、ジュースは諦める。
化石燃料からの便益を得るためには、二酸化炭素をよりたくさん放出しなくてはならない。大気をきれいに保とうと思ったら、化石燃料の使用を削減しなくてはならない。

第2原理: あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である

意思決定をするときには、選択肢から得られる便益と費用を比較する必要がある。
便益は、その選択肢から得られる便益をそのまま利用すればよい。
費用に関しては、諦めたものの価値(便益)として計算するのが良い。

大学に行くことの費用は学費ではなく、「高卒で働いた場合に稼げる賃金」。
プロスポーツ選手が大学に行きたがらないのは、大卒で働いた場合の生涯獲得賃金よりも、高卒でプロ選手になった場合の生涯獲得賃金の方が大きいと思うから。

第3原理: 合理的な人々は限界的な部分で考える

意思決定するときに、物事を大幅に変化させるよりも、微調整(限界的な変化)した方が上手くいく。
そして、限界的な便益が限界的な費用を上回る行動のみを選択するのが合理的。

ビールを1ダース買ってきたとき、合理的でない人は12本を一気に飲むべきかどうかを考える。「過ぎたるはなお及ばざるが如し」じゃないけれど、12本も飲んだら気持ちよくなるという便益以上に、気持ち悪くなるとかカロリー取りすぎとかの費用が高くつくだろう。
合理的な人だったら、1本飲んだときの便益と費用を比較し、それが得なら飲む。それが空になったら、次の1本について同じように便益と費用を比較する。数本も飲めば、気持ちよくなる以上に、気持ち悪くなるポイントがやってきて、そこで飲むのをやめることができる。

第4原理: 人々はさまざまなインセンティブ(誘因)に反応する

人々は便益と費用を考慮して意思決定を行うので、便益や費用が変われば人々の意思決定も変わる。

リンゴの味(便益)は変わらないのに、価格(費用)が上がったら、今までよりもリンゴを食べなくなるという具合に行動が変わりうる。
今まで居酒屋で酒を飲んだ後車で帰宅していた人が、居酒屋で酒を飲まなくなったのは、彼自身が酒を嫌いになったからではない。道交法による飲酒運転の取締りが厳しくなり、酒から得られる便益と、酒を飲むことの費用(飲酒運転で検挙される可能性)の関係が変化したから。

―― 人々はどのように影響しあうか ――

第5原理: 交易(取引)はすべての人々をより豊かにする

生きていくうえで必要なもの全てを自給自足するよりも、各人が専門分野に特化したしごとを行い、モノやサービスを取引した方が、世の中全体が豊かになる。
適材適所と取引が、全員をハッピーにする。

第6原理: 通常、市場は経済活動を組織する良策である

多くの企業や家計が参加し、てんでばらばらに資源を分配する市場経済が結局は上手くいく。「神の見えざる手」が価格と需給量の調整をうまくやってくれる。
社会主義のような、中央集権的な権力者が経済を操ろうとしても失敗したことは、少なくとも歴史が証明してる。

第7原理: 政府は市場のもたらす成果を改善できることもある

市場経済はおおむね上手くいくのだが、いくつか良くないことも引き起こす。例えば、公害とか独占とか。
そういった場合に政府が介入することで、たまにうまくいく(絶対にうまくいくわけではない)。

例えば、怪我や病気などの不幸によって、市場経済の中では生きていけなくなった人に、国民保険で治療して再チャレンジできるようにしてあげるとか。

―― 経済は全体としてどのように動いているか ――

第8原理: 一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している

基本的に、人々の生産性(労働者1人が1時間に生産する財・サービスの量)が、生活の豊かさを決める原因。

北朝鮮が日本に比べて貧しいのは、かの国の将軍様が国民の財産を不当に召し上げて贅沢しているわけではなく、国民の生産性が低いから。産業の機械化なのか、労働者への教育なのか知らんけど、労働者1人が1時間に生産する財の量を増やすようにすれば、彼らも豊かになれる。

生活水準を高めるための公共政策を立案する場合には、何よりも人々の生産性を上げることを目的とするのが良い。教育とか、インフラとか。
(金銀こけしとかだと、労働者の生産性は上がらないね。それを目的としていたのかどうかは知らんけど)。

第9原理: 政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する

インフレーション: 経済において価格が全体として上昇すること

貨幣が増えると、貨幣の希少性が薄れ、貨幣の価値が減じる。そのため、同じ量の貨幣を持っていても、以前より少量のものとしか交換できなくなる。これがインフレーション。

第10原理: 社会は、インフレ率と失業率の短期的トレードオフに直面している

1年や2年といった短期的な期間で見ると、インフレ率が高くなると失業率が低くなる。逆に、インフレ率が下がると失業率が高くなるというトレードオフがある。(フィリップ曲線)

政府は、財政支出、税制、貨幣供給量等の方法でインフレ率を操作し、失業率に影響を与えることができる。ただし、どちらが高くなっても、経済にとっては望ましくないので良く考える必要がある。

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コメント (1)

  1. なおき

    とてもわかりやすい説明です!

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