ドラマ万葉ラブストーリー: 春

NHK奈良放送局制作の「ドラマ万葉ラブストーリー: 春」を見た。
奈良を舞台にしたシナリオを一般から募集し、ドラマ化するシリーズ。これまで、「夏」、「秋」と放送されてきて、今回は3シリーズ目の「春」編。9月締め切りで、「冬」編のシナリオ募集も始まった。

明日、5月23日(土) 10:05 – 10:48 に関西圏のNHK総合で再放送されるそうだ。
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今回の脚本募集では、最優秀賞の該当作はなかったそうだ。
確かに、ドラマもあんまり面白くなかった。
佳作3本が映像化されることになったわけだが。

1作目「恋はももいろ」は、墨職人が花屋の娘に恋をするという話。娘は仕事柄手が傷だらけになっていることを恥じている。墨職人も手が真っ黒に汚れている。手に関するコンプレックスがふたりを結び付けるというのを描きたかったらしいが、いまいちピンとこないデキだった。
「春の苑 紅におう桃の花 したでる道に出で立つ乙女」という歌をテーマに据えているが、花屋で桃を買うくらいしか接点がなく、万葉集との結びつきも脆弱だった。
最大の見どころは、連ドラ「だんだん」で三倉茉奈の弟役をやっていた木咲直人が主演していた点か。2番目の見どころは、何年か前にカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『殯の森』で主役の痴呆老人を演じていた うだしげき(古書喫茶ちちろ経営者)が親方役で出ていた点か。
#ふたりとも、演技をこじらせた感じだったのが、なんとも・・・。

2作目「愛しき、古」は、妻に先立たれた男が絶望から立ち直る話。最期を覚悟した妻が、家中に千枚のメモを残しており、夫が全て見つけ出して生きる希望を取り戻す。どっかで見たような『P.S. アイラヴユー』さえ知らなければ、心の底から楽しめただろうにと思うと、ちと残念。それでも、俳優さんの演技が渋くて、思わず引き込まれてウルウルときた当方だが。今回の3本作の中では、一番良いデキ。
妻からのメモ1枚1枚もなかなか凝ったメッセージがしたためられていて良かった。ああいうことを書ける妻が欲しいね。「廊下は時々雑巾で拭かれると キュッキュ言うて喜ぶよ」とか、「寝る前は戸締り、火の元しっかり確かめてな。そんで夢にうちを呼んでな」とか、かわゆいことが書いてあるんだよ。
万葉集の歌を引用しないという裏技も炸裂。妻の作った「千葉集」ということでうまくまとめた。

3作目「春日影の庭」は、お得意様の老婆への初恋を秘め続けていた老庭師の話。息子夫婦の転勤により、老婆も家を引き払ってカナダに移住することになった。互いに別々の家庭を持っていて、今さらどうなるわけでもないのだが、彼女に万葉集から引用したラブレターを送る。
「春されば もずの草ぐき 見えずとも 我は見やらむ 君があたりをば」という句で、あなたの姿が見えなくなってしまっても、あなたの住んでいるところをずっと見ていたいと思います、という意味だそうだ。
主演が石倉三郎で、彼が息子と毒舌の応酬をする芝居は面白かったけれど、それ以外はあまり見どころがなかったなぁ。

そんなわけで、次回の「冬」編に思いをはせます。

コメント (1)

  1. alm-ore

    ドラマ『万葉ラブストーリー 冬』 2010年3月19日20:00

    NHK奈良放送局制作のドラマ『万葉ラブストーリー 冬』が、今週金曜日の20時より放送されます。 関西地方限定だけど。 万葉集の歌をモチーフに、奈良を舞台に…

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