映画『南極料理人』を見てきた

先日、偶然予告編を見つけて気になっていた映画、『南極料理人』を見てきた。

南極観測隊の中から選抜された8人が、南極大陸の奥地に1年以上滞在し(昭和基地から1,000km)、メシを食うという映画。調理担当として参加している西村(堺雅人)を中心に、クセのある隊員たちのおバカな日常が描かれるという喜劇映画。

世間から隔絶されたチームを題材とした映画(たとえば、戦争における小隊ものなんかによくあるだろう)では、任務に対する疑問感があり、メンバー間の葛藤が描かれ、山場においてはチーム存続(多くの場合全滅や個人の死による犠牲)をかけたトラブルが引き起こされ、最終的には全員が使命感に燃えて困難を打ち砕く・・・そんなストーリーが王道だ。

しかし、この『南極料理人』は、そういう小難しいことは全部排除した。
むさくるしい姿の8人のおっさんたちは、とにかくメシを食ってる。メシを食っていないときは、酒を飲んでるか、レクリエーションをしている。その合間に、なんとなく仕事(なんか知らんけど、観測)を風景が映し出される。




我々一般人にとっては、南極なんて未知の世界である。凡庸な脚本家なら、説明的なセリフやシチュエーションをわざとらしく用意して、南極がどういう世界か観客に知らしめようとすることだろう。
しかし、この『南極料理人』は、そういうめんどくさいことはほぼ排除した。
ギャグとして必要とされる以外は、南極がどんなに過酷なところかという”お勉強”シーンがない。

頭を空っぽにして見る、上品なコントとして大成功している作品だと思った。
今日は、TOHOシネマズ二条の9番スクリーン(公称117人収容)で鑑賞したのだが、満員に近い客の入り。そのほとんどが20歳代中盤以降だった。そんな年齢層が、素直にワハハと笑うことのできる、気持ちのいいコントだった。

映像の中だけではなく、他の観客と一体感を感じられる映画であったというところも評価が高い。
僕が面白いと思って素直に笑ったところは、他の観客も一緒にどっと笑っていた。とても気持ちのいい体験だった。

また、映画の中で「あっ!そりゃないよぉ・・・」と思うシーンがある(ヒント: 2500mの穴)。その時、客席のあちこち(笑いの人数に比べるとはるかに少数であったが)から「ああぁっ!」という残念そうな呟きが聞こえた。映画で笑い声やすすり泣きの声が聞こえてくるという経験は何度もあるが、残念な声というのは生まれて初めての経験で、僕はそこにちょっと感激してしまった。
なお、これは、完全に作り手の狙いじゃないかと思う。映画の中の登場人物にも「ああぁっ!」というセリフがあるのだが、編集でそのセリフのタイミングが遅らされていたように感じた。観客に「ああぁっ!」と言わせてから、映画の中で見せるという工夫がされているのだろう(きっと、役者が先に言ってしまったら、観客はそれに釣られまいとするだろうから。あえて間を作ったのだろうと僕は信じている)。


南極に1年以上も連続滞在する隊員たちは、日本に家族や恋人を残している。そして、長期の不在によって少々不仲になる様子が描かれる。
俗な映画なら、家族との心の結びつきを取り戻すエピソードを用意して、葛藤の末、丸く収まる過程を描くのだろう。しかし、この映画はそれもしない。そういうトラブルは、全部うやむやのまま収まってしまうのだが、全編笑わされっぱなしなので、そういう細かいところはどーでもいい気分になってきて、そのまま受け入れてしまう。受け入れさせるだけの作りが素晴らしいと思った。


あと、見どころとしては、当方が密かに心寄せている小出早織の出演シーン。
あの立ち姿は萌える。あんな風に女の子が立っていたら、胸キュンだ。
つーか、「そうか、あれが小出早織だったんだ!」と後から気づかされた当方は、修行が足りないと思った(これから映画を見に行く人、小出早織の登場に要注目)。


あと、帰りに原作エッセイ(西村淳『面白南極料理人』)をつらつら読んでいたところ、原作者(実際に南極で料理担当)は生粋の道産子らしい。それでもって、ザンギ(鶏のから揚げ)が大好物らしい。大好物なので、原作者は南極では一切ザンギを作らないというスジを通したらしい。
それだけザンギに思い入れがあるっつーことで、あの「鶏のから揚げエピソード」なんだなぁ、と思った。

さらに、映画の中でドクター・福田(豊原功補)は北海道の医師ということになっているが、実際の人物は鹿児島県出身だそうだ。南極に来る前は、北海道砂川市にいたらしい。(原作を読み進めたら、そう書いてあった)映画の西村(堺)が北海道と縁のない人物のように描かれているから、原作者に顔を立ててドクターが道産子になったってことかな。


南極料理人まとめると、派手な演出のまったくない映像なのに、一時も退屈することなく、あっという間に時間が過ぎた。
おもしろかった。

そして、観る前に腹ごしらえしておいてよかった。
満腹で観ていても、美味しそうで、何度も生唾を飲み込んだ。


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