昨日の放送があまりに良かったため、録画しておいたものを夜に見直し、やっぱり同じところでウルッとしてしまった当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第53回めの放送を見ましたよ。
「私、働きます」
玄関の物音を見に行くと、下宿人の中森(中村靖日)が倒れていた。彼は貸本出版社から頼まれた原稿を届けに行ったのだが、頼んだ覚えは無いと言われ、原稿料も貰えなかったという。どうやら、業績が悪化して原稿料を工面できなくなった出版社が発注をなかった事にしたらしい。電車賃すら苦労している彼は、原稿料をあてにして往路の電車賃しか持っていかなかった。金が貰えなかったので、水道橋の出版社から調布まで歩いて帰って来たのだという。仕事が全く見つからず今後の食い扶持も心配する中森のことを、布美枝(松下奈緒)と茂(向井理)は決して他人事だとは思えなかった。
さらに1ヶ月経って、4月になった。
茂の留守中に、はるこ(南明奈)が近況報告にやって来た。彼女はパチンコ屋に住み込みで働いている。仕事の終わった夜に漫画を描き、休みの日に持ち込みをしているが、まったく相手にされないという。しかし、自分の手伝った漫画が本になっているのを見せてもらい、より一層やる気にみなぎるのであった。そんなはるこの姿を見て、布美枝は自分の境遇と照らして、少し考えるところがあった。
茂は『河童の三平』を携えて貸本漫画出版社を何軒も回っていた。しかし、一向に出版先が見つからない。街角で途方に暮れていた茂は、出版社社長の富田(うじきつよし)に出くわした。原稿料不払い事件による絶交から半年ぶりの再会だった。富田はあちこちで不義理をしたため、作家から総スカンをくらい、出版すべき漫画原稿がないのだ。過去を根に持っている茂であったが、落ちぶれた姿ですがりつく富田の頼みを断り切れず、また、自分も他に出版のあてが無いこともあって、彼の会社から本を出すことにした。
はること行き違いに、茂が帰宅した。『河童の三平』出版のめどが立ったことをとても喜ぶ布美枝であったが、原稿料を3ヶ月後払いの約束手形で受け取ってきたことに落胆する。相手が富田書房であることも大きな不安の種である。支払いが滞っており今すぐに現金が欲しい布美枝。しかし、茂は出版社が見つからずいつまで経っても金が入らないよりは、3ヶ月後に金を受け取る約束をした方がマシだと楽観的な態度を見せる。そう励まされて、布美枝も頷くしかなかった。
心の中では、茂も富田のことを信用しておらず、不安でいっぱいであった。しかし、今できることは漫画を描くことだけであると自分に言い聞かせ、しゃにむに原稿に取り掛かるのであった。一方の布美枝は、自分が働きに出なくてはならないと考え始めるのであった。
ドラマの中は昭和37年。東京オリンピックの2年前だそうです。高度経済成長の真っ只中で、全国が好景気に湧いている時代。確かに、一般常識としてそのことは知っていたけれど、ドラマの舞台となっている村井家の貧乏描写ばかりなので、そのことはすっかり失念していました。
一方、当時の時代背景と合わせて考えれば、村井家の貧しさが際立ちます(だって、少ないコーヒー豆だからといって妻が飲むのを遠慮するんだよ)。よその家庭は明るく前向きなんだろうなと頭で補完して見ると、視聴にも深みが出てきます。
ちなみに、当時は漫画雑誌の創刊が始まった頃で、貸本業界は衰退の一途だそうです。茂は未だに貸本業界一本で仕事をしていて、漫画雑誌には全く興味がない様子です。
ところで、茂の机の横に「河童の三平」という背表紙の本があったようなんですが、あれは何の本だ?まだ出版されてないはずなのに。
あと気になるのは、約束手形の額面が10万円になっていました。茂の原稿の相場は1万円らしいので破格です。これはきっと支払ってもらえないな。