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『おと・な・り』(監督・熊澤尚人/主演・岡田准一/助演・麻生久美子)

ある男性カメラマン(岡田准一)と女性花屋店員(麻生久美子)は古いアパートの隣人。このアパートの壁は驚くべきほど薄く、隣室のちょっとした物音は全て筒抜けだ。
都会に暮らすふたりは、互いに相手の顔も素性も知らない。隣から聞こえてくる雑音に、時には腹を立てつつも、自分の生活の一部として心地良くも感じている。

それぞれがそれぞれに、自分の将来を大きく左右する重大な局面を迎えている。もちろん、相手がそうだとは知らないし、相手に伝えようとも思わない。薄い壁1枚で隔てられているのみだが、ふたりの人生は決して交わることはない。

・・・そんなお話。

ネタバレしない程度に作品紹介をしようと思うと、どうしても地味な内容になってしまう。
けれども、これは僕の大好きな映画ベスト5にランクイン。ぜひオススメしたい。

単に麻生久美子が見たくてレンタルした映画だが、麻生久美子が出演していなかったとしても、この脚本と演出は気に入ったことだろうと思う。


隣同士に住む男女にまつわる話であるから、
「どーせ、最終的にふたりはくっつくんでしょ?最初はちょっとしたトラブルや誤解でいがみ合うんだけれど、ふたりが力を合わせなくては解決できないような事件が勃発し、それを乗り越えることで恋に落ちる → ハッピーエンド っていう、ありがちなストーリーでしょ?」
と、多くの人が思うに違いない。
実際、僕はそういう予想の上に見始めた。

しかし、その予測はあっさりと裏切られる。ご心配なきよう。
ていうか、映画の早い段階で、どうやらその予測は間違いだと気付かされる。そして、結末予想の修正を行う。
しばらく見ていると、「やっぱりそうきたか。底が浅いのぉ。」なんて気分になってくるのだが、その矢先に、またしても予想が裏切られる。
少なくとも、僕は予想を外しまくった。最後の最後まで展開が読めなかった。

そういうわけで、とてもいい脚本だと思いました。その意味で、僕の映画ベスト5にランクインなわけです。

タイトル『おと・な・り』もなかなか凝っている。掛詞だ。
ふたりの関係を表す「お隣り」。あちこちから聞こえてくる「音」。良い意味でも悪い意味でも「大人」になることを迫られる登場人物たち。
これらが、場面設定、表現演出、脚本構成の3要素にそれぞれちゃんと活かされているのがスゴイ。

とても良い映画を見ました。

その他、今回、谷村美月を初めてちゃんと見ましたが、とても良い女優さんのように思いました。流暢な関西弁をしゃべるなぁと思っていたのですが、大阪府堺市出身なんですね。現在公開中の映画『阪急電車』にも出演しているそうなので、彼女にも大きなウェイトをかけて同作を見に行こうと思いました。

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