女の子に一途でのめり込む当方は、最近では黒木華という女優さんが大好きで、彼女が出演していると知ったのでDVDを取り寄せ、野田秀樹・作『表に出ろいっ!』という演劇作品を鑑賞した。
同作は2010年9月に東京芸術劇場で上演されたそうだ。中村勘三郎、野田秀樹、そして黒木華の3人芝居。物語の舞台はある家族の居間なのだが、舞台装置も役者の衣装もカラフルな色彩でちょっと前衛的な雰囲気を醸し出している。そんな舞台設定の中、中村勘三郎が歌舞伎の所作を滑稽に見せたり、野田秀樹が飄々としながらギャグを飛ばしたり、黒木華が若手らしいひたむきさでコミカルな演技をしたりという作品。
野田秀樹とかにあまり興味のない当方だったので、正直に言えば黒木華以外は特に期待せずに見始めたのだけれど、3人の息もぴったり合っていたし、スピーディーでありながらツボを外さない小ネタも満載で、とても面白い演劇だった。始まって3分も経たないうちに惹き込まれ、70分あまりの上演があっという間だった。
お話としては、父(中村勘三郎)、母(野田秀樹)、大学生の娘(黒木華)の3人家族のある週末の夕方の出来事を描いたもの。
可愛がっているペットの犬が妊娠しており、今夜にも子供を産みそうな気配を見せている。誰かがついていてやらなくてはならない。
3人にはそれぞれ外出する用事があった。しかも、事前の連絡の行き違いにより、自分以外の誰かが留守番するものだと思い込んでいた。約束の時間が迫ってきて、それぞれがそれぞれに留守番役を押し付け始める。
留守番は1人だけいればよいので、どうにか他の誰かと徒党を組み、残りのひとりに押し付けようとする。誰かを追い落とそうとするためにその人物の悪口や秘密をばらしたり、逆に誰かに取り入ろうとして心にもないおべっかを使ったり。
しかし、三つ巴の合従連衡ではなかなか話がまとまらない。そして、ついに・・・というお話。
罵り合ったり、擦り寄ったりする際に繰り広げられる威勢とテンポの良いセリフやジェスチャーの応酬が楽しい。熟練の中村勘三郎と野田秀樹に黒木華も引けをとらない。ただし、年かさのふたりが演じながら吹き出したり、アドリブを飛ばしたりといった余裕を見せる一方で、黒木華の表情は固くて、決められた台本をこなすのに精一杯という印象を受けた。しかし、台詞回しや表情の作り方に関してはのびのびとしており、物怖じしない雰囲気が伝わってきたし、よく演じていたと思う。素人の当方から見ても、これは若手実力派と呼ぶにふさわしいと思った次第。
言うことがコロコロ変わる豹変キャラは、朝ドラ『純と愛』で演じる田辺千香に通じる。ここで鍛えられたから千香ちゃん役をうまくこなしてるんだろうな、と思える。
DVDには特典映像としてリハーサル風景などが収録されている。舞台で見せるのとは違って、素の黒木華は物静かで引っ込み思案な人物であるように見える。映画『おおかみこどもの雨と雪』のナレーター(雪)のようなしっとりした感じで、それもまた良かったです。
なお、リハーサル風景でメガネをかけている黒木華が当方の知人である某巨乳人妻にそっくりだということで、仲間内で大いに盛り上がった。本人も驚くほどのそっくりさ加減。
ふたりを見分けるポイントは胸の大きさしか無いんじゃないかってくらいそっくりです。
あと、本作品の娘役はダブルキャストで、太田緑ロランスが演じるバージョンもあります。DVDには両バージョンが収録されているのですが、僕はまだ黒木華版しか見てません。