フジ『北の国から』第19回

「一日3本は胃にもたれるぜ、だけどそこまで頑張ってもあと1日分(昨日放送分)の録画が残っていてゲンナリしてしまうぜ」とひとりごちている当方が、BSフジ『北の国から』の第19回を見ましたよ。

* * *

筏下りの晩。涼子先生(原田美枝子)と一緒にUFOを見に行った螢(中嶋朋子)は、21時を過ぎても帰って来なかった。純(吉岡秀隆)は螢たちの行き先を知っていたが黙っていた。なぜなら、純は宇宙人が涼子に化けていると信じており、その秘密を漏らすと危険だと思ったからだ。しかし、螢が帰ってこないことも心配になったので、純は五郎(田中邦衛)に手がかりを教えた。ベベルイの山奥に行ったはずだと知らせた。五郎はすぐに探しに出かけた。

ところが、螢はなかなか見つからず、23時になっても五郎も帰って来なかった。初めは螢の身を案じていた純だが、だんだん螢に腹を立ててきた。純が行くべきではないと忠告したのにそれを無視して出かけた上、みんなに心配をかけている螢が許せなくなってきたのだ。

いつの間にか眠りに落ちていた純は、玄関の物音で目を覚ました。どうやら螢が見つかったらしい。しかし、中畑(地井武男)やクマ(南雲佑介/現・南雲勇助)たちに捜索を手伝ってもらっただけではなく、警察官も1名出動するまでの騒ぎになっていたようだ。中畑はみんなに今夜のことは黙っているようにと口止めした。警官にもそう伝えたなどと言っている。
五郎は純を呼んで、純にも口外しないよう注意した。今夜のことが公になると、涼子の責任が問われる。涼子は東京でスキャンダルを起こしたこともあり、ただでさえ彼女に批判的な風潮がある。その火に油を注がぬよう、絶対に人に喋ってはいけないと言われた。

寝室でふたりっきりになると、螢は純に心配をかけたことを謝った。しかし、殊勝だったのは初めだけで、すぐに自分が見てきたものを得意げに話し始めた。螢は巨大な葉巻型の母船を見たのだという。涼子が母船に向かって話しかけると、それに答えるように母船から空飛ぶ円盤が飛び出したという。涼子に促されて螢も交信を行うと、母船は同じように答えてくれたのだという。螢は興奮して話した。
純は螢の話を冷ややかな態度で聞いた。一切を信じず、以前に自分が見たUFOも目の錯覚だったと訂正した。そして、UFOを見たなどというと人から馬鹿にされるから、誰にも喋るなと命じた。螢は布団の中で泣き出してしまったが、純は放っておいた。
純は口で言うほどには、UFOを信じていないわけではない。ただ、螢がみんなに迷惑をかけたことをもう忘れ、得意げに話している姿に嫉妬してきつく言ってしまったのだ。

翌日、一家は新しい丸太小屋の建設予定地を見に行った。
純とふたりっきりになった隙に、五郎は螢のことで純をたしなめた。螢は純が信じてくれないと言ってショックを受けているという。螢が純に嘘をつく理由など無いのだから、彼女は見てきたものを正直に話しているはずだという。どうして螢を信じないのだとしかるのだった。
純は頭にきた。五郎がいつも螢の味方ばかりするからだ。

7月28-29日は富良野市街で北海へそ祭りが開催される。五郎は、中畑らと一緒に見物に行こうと言って張り切っていた。そこへ、草太(岩城滉一)が雪子と純に会いに来た。その日の晩、富良野のボクシングジムで草太が新聞の取材を受けるのだという。札幌で行われる草太のボクシングのデビュー戦についての取材だという。自分のいいところを雪子らに見せようと思って誘いに来たのだ。雪子たちは、へそ祭りの前に立ち寄ることを約束した。

しかし、取材は散々な結果に終わった。草太の記事のはずなのに、ジムの会長・成田(ガッツ石松)が一人でインタビューに答えたり、スパーリングで草太を叩きのめしてしまったのだ。雪子や五郎らは見ていられなくなって、へそ祭りの踊りの見物に行ってしまった。純だけはジムに残ってもう少し見学することにした。草太は自分が蔑ろにされていることについて文句を言った。すると今度は成田が怒りだして、ジムはますます混乱した。記者がふたりをとりなす間、カメラマンは退屈になって雑誌を読み始めた。
純は、カメラマンの見ている記事がUFOに関する記事であることに気づいた。純はそのカメラマンに軽い気持ちでUFOが実在すると思うか聞いてみた。するとカメラマンからは肯定的な答えが返ってきた。それを嬉しく思った純は、螢がUFOを見てきたことを話してしまった。純は自分のおしゃべりな性格を自覚しているが、一度話し始めると留めることができなかった。涼子が引率して迷子になったことまで含めて、昨夜の出来事を包み隠さず全て話してしまった。五郎は純のおしゃべりな性格ととても嫌っている。それだけで気が重いのに、何かとても悪いことが起きそうな予感がした。

へそ祭りを見物していた五郎は、踊りのグループの中にこごみ(児島美ゆき)がいるのを見つけた。五郎は我知らず、彼女の姿に見とれてしまった。五郎は街に用事があると言って、中畑に子供たちを家まで送り届けることを頼んだ。
街に残った五郎は、こごみの務めるスナック駒草を訪れた。

筏で一緒になった縁で、スナックのママ(羽島靖子)は五郎の来店をとても喜んだ。五郎と中畑が親友同士だと知ると、ママは中畑の話を始めた。中畑は冬によく来ていたが、最近はあまり来ないという。五郎に、中畑の下の子どもはどうしているかと尋ねるのだった。生まれつき腎臓が悪くて札幌の病院に入院しているという話だった。五郎には何のことだかわからなかった。

そこへ、こごみが五郎の横に座った。五郎が来たことを喜び、前触れもなく抱きついて頬にキスをした。
こごみも中畑の話を始めた。こごみは中畑のことを「悲劇さん」と呼んでいるらしい。いつも悲しい話ばかりするからだという。両親とは生き別れで行方が知れないし、子どもは重い病気で入院している。実の妹は身を持ち崩して札幌のソープランドで働いていると言うそうだ。ところが、こごみはそれらが全てホラであると見抜いていた。自分を悲劇の主人公にすることで女にもてる作戦なのだという。ただ、中畑の語り口が真に迫っているのでママはコロッと騙されているし、こごみも嘘だと知っていながらもらい泣きをしてしまったこともあるという。

さらに、こごみは中畑が語った妻の話も紹介した。中畑が東京にいた頃、妻はよそに男を作って出て行ってしまったという。2人の子どもを押し付けられ、中畑は富良野に帰ってきたと言ったそうだ。そして、前妻の妹が中畑を慕って追いかけてきて、その女性と再婚したのだという。五郎はそれがそっくり自分の話だと気づいた。五郎は、前妻の職業は美容師だったと指摘した。こごみは、中畑から同じ事を聞かされていた。中畑と五郎の話が一致したため、こごみは妻に関する話だけは本当だと信じてしまった。
その世、五郎は泥酔して中畑の家へ行った。深夜にもかかわらず玄関を激しく叩き、一家をたたき起こした。中畑の妻(清水まゆみ)がいるのも構わず、駒草で聞いてきた話をひと通り中畑にしゃべって聞かせるのだった。中畑は、慌てて五郎を追い払った。

それから2日ほどして、小学校の本校から2人の教師が螢を訪ねてきた。螢は涼子とUFOを見に行った日のことを詳しく聞かれたのだという。初めは黙っているつもりだったけれど、教師たちが真相を全て知っていることがわかったので、ごまかすことをやめて正直に答えたのだという。教師たちは、涼子は困った教師だなどと言い合いながら話を聞いていたという。
純は、自分が新聞記者にしゃべったことが広まっていることを悟った。UFOが実在するかどうかよりも、涼子が螢を連れて道に迷ったことが大きな問題になっていることを知った。五郎が口止めした理由が実感としてわかった。

その日帰ってきた五郎はとても暗い顔をしていた。螢や雪子が声をかけても上の空だった。純は辛くなった。五郎が自分に絶望したこと以外、彼の不機嫌の理由がわからなかったからだ。夕食の席で、純は五郎に謝った。涼子のことを新聞記者にしゃべったことを正直に打ち明けた。ところが、五郎はしゃべってしまったことは仕方ないと言うに留まった。そして、食事を切り上げ、表に出て丸太小屋の材料作りを始めた。

雪子が表に出て、五郎をとりなした。純は深く反省しているのでこれ以上怒らないで欲しいと頼み込んだ。
しかし、五郎は別の理由でふさぎこんでいると説明した。五郎は今日届いたという封書を雪子に差し出した。そこには、受理された離婚届のコピーが1枚入っているだけだった。五郎と令子(いしだあゆみ)の離婚が正式に成立したのだ。雪子とも書類上の親戚関係が途切れてしまったのだ。
五郎はそのまま街まで飲みに出かけた。

行き先は駒草だった。ふさぎこんでいる五郎を見て、こごみは明るい口調で奥さんとケンカをして逃げられたのだろうとからかった。五郎は雪子にしたのと同じように、封書をこごみに提示した。中身を見たこごみは言葉を失い、先ほどの軽口を謝った。五郎は気にしなかった。その代わり、中畑の妻の作り話は全て自分のことだと種明かしをした。ただし、妹のことだけはでたらめであると訂正した。

五郎は、こごみに問われるまま、令子との馴れ初めを話して聞かせた。キレイな女性であったこと、別れて寂しい思いをしていること、東京で互いの勤務先が隣同士だったことなどを話した。ある日、令子が五郎を彼女のアパートに招待してくれた。そこで令子はスパゲティ・バジリコを作ってくれた。それまでの五郎の人生では見たことも聞いたこともなかった食べ物だった。五郎は味よりも先に、ハイカラな名称や見た目に感動したと話した。五郎と似たような境遇で生まれ育ったこごみは、その話に共感した。

あまりにふたりが暗い雰囲気なので、ママがカラオケでも歌えを薦めてきた。そこでふたりは「銀座の恋の物語」をデュエットすることにした。マイクを向けられると、五郎はポツリポツリと付き合って歌った。
歌いながら五郎は、令子との結婚披露宴のことを思い出していた。その時も同じ歌を歌ったのだ。列席者から祝福され、五郎と令子も幸せの絶頂だった。その記憶が蘇り、五郎はつい目をうるませてしまった。その様子を見てこごみももらい泣きした。

こごみは五郎を部屋に誘った。スパゲティ・バジリコを作ることを約束した。
こごみの部屋には本がたくさんあった。読書が趣味なのだという。最近は開高健高中正義に凝っているのだという。五郎が高中正義という作家は知らないと答えると、こごみは笑った。高中正義はギタリストなのだ。最近読んだ本は何かと聞かれた五郎は、『じゃりン子チエ』だと答えた。その様子をかわいらしく思ったこごみは、「大好き」と言って五郎に抱きついた。男と女になった。明け方、五郎はそっと家路についた。

家に帰ると、雪子と螢がほぼ寝ないで待っていた。五郎は螢の出迎えを受け、彼女を抱きしめた。すると螢は、五郎の体からラベンダーの匂いがすると指摘した。

そして、その日の朝刊に草太の取材記事が載った。しかし、その扱いはとても小さかった。その代わり、涼子のことが大きく報じられていた。

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こごみ役の児島美ゆきは1952年生まれ。現在は60歳であるが、『北の国から』が放送されていた1982年ならばちょうど30歳くあり。多少年増だと言えないこともないけれど、場末のスナックにいる情の深い女という感じがプンプンしてきて良い感じ。アラフォーになった当方は、ああいう女の良さが十分すぎるほど分かる年代に入ってきました。

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