東京都の西部に福生市がある。読みは「ふっさ」である。自衛隊およびアメリカ空軍の横田基地がある街だ。
昨日、知人らと昼酒を飲んでいた時にウルフルズ「大阪ストラット」の話になった。
その時、当方が自慢げに「『大阪ストラット』の作曲者は大滝詠一であり、彼の『福生ストラット(パートII)』のカバーである」旨を説明した。
当方は自慢気だったのだが、周囲の反応は8へぇ~くらいだった。
その時は、神奈川県横須賀市で飲んでいた。横須賀の名物といえば、山口百恵(横須賀ストーリー)、ダウン・タウン・ブギウギ・バンド(港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ)、クレイジーケンバンド(タイガー&ドラゴン)かもしれないが。
しかし、ここには自衛隊やアメリカ海軍の横須賀基地がある。そんなわけで、横須賀で飲みながら「日本にある自衛隊や米軍の基地を列挙しよう」という話になった。その際、もちろん横田基地の名も挙がったわけだが、その時の我々は横田基地がどこにあるかわからなかった。はたしてググってみると、それは福生市にあることが明らかとなった。
この時、当方は冷静を装っていたけれど、心の中では「いざ福生市!」という状態になっていた。そのため、飲み会の翌日である本日、当方は車で片道1時間の東京都福生市に行ってきた。
まずは、横田基地を見に行った。見に行ったのだが、中に入れるわけでもなく、交通量の多い道路だったので駐車するわけにも行かず、運転しながら横目でフェンスの有刺鉄線をチラ見するに止めた。所要時間5分。本当にありがとうございました。
続いて、大滝詠一の「福生ストラット(パートII)」に歌われている通り、「福生行きの切符」を買うことにした(お守りに)。
そして、その時はたと気づいた。「福生行きの切符」は理論上全国のどの駅でも買うことができるが、福生では買えない!福生で買えるのは「福生発の切符」じゃねーか!なんだよ、うちから車で15分のJR厚木駅でも買えたじゃねーか(ただし、運賃740円)!!
けれども、すでにJR福生駅に来てしまったものは仕方がない。歌詞も聞きようによっては「福生駅の切符買って(お守りに)」と聞こえなくもない。そう自分を言い聞かせて、初乗り運賃(130円)の切符を買った。福が生まれるめでたい駅名だし、お守りにしようと思う。
さて、次に向かうのは、福生駅前の繁華街にあるというリリー・フランキーの壁画だ。彼が1998年に書いたエッセイに「二階から落とすツバ」(『美女と野球』に収録)にそのことが書いてある。
話は八年前に遡る。真夏だった。東京近郊のF市。米軍のエア・ベースのあるその町の繁華街にディスコのような所があって、ボクはその店の外壁に壁画を描いていた。縦五メートル×横十メートルぐらいの巨大な白壁は公園通りの壁のようにツルツルではなく、筆がまっすぐ動かない厄介な材質だったりして作業は十日以上も泊まりこみでやることになった。
その壁画が書かれたのは1990年ころと思われるが現存していた。店もディスコではなさそうだったが、何やら営業している風ではあった。南米風の母親2人が合計5人くらいの幼児を連れて、右側のドアから入っていくのを見た。中からはチリソース風のいい匂いが漂っていた(なお、この辺りは中国や東南アジアや南米など、多国籍なお店がたくさんあった)。
絵柄はハダカの女と海と戦闘機と原爆と加山雄三など、御当地にちなんだ題材を取り入れたモノだったんだけど、その黒人が、”黒人も描け!!”としつこく言うので、マイルス・デイヴィスがラッパを吹いている絵も描いた。マイルスが描き上がった時に黒人が”グレイト!!”といってホメてくれたのだけれど、後から聞いた話によれば、この絵柄が次元の人々から風紀を著しく害するということでたいそう不評だったらしい。
壁画の下方には建て増しの構造物があって一部隠れてしまっていた。おそらくそこにマイルス・デイヴィスが描いてあるのだろうが、それは確認できなかった。なお、引用中にある黒人とは、友達のいなそうな太った男で、リリー・フランキーの作業を毎日一人で酔っ払って見に来ていたそうだ。
なお、この壁画はグーグル・ストリートビューにもしっかりと写ってる。
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さらに、この壁画の登場する映画もあるという。
MAX初主演映画『麗霆”子MAX レディース・マックス』。レディースのアテ漢字に無理やりダク点を付けた強引さが気に入った。もうタイトルを見るからに何の知能も意味もなく、勢いと色気だけはありそうな暴走族映画である。・・・(中略)・・・画面にはバカでかく描いたボクのサインも映っていた。マイルス・デイヴィスもラッパを吹いている。元旦からMAXと共演できたと思うと八年後のボクは大層うれしい。
残念なことにこの映画は廃盤のようだし、レンタルでも見つけにくそうだけれど、機会があったら見てみようと思う(ていうか、気が向いたら買う)。
そんなわけで、急な思いつきで行ってきた福生であったが、いろいろと楽しめた。みなさんも一度行ってみるといいと思いますよ。