ふたりはまるで友達のような親子だった。今でこそアキは普通に勤めに出ているが、ハツキが生まれた頃は名古屋で名の知れたパンクロックバンドのギタリストだった。アキはハツキを学習塾に行かせている以外は、特に教育熱心でもなかった。子育てに関しては放任主義で、ハツキの進路に関する三者面談にも出席しない。ハツキがどのような進路を選ぼうとも、全て本人の自由に任せるつもりでした。むしろ、登校前のハツキといつまでもおしゃべりしていたり、制服のスカートの丈を短くした方がカワイイなどとアドバイスするほどだった。
ただし、ハツキとアキは完全な母子家庭ではなかった。ハツキが生まれてから中学生になる頃まで、矢口・通称ヤグ(大泉洋)が同居していた。ヤグはアキと同じバンドのヴォーカリストで、アキへの恋愛感情を隠そうとはしていなかった。アキの妊娠が判明した時、彼女の事情を全て受け入れた上でプロポーズしたのだ。しかし、アキは正式に結婚することを拒んだ。けれども、ハツキの父親代わりとして、同居することになった。幼かったハツキは、ヤグが本当の父親だと信じて育ち、彼によく懐いた。
ヤグは根っからのプー太郎気質だった。ロックと酒以外に熱中するものはなく、のべつ幕なしに軽薄なことばかりしゃべっている。これといった定職に就くこともなく、もっぱらアキが食い扶持を稼いでいた。それでも、ヤグの明るい性格は、アキやハツキに愛されていた。
ある時、ヤグは交通事故に遭った。賠償金としてまとまった金が手に入ると、ヤグは一人で海外へ放浪の旅に出てしまった。残されたアキとハツキは、特に寂しがったりすることもなく、明るく愉快な母子として楽しく暮らしていた。
そんなある日、ヤグが旅から帰ってきた。アキはヤグの帰還を喜び、昔通りの生活に戻ろうとした。しかし、難しい年頃となったハツキは、ヤグのことを手放しで迎え入れることができなかった。世間一般とは異なる家庭状況を引け目に感じたり、ヤグの軽薄な態度を蔑視したりするようになっていた。
特に、ハツキの親友トモ(能年玲奈)と一緒にいると、その思いがいっそう強くなった。トモの家庭にはきちんとした両親が揃っており、生活も豊かだった。トモの家ほど裕福になりたいとは思わなかったが、せめて常識を有した両親であって欲しいと願うのだった。
一方のトモは、アキやヤグのような自由気ままな両親への強い憧れを抱いた。ハツキもトモも互いに互いを羨ましがり、ないものねだりをするのだ。そして、それがハツキとトモの友情に亀裂を生じさせる。
以上は、登場人物の背景紹介と映画の前半のあらすじ。気になった人は、ぜひとも映画をご覧下さい。
キャストの筆頭は麻生久美子ですが、狂言回しは娘役の三吉彩花です。ほぼ全編、彼女を中心に話が展開します。
そして、そんな娘・ハツキの親友役が、今をときめく「あまちゃん」こと能年玲奈。ショートボブで学校の制服姿で出てくるので、NHKの朝ドラを見てるのかと錯覚します。セリフ回しや体の動かし方なども『あまちゃん』の天野アキとほぼ一緒です。「えへへっ」という笑い方や、驚いた時の目の剥き方が今も昔も同じです。昔といっても、この映画は2012年の公開ですが。
途中、能年玲奈の「かっこいい!」というセリフがあったのですが、僕の頭の中では天野アキの「かっけー!」に変換されました。むしろ、「じぇじぇ!」と言わない事に違和感を感じるほどの事態です。あまりに本作のトモちゃんと、NHKのアキが同じなので、能年玲奈の芸域の狭さが不安になるほどです。
まぁ、それを言ったら、麻生久美子の「ぐふふふっ」という笑い方や、大泉洋が料理をするシーンなんかも偉大なるマンネリズムなので、それはそれで持ち味なのかもしれませんが。
当方は麻生久美子が好物なので彼女を目当てにレンタルしたわけですが、能年玲奈が出演していると後から知って、ちょっと儲けたな、という感じです。どーでもいいことですが、僕は木村洋二と一緒にテレビに出たことがあるので、僕→木村洋二→大泉洋→麻生久美子・能年玲奈とたどれば、彼女らとの共有関係ステップ数は3という事になります。えへへっ、ぐふふっ。
カメオ出演に土屋アンナ。気風のいい姉さん役で、見ていて気持ちよかったです。彼女の登場シーンは胸がすきます。
それから、冒頭の言葉にジーンと来て、そこだけで見た甲斐があったなと思いました。