『東京物語』と言えば当然小津安二郎の映画が思い出されるわけで、その映画では田舎から子供を頼って東京に出てきた老夫婦が邪険にされ、がっかりして帰るという内容だったわけで、その映画の題名を週のサブタイトルに持ってくるとは縁起が良くないのではないかと心配する当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第73回めの放送を見ましたよ。
あさ(波瑠)は、五代(ディーン・フジオカ)から東京への視察旅行に誘われた。
五代によれば、日本が世界に通用する国になるためには、さらなる貿易の活性化が必要である。しかし、日本には産業界の代表となる人物や組織が無いため、諸外国から大きな貿易をしてもらえないのだという。そこで、東京では「東京商法会議所」という組織を作り、諸外国と対等に貿易をしようという動きがあるという。
今がまさに、東京商法会議所の視察や商工業者との人脈作りに最適な時期だという。
五代は、商人としてのあさに一目置いている。さらに見聞を広めて、一流の商人になってほしいと思っているのだ。それで、あさを誘って東京への視察旅行に行こうとしているのだ。
あさはその話に感銘を受けた。そして、東京に負けていられないという闘志を燃やした。大阪にも商法会議所を作る必要があると強く思った。そのためには、東京の様子を知ることが肝心である。
けれども、あさは東京行きを断った。
九州の炭坑から帰って来たばかりだし、なるべく早く九州に戻りたいと思っているので時間がないというのだ。
五代はそれ以上何も言わなかった。
新次郎(玉木宏)には、あさが断ったのは本心ではないとわかっていた。新しもの好きで勉強好きなあさが東京を見たくないはずは無いからだ。
新次郎は、あさは姑・よの(風吹ジュン)や自分への遠慮があるのだと推測していた。普段から家を空けてばかりいるのに、嫁としてこれ以上家を離れるわけにはいかないと考えているのだと察した。
そこで新次郎は、自分はあさの味方だと応援した。よのの説得も自分が引き受けるので、遠慮せずに東京へ行けと励ました。
しかし、それでもあさは承諾しなかった。
誰にも話さないでいたが、あさは娘・千代のことが気がかりなのだ。
これまでも九州の炭坑への出張続きで、まともに千代の世話ができていない。あさの知らないうちに言葉をしゃべり始めたり、自分の持っていくる土産のおもちゃよりも姑・よの(風吹ジュン)の作った張子人形を喜ぶ様子などに心が苦しくなっているのである。
まだ1歳の千代は、日々どんどん成長している。その過程を見守りたいと思うのだ。
新次郎は、あさが東京へ行けるよう、よのへの説得工作を行った。
しかし、それは失敗に終わった。よのから見れば、独身の五代が人妻のあさを同伴して旅行に行くなど言語道断なことに思われるのだ。
あさはよのに呼ばれた。
その席であさは自分の本心を語った。自分は本当は東京に行きたいと思っている。しかし、千代の良い母親になりたいと思い、千代と離れたくないと話した。
その言葉を聞いたよのは、あさを欲張りだと呼ばわった。
なんだろう。
あさ(波瑠)が千代と離れがたく思っているというシーンなり伏線なりをもうちょっと散りばめておいてくれた方が見やすいんだけどなぁ。
そういうシーンはたくさんあったけど、僕が見落としてただけだろうか?
突然、千代と離れたくないと言われてもなぁ。
散々九州とか行っといて。すぐまた行くとか言ってるし。