真夏の俺のミステリー

久しぶりに松本清張マイブームが来てます。

紙の文庫本で『黒革の手帖』を読み終わった後、次は何を読もうかなと思ってツラツラと松本清張関連のWEB記事を眺めていたわけです。
そしたら、文春オンラインの『読者を旅へといざなう“松本清張ならでは”の小説描写…乗り鉄が語り尽くした清張作品のスゴさとは』という記事に行き当たりました。

『張込み』という短編小説を取り上げて、刑事が容疑者を追って鉄道で東京から九州へ向かう部分が引用されていました。まだ新幹線はもちろん、寝台列車も運行されていなかった時代の話で、狭苦しい客車の中で一昼夜を過ごす描写が僕には真に迫って感じられました。

これは続きが気になると思って、本屋に買いに行きました。電子書籍で買ってもいいんだけれど、紙の本にしたわけです。電子書籍以前の時代から松本清張は文庫本で買っていたし、同じ著者の背表紙が少しずつ本棚が埋まっていく様を見るのも好きだからです。

近所の本屋では、後藤久美子主演のドラマとタイアップしたものが売られていました。今年の正月に放送されたらしいけれど全然知らなかった。
ちょっとレジに持っていくのは恥ずかしいなと思った。内容を確認しようと思って立ち読みするのも恥ずかしかった。

立ち読みでわかったことは、これは短編推理小説を8篇収めているということだった。
最初に目当ての『張込み』が収録されていて、その冒頭がまさに九州へ向かう鉄道のシーンだった。ただし、そのシーンは2-3ページで終わっていて、立ち読みでちょっと拍子抜けした。
しかし、まあ乗りかかった船だしと思ってちゃんと買って帰りました。
続きを読む

松本清張『点と線』

 初めて松本清張を読んだ。

 彼の作品としては、映画化された『砂の器』だけはDVDで見たことがあった。胸を打つ作品だったし、見て良かったと思うし、名作だと信じる。ただし、未見の人にオススメするほどかと言われると、少々口ごもる。昭和中期が舞台で現代とは生活風俗が異なるし、疾病差別という重いテーマが背景にあるので、真剣に見ようと思ったらずいぶんと肩がこるのだ。
 このように、僕の唯一の「松本清張・経験」は『砂の器』に集約されており、松本清張は肩こりの固まりみたいな存在としてしか認識されていなかった。だから、有名作家であることは知っていながら、これまで一度も彼の作品は読んだことがなかった。

 ところが昨日、単なる暇つぶしのつもりで松本清張の『点と線』の文庫版を購入した。なんで松本清張を選んだのかはよく分からない。それでも、『点と線』をチョイスした理由は、彼の代表作であるという事を知っていたからだ。その上、「アリバイ崩し」もしくは「時刻表トリック」というミステリ・ジャンルにおいて、金字塔と目されていることも知っていたからだ。ミステリ方面に全く詳しくない当方ではあるが、一般常識としてこの作品は読んでおく必要があるかもしれないと、なんとなく思った次第なのだ。

 僕は本を読むスピードの早くない人間だが、ほんの2時間くらいで読み終えられた。初めの数パラグラフは、少々堅苦しい文体に面食らいもしたが、ペースを掴んでくるとスルスルと読める。

続きを読む