ちょうど1年前の今日、「日経平均が4万円を超えたら結婚する」と宣言したのに、その時よりも平均株価が下がり(2009年6月10日終値9,991円、2010年6月9日終値9,439円)、婚期が遠のいたことにショックを受けている当方が、NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の第64回めの放送を見ましたよ。
藍子が生まれて半年、梅雨の時期となった。村井家の生活は少しも改善していない。
茂(向井理)は戌井(梶原善)の出版社へ原稿を届けに来た。本を出すたびに赤字で経営の難しくなった戌井は、水道橋の事務所を引き払い、国分寺の自宅で仕事をしていた。その家も借家であり、戌井家の生活も苦しい。戌井の妻(馬渕英俚可)は、そのことで終始イライラしている。
茂は原稿料を半分しか受け取れなかった。ところが、それを責めるどころか、無給で北西出版の顧問を努めると申し出た。茂と戌井は貸本漫画に対する熱意を共有しているし、戌井家の窮乏を救いたいと思うからだ。新人作家の発掘など、出版社の今後について夜まで話しあった。
茂が帰ろうとすると、雨が降っていた。自転車で来ていた茂は、びしょ濡れになるのを覚悟で走りだそうとした。戌井の妻は傘を貸そうとするのだが、返しに来るのが面倒だと笑い飛ばして、茂は去っていった。茂は片腕なので、傘を差しながら自転車を運転することができない。戌井の妻は、うっかりとそのことを失念していたのだ。自分の失礼な申し出に嫌な顔をしなかった茂。そんな人柄に感化され、戌井の妻も出版社を盛り立てていく気になった。
茂は明け方まで家に返ってこなかった。布美枝(松下奈緒)が心配して事情を尋ねると、近道のために通った多磨霊園の中で道に迷ったという。いつも通っている道のはずなのに、走っても走っても出口が見つからなかったという。放心したまま、原稿料を布美枝に差し出した。茂本人も夢うつつで自覚がないのだが、戌井から受け取ったはずの札束は、数枚の小銭に成り果てていた。
霊園で出口が見つからないという話が、まるで自分たちの貧乏暮らしのようで、胸が苦しくなる布美枝だった。
布美枝が商店街に来てみると、子どもたちは「鉄腕アトム」の歌を楽しそうに歌っている。その年の1月からテレビアニメが始まって、子どもたちに大人気なのだ。
こみち書房に顔を出すと、市民団体が詰めかけていた。貸本漫画は暴力や迷信、エログロといった不健全な内容であり、子どもたちに悪影響を及ぼすというのだ。また、消毒もせずに人から人に渡るので不衛生であると難癖もつけられた。彼らは、子供に本を貸し出すなという要望書を美智子(松坂慶子)に突きつけて帰っていった。
こういった圧力を初めて目にした布美枝は強いショックを受けた。しかし、今回が初めてではなく、美智子は慣れたものだった。貸本は今後も存続するだろうと、消極的ではあるが楽観視していた。
けれども実際には、週刊漫画雑誌やテレビアニメが人気を集めており、貸本は時代から取り残されて行く一方であった。
内容は地味であったものの、見ごたえは十分でした。
戌井の妻が茂の人柄に触れて態度を軟化させていく流れは見事。貸本業界が衰退するという、漠然としていて映像化しにくい時代の流れ(ニュースや解説番組なら、売上高のグラフを1枚出せば一目瞭然なのだが)を、「鉄腕アトム」の歌や市民団体からの圧力で間接的に提示したのもうまかった。
さて、判断が難しいのは、茂が霊園で迷ったというくだり。
妖怪もしくは貧乏神のイタズラなのだろうと想像はできるが、出てきた映像は茂が自転車を漕いでいるものだけだったので、いったいどういう作用なのかわからなかった。茂が本当に一晩中走り続けていたのか、それとも疲れて眠ってしまって悪夢を見た(そしてそれと現実の区別がつかなくなっている)だけなのか、いまひとつ分からない展開だった。
戌井から受け取った原稿料は封筒に入った札束(金額不詳)だったのに、裸の小銭数枚にすり変わっているなど、不可解なシーンの連続でした。
茂は疲労困憊して、意識朦朧と宿にでも泊まったんじゃないかととも考えられる。そこで、道に迷う夢を見て、なんとなくボーッとして家に帰りついた。宿賃を払ったので、原稿料が消えている。
これが一番リーズナブルな説明だけれど、家にたどり着いたときにも髪が濡れていたようだし、宿とは考えにくいとも言える。宿な、手ぬぐいくらい借りるだろう。朝には雨もあがっていたから、再び濡れることもない。
別の解釈としては、疲れて野宿している間に、スリの被害にあったってことだろうか。
う~ん。とにかく不可解だった。今後説明はあるのだろうか(貧乏神の摩訶不思議な作用によるものとしても)。