俺の「『ゲゲゲの女房』この1本!」

 NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』を全部見て、毎日まとめ記事を書いていた当方が、一番好きな話を振り返りますよ。

『ゲゲゲの女房』「私、働きます」第52回 2010年5月27日放送


 漫画が売れずに貧乏のどん底にあった茂と布美枝。

 生活のため、茂はプライドを捨てた仕事を請け負う。別名で少女漫画を描いていたのだ。ただし、そのことは布美枝には隠していた。
 原稿を届けに行った出版社で、布美枝はついに真相を知ってしまった。そして、嫌味な出版社社長から侮辱を受ける。その上、原稿料まで値切られた。収入が少ないことではなく、茂の仕事が正当に評価されないと感じたことが悔しくてたまらない。しかし、布美枝はそれを受け入れざるを得なかった。

 布美枝は悔しくてたまらない。しかし、茂を心配させないように気持ちを落ち着けてから家に帰る。苦しい家計の中から、無理をしてコーヒーを買って帰った。

 チビチビとコーヒーをすすりながら、ここ数日の夫婦のわだかまりを吐き出すふたり。特に布美枝は、自分ではなく、見ず知らずの若い女性(はるこ)に仕事を手伝わせていたことが気に入らなかった。茂の言い分としては、苦手な少女漫画を描くにあたって経験者が必要だったことがあった。そして、不本意な仕事を隠しておきたくて、布美枝を仕事部屋に近づけたくなかったという理由もあった。

 ふたりは話に熱中するあまり、無意識に砂糖を入れすぎてしまい、貴重なコーヒーを台無しにした。しかし布美枝は、何より美味しいコーヒーだと感じた。
* * *





 仕事の上ではプライドを捨てて、クソみたいな仕事を請け負った茂。しかし、妻に対してだけは見栄を張っておきたいという気持ちがわからないでない。茂にはとても共感する。
 一方で、そういう態度が夫婦の亀裂を生じさせることもあるよな、と理解するだけには大人になった、僕も。

 原稿を届けに行った先で、自分たちの生活を侮辱され、夫の仕事も侮辱され、原稿料まで買い叩かれる。それだけですらショックなはずなのに、夫の思いやり(家庭のために不本意な仕事を受ける)と身勝手さ(危機的状況を自分に相談することもなく、ましてや知らない女性を連れ込んで仕事させる)を悟って混乱もしたはずだ。
 しかし、夫の仕事を反故にするわけにはいかないと、辱めを一身に受けて返った布美枝の姿が涙を誘った。

 夫の献身に応えるため、なけなしの家計からコーヒーを買って帰った。金が無いのでめったに飲めるものではない。茂は布美枝に勧めるが、彼女は遠慮する。それがいじらしかった。
 その後、このドラマでコーヒーが出てくるたびに、僕はこの回を思い出して、胸が締め付けられていた。

 そして、とてもヘビーな話なのに、最後は笑いで落とす。緊張と弛緩のコントラストに、体が変になるんじゃないかと思うくらい、激烈に笑ったのを覚えている。

 茂は布美枝のために、コーヒーに砂糖を入れてやるのだが、話に熱中しすぎたために入れすぎてしまう。失敗したものを自分が引き取るのではなく、布美枝にそのまま飲ませる自己中心性。でも、どことなく笑える。
 受け取ったコーヒーをおいしいと言って飲む松下奈緒の笑顔も良かった。基本的に松下奈緒の顔が苦手な当方だけれど、あの時の笑顔だけはPCの壁紙にしても良いと思うくらい。

 この回のビデオはもう消しちゃったけれど、この回だけは3回くらい繰り返し見た。そんなことをしたのは(まとめ記事を書くのにセリフが聞き取れず見返したのを除けば)、後にも先にもこの回のみ。

 なお、この話は、DVD-BOX の2巻に収録だと思われます。

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