海龍王寺: 愛染明王を追いかけて、みうらじゅんに出会う

西大寺の愛染明王(西国愛染十七霊場 公式ホームページより)

愛染明王ブーム

昨日、奈良市の西大寺・愛染堂で愛染明王像を見てノックアウトされた当方

絶ち難い煩悩である愛欲を追求することで、むしろ悟りを開こうとする態度に深く感じ入った当方。
真っ赤なシャア専用像なところもカッコいい。
昨日、西大寺で見た愛染明王坐像の周りには、3匹のトンボの死骸があった。西大寺のおじさんと「あの3匹は家族だ。愛を司る愛染明王の膝元で、家族愛の強い3匹が仲良く絶命している」などと、勝手ストーリーを語り合ったりもした。

そんなわけで、にわかに愛染明王にZokkon命ゾッコン ラブな当方。
西国愛染十七霊場なんていうものまで見つけて、近畿の愛染明王を全て行脚しようかとも考えている(右の写真は、同サイトの西大寺紹介より)。

そんな中、昨日、西大寺で愛染明王に初めてお会いした後、性懲りもなくいとうせいこう&みうらじゅん『見仏記(4)』を読んでいたら、奈良の海龍王寺の訪問記にたった2文、こんな記述を見つけた(p.142)。

厨子をはさんで左手には座高五十センチほどの愛染坐像。どちらも親しみのわく風情で、・・・(以下略)

地図を見ると、うちから車で10分強(京奈和自動車道利用)のところじゃないか。
みうらじゅんは、西大寺の愛染明王こそ「愛染明王界では一番有名」などと言っている。しかし、せっかく近いのだから、海龍王寺の愛染明王がどんな感じなのか、そして西大寺が一番優れているのかどうか見定めたいと思い、ブーンと出かけてきた。

海龍王寺

海龍王寺海龍王寺は、平城京跡のちょうど北東に位置している。さらに北には大きな前方後円墳があったり、そのさらに北のあたりに自衛隊の基地があったりして、大規模な都市開発からは取り残されたような地域にある。周りにはほとんど民家しかないのだが、そばの道路はドライバーたちの抜け道になっていて、ビュンビュンと自動車が行きかっている。訪問するときは気をつけて欲しい(パート1)。

車の通る道から奥まったところに境内があるので、気を抜いていると行き過ぎてしまう(僕も行き過ぎた)。門も控えめで奥ゆかしいものなので、一見すると金持ちの豪邸くらいにしか思えないのだ。この門の北側(門に向かえば右手)には無料駐車場もある。野原駐車場で、区画整理もされていないが、各人が行儀良く停めれば5-6台のスペースはありそうだ。
観光客がたくさん訪れるような寺に比べると、外見が簡素すぎるので「本当に入っていいの?」とちょっとビビる。中にもう一つ門があるのだが、そこなんて幅1メートルくらいしかない。僕はそこで1分くらい中を覗き込んで、入っていいものかどうか思案した。勇気を出してその中門を入ると、くぐったすぐ左手の死角に寺務所があった。そこで拝観料(400円?)を払って入場するのだが、中門の前で僕のように不審な動きをしていると全て見られている可能性がある。訪問するときは気をつけて欲しい(パート2)。

大きな地図で見る

海竜王寺の境内見学できる主な建物は、仏像の安置されている金堂(写真右)と、その内部に五重塔が設置されている西金堂(写真左)くらいしかない。
文章で書くとなんのこっちゃと思われるかもしれないが、西金堂(もちろん、屋根も壁もある)の中に五重塔が置いてあるのだ。つまり、室内に塔がある。高さは4メートルくらいで、上の方に行くにしたがってわざとサイズを小さく作ってあるそうで、線遠近法の効果でとても大きく見える。非常に面白かった(くわしくはこちら)。

そしていよいよ、金堂にあがって、見仏を始めた。

金堂に愛染明王とみうらじゅん(絵馬)がいた

まず、真ん中に安置されている十一面観音菩薩像を見仏した。
肌の金箔がずいぶんたくさん残っていた。かといってピカピカすぎず、いいかんじに寂れた金色だった。上品な柳腰で、くねっとした全身がそこはかとなく艶かしかった。昨日、西大寺でも十一面観音を見たのだが、僕はこっちの方が気に入った感じ。
ただし、この後に法華寺で見た十一面観音の方が一枚上手だと思ったが。そちらは、白檀の一木造りだそうで、色を塗ってない木肌がたいへん美しかった。聖武天皇の皇后をモデルにしたという体躯もたおやかな美しさだったし(右足の親指が微妙に持ち上がっていたのがキュート)。

それから、文殊菩薩像も見た。最近、「文殊菩薩は獅子に乗っている」というお約束を覚えたばかりなのに、ここの文殊菩薩は地べたに立っておられた。どうも、獅子だけいなくなってしまったそうだ。
愛猫ノラがいなくなって悲嘆にくれる内田百閒の姿を重ねながら見たとか、見なかったとか。

海龍王寺の愛染明王(同寺サイトより) width=そしていよいよ、愛染明王を見仏。

なかなか凛々しく、勇壮な愛染明王だった。僕の中では、西大寺の愛染明王に引けをとらないくらいグッときた。
もちろん赤い色がハゲてしまっているが、室町時代の作と聞けば、それも仕方あるまい。
ただ、残念だったのは、手に持っているはずの弓と矢がそれぞれ無くなっていた。僕の中では、「愛染明王=恋のキューピッド」設定が勝手に出来上がっており、その矢で打ち抜かれたものは恋しちゃうとかそういう物語とかを作っていたのに。
けれども、僕が熱中しているカッコいい愛染明王がそこにいて、非常に嬉しくなってしまった。

さて、一通り見仏を終えて辞去しようと思いつつ、なんとなく絵馬やお札の陳列されているディスプレイを拝見。
その中に、みうらじゅんの絵馬(ムカつかなかったので、ムカエマではない)を発見。

みうらじゅんの絵馬

寺の住職さんのblogを見ると、この絵馬は2007年12月に翌年の干支であるネズミ(2008年=子年)を描いたものらしい。
右側のウシを描いたものは、今年の干支の丑なんでしょうな、きっと。
#でも、左側の2007年の物にもウシがいるのは何でだ?
#いや、ウシってのは見間違いで、これはもしやイノシシ?
##ちなみに、ネズミの右の変な物体はみうらじゅんの自画像。

当方を見仏の道(その他、47都道府県趣味=勝手に観光協会)に導いたみうらじゅんの足跡を発見して、かなり嬉しい当方。
#また、みうらじゅん的ロン毛にしようと思う。

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