『探偵はバーにいる』東直己

札幌すすきのを舞台にした探偵小説。
当方のような道産子のノスタルジーをくすぐるだけの陳腐な地方賛美小説だろうと思って読み始めたのだが、いい意味で期待はずれの大ヒット。
シリーズ1作目を読み終わり、すぐに本屋で2作目、3作目を購入(しかも、札幌ステラプレイスの三省堂書店で)。超ハマり中。

当方が札幌に縁のない人間だったら、たぶん絶対に読まなかった本だと思う。けれども、読んでみたらきっと今と同じようにお気に入りになっていた自信がある。
確かにすすきのローカルネタが多かったり、登場人物は流暢な北海道弁をしゃべるなどの特徴があるが、物語のプロットはしっかりしているハードボイルド系ミステリー。北海道に縁がなくても、楽しめる小説だろう。
親の遺言で「すすきのを舞台にした小説だけは読むな」などと言われているのでなければ、一読をお勧めする。

ちなみに、第1作『探偵はバーにいる』はラブホテルに出入りする売春婦とか、他人の唇の痕の残ったグラスが出てくる汚いスナックとかが出てくるので、潔癖系の人にはちょっと読むのがつらいかもしれない。
そんな向きには2作目『バーにかかってきた電話』をお勧めする。もちろん”汚い描写”は多々あるけれどトーンは控えめだし、殉愛・人情ものという仕上がりで読後感は悪くない。
実際、ネットの評判を見ていても、1作目よりも2作目の方がウケがいいみたいだし。僕も、両作は甲乙つけがたいと思う。


シリーズの主人公は、氏名不詳の<俺>。主な収入はカード賭博で、年収3,600万円ほど(当方調べ)の30歳手前の男。
副業として、町の便利屋をやっている。名刺代わりに行きつけバーのマッチを配っており、依頼者はそのバーを訪ねて仕事を依頼するというシステムになっている(だから作品名が『探偵はバーにいる』だの『バーにかかってきた電話』だのになってる)。

1作目では、そのバーに風采のあがらない北大生が訪ねてくるところから話が始まる。半同棲している女子短大生が行方不明になったから探してほしいという依頼だった。どうせ彼女に愛想を尽かされただけだろうと本気で取り合わないのだが、次々に不審な点が見つかる。謎の男からほぼ毎日金が振り込まれていることや、その男がラブホテルで刺殺体で見つかったこと。そして、その男の思い出して一人涙を流す女や、その男にチラつく有名売春婦の影。いつまでたっても見つからない女子短大生。

真相が明らかになったラストで、当方は大きなため息をつき、作者の構成能力に喝采してしまった。

各登場人物の思惑と行動を振り返ると、彼らは「大切な人に精一親切をしよう」と思って行動しているにすぎないのだ。しかし、そういった清い心の集合が、全体としての不整合を生み出し、いくつかの悲惨な結果を生み出すことになってしまっていたのだ。
全てが「小さな親切、大きなお世話」になっちゃっている点が皮肉であり、ちょっと悲しかったのだ。
こういう人間関係の機微が描かれた物語、当方は大好きです。

ちなみに、当方はもちろん登場人物の中では、モンローちゃん萌えである。あんな女性にだったら、喜んで身を持ち崩したい。

北海道のどっかの放送局にちょっとお金があったら、大泉洋主演で映画とか作れるんだろうなぁ。基本は小心者で、頼まれたらブツブツ言いながらも断りきれないあたり、主人公は大泉洋の雰囲気なんだよね(もちろん、北海道弁ネイティブでもあるし)。
オンボロのカローラを乗り回す北大農経の大学院生・高田(空手が得意で喧嘩担当)は、佐々木蔵之介でどうよ。マル秘情報を交換し合う北日新聞の記者・松尾(ただし、バイセクシャル)は、堺雅人でどうだ?
男たちを虜にするモンローちゃんは常盤貴子でいいだろう(あごのラインが華奢だという描写があるから、適役だろう。)。どことなく田舎者っぽい雰囲気の失踪女子大生は田畑智子にしとくか。
#どこのアフタースクールなのかは知らんけど。

コメント (1)

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