NHK『カーネーション』第100回

節目だからといって特に面白いマクラが思いつくわけでもないけれど、残り3分の1もどうぞよろしくお付き合い下さいとお願い申し上げる当方が、NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』の第100回目の放送を見ましたよ。

* * *

第18週「ライバル」

1955年(昭和30年)2月。
優子(新山千春)は、妹たちよりも一足早く高校を卒業した。しかし、卒業式を終えても冴えない顔をしていた。東京の美大に進学する予定だったのに、糸子(尾野真千子)が急にそれを禁じてしまったからだ。
近所の人々は、ずっとふさぎこんだままの優子のことを心配したが、直子(川崎亜沙美)だけは優子の態度に反発した。優子は昔から甘やかされて育ったので、暗い顔さえしていればみんなから同情されると思って、芝居をしているだけだと切って捨てた。

糸子は娘たちの通知簿を見ていた。
小学生の聡子(村崎真彩)は体育だけが5で、あとはほとんど1ばかりだった。中学生の直子はそれよりは多少ましだったけれど、ほぼ似たようなものだ。糸子は彼女らをしかるでもなく、むしろデキの悪さを見て他人ごとのようにバカ笑いするのだった。

一方、優子はどの教科も成績優秀だった。糸子も優子の成績には一目置いた。
しかし、美大進学を簡単に許す気はなかった。優子が自分で覚悟を決めるまで、わざと反対し続ける決意でいた。糸子も本心では優子の進学を願っていたし、早く悪者役を降りたいと思っていた。けれども、優子の成長のために心を鬼にしているのだ。彼女が反対を押し切って我を通した時には、喜んで応援してやるつもりでいた。

優子の美大受験はいよいよ明後日に迫った。明日には上京しなければならない。しかし、まだ糸子の許しは出ていなかった。
夜遅く、布団を抜けだした優子は店に降りていった。まだ仕事をしていた糸子に、泣きながら訴えた。糸子が理不尽にも態度を急変させたため、自分は混乱した。どうしていいか分からないと喚き出した。
しかし、そんな優子の態度にも糸子は動じなかった。親に甘えるのではなく、自分でどうすれば良いか考えろといって突き放した。

優子は布団に戻ったが一睡もできないまま夜が明けた。
すると、千代(麻生祐未)が旅支度を持って寝室に現れた。ヒソヒソと話しながら優子に東京へ行って受験するよう勧めた。悔いが残るのは良くないし、糸子のことは自分に任せておけと言って安心させた。そうして、優子を送り出した。
その一部始終は、直子が聞いていた。直子は優子のことを敵視しながらも、動向が心配でいるのだ。

同じく、隣室で寝ている糸子もその物音を聞いていた。しかし知らんぷりをした。優子が受験に向かって、糸子も安心したのだ。優子が合格したら、もう一度彼女の覚悟を確かめるための芝居をうたなければならないと思うと気が重かったが、その時はその時だろうと楽観できた。

ところが、優子は東京行きの汽車には乗らなかった。一日中大阪駅でブラブラして、他に行くところがなくなって北村(ほっしゃん。)を訪ねた。北村は機嫌よく優子を迎えてくれた。

北村に懐いている優子は、彼には本心を全て明かすことができた。
優子は、糸子の言う通り、自分に覚悟の無いことを自覚している。だから糸子を説得することができないし、糸子も自分のことを許してくれない。むしろ、糸子が本音では美大行きを応援してくれていることも理解していた。けれども、その期待に応えられない自分を不甲斐なく思った。

実際、優子は画家になりたいわけではなかった。糸子に褒めてもらいたいと思っているだけなのだ。
戦争中、物資が不足する中、優子は糸子に色鉛筆を買ってもらった。そして、それで綺麗なものをいっぱい描け、綺麗なものを知らない妹たちのために絵を描いて喜ばせてやれと言われた(第70回)。その通りにすると、糸子は褒めてくれた。それが嬉しかったというのだ。
美大に行けば、ますます優子のことを認めてくれて、褒めてくれると思っていた。それが美大行きの動機だというのだ。

北村は、洋裁屋を継げば大いに褒めてくれるはずだと助言した。しかし、優子は洋裁屋にだけはなりたくないと言う。自分は親孝行をしたいのではなく、単に褒めてもらえればそれでいいのだという。北村には、親孝行と褒められることとの違いがわからなかった。もうこれ以上は付き合いきれないとさじを投げた。
優子は優子で、打ち明け話をしてすっかり気が晴れた。

その日の夜遅く、優子は北村に連れられて帰宅した。糸子はイライラしながら仕事をするだけで、優子に対して特に小言を言うでもなかった。優子も思いつめて、眠れぬ夜を過ごした。
そして結局、優子は4月から大阪の洋裁専門学校へ通うことが決まった。

小中高とそれぞれ学校を卒業する娘たちのために、糸子は贈り物を用意した。
運動だけが取り柄の聡子には、真っ赤なスニーカーをプレゼントした。お洒落に目覚め始めている直子には真っ赤で派手なハンドバッグが与えられた。ふたりは大喜びした。

続いて糸子は、2階の部屋に一人でいる優子にもプレゼントを持っていった。自分たちへの贈り物よりも大きな紙袋であることが気になった直子は、こっそりと覗きに行った。
優子へのプレゼントは、落ち着いて上品な、見るからに上等なバッグだった。

ついさっきまで魅力的だった自分の赤いバッグが、急にみすぼらしく、つまらない物に思える直子であった。

* * *

結局優子は、直子の言葉通り、周囲に甘やかされているわけで。
東京行きは千代の差金だし、帰宅するのも北村の手を借りなければままならなかった。糸子も優子の気持ちを慮ってか、何も言わないままであったし。
大阪の洋裁学校へ行くことが決まったが、これも特に自分の強い意志というわけでもなさそうだ。ずっと家を継ぎたくないと言っていたことだし。
あーあ、という感じ。

そして、そんな姉に対する嫉妬や敵愾心を抱く直子という対比が面白くなって来ました。

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