昨日、ばかみたいに長いマクラを書いた隠れた理由の一つが、原田宗典『優しくって少し ばか』を久しぶりに読み返していたからであり、あのダラダラと続く気怠い文体を真似したかったからだという種明かしをする当方が、NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の第22回めの放送を見ましたよ。
新政府は、徳川の残党討伐のための出兵を計画している。戦費の供出を大坂の商人たちに求めた。
その額は1店あたり10万両という莫大なものだった。ただでさえ旧幕府に貸していた多額の借金が焦げ付いている中、どの店も対応に頭を痛めた。
はつ(宮﨑あおい)が嫁いだ山王寺屋では、義母・菊(萬田久子)が新政府の命令を拒絶することを決めた。彼女は新興勢力である新政府のことを信用しておらず、徳川に肩入れしているのだ。
義父・栄達(辰巳琢郎)や夫・惣兵衛(柄本佑)は新政府の勢力は無視できないほど成長しているので、迎合して金を差し出すべきだと意見した。しかし、入婿の栄達たちは家での発言力は弱く、菊によって却下された。
さらに菊は、惣兵衛の不甲斐なさを詰った。山王寺屋は200年も続く伝統ある両替商であり、常に反映していた。それが、惣兵衛が働き出すようになってから景気が悪くなったというのだ。家勢の衰えを全て惣兵衛の責任に押し付けた。
惣兵衛はそれっきり黙ってしまったが、悔しさのあまり密かに震えていた。
あさ(波瑠)の嫁ぎ先の加野屋でも、対応に苦慮した。あさが幾つかの藩から借金の取り立てに成功していたが、家中の金をかき集めても、新政府から要求されている額には遠く及ばないのだ。
あさは、ぎっくり腰になってしまった正吉(近藤正臣)の腰を揉んでいた。ふたりきりになった機会に、正吉はあさに自由に意見を述べるよう求めた。
あさは、戦争のために一家の大切な金を差し出すことなど大反対であった。けれども、時勢を読めば、新政府に金を供出した方がいいと進めた。足りない分は借金してでも工面すべきだと言うのだ。
あさは、過去に新次郎(玉木宏)に言われたという言葉を引用した。彼曰く、よく考えて進んだ道には、からなず新しい朝が来る。今、新政府では立派な誰かがよくよく考えて新しい世の中を作ろうとしている。その結果、きっと新次郎が言うように新しく素晴らしい世の中が来るに違いないと考えているというのだ。だから、新政府に協力すれば自分たちの将来も良くなると主張した。
その言葉に正吉は感心した。
新選組の土方(山本耕史)に失礼なことを言ったのに許されたことや、宇奈山藩からの借金取り立てに粘り勝ちしたのも、あさの言動に一本筋が通っているからであると評した。あさと夫婦になってから、新次郎も少しずつだが頼りになるようになってきた。
正吉はあさの意見に賭け、新政府に取り入ることを決心した。
1968年(慶応4年)5月、新政府は貨幣制度を刷新した。
それまで、藩などが発行していた貨幣を全て廃止し、全国共通の貨幣を制定したのだ。その影響は大坂にも及び、大坂で独自に発行されていた銀貨も使えなくなってしまったのだ。
大坂の町人たちは、両替商に銀貨を預けている。それをめぐって壮大な取り付け騒ぎが巻き起こった。
人々は手形を持って両替商に殺到したが、店にはそれらを全て返すほどの現金がない。
加野屋にも人々が集まり、大混乱となった。店主を出せと言って騒ぎ立てている。
しかし、腰を痛めて臥せっている正吉は店に出ることができない。一家の後継者は三男・榮三郎(吉田八起)であったが、彼はまだ幼く、客への対応ができるはずがない。
そうなれば、榮三郎の後見人である新次郎が対応するのが筋だが、商売の事を何も知らない新次郎は怖気づいて、逃げ回っている。
窮した新次郎は、あさに対応するよう命じた。
あさは、男以上にしっかりした女である。自分の見込んだ格別な女だから、この窮地も解決できると言って押し付けてしまった。
仕方なくあさは、町人たちの矢面に立った。
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